第6話

6・ヒルツ大尉西へ・6ヒルツの休日2

https://www.youtube.com/watch?v=hMHv041FBlk


大戦前夜の不穏な空気から逃れるかのように狂騒に沸いた街

「とらじろうハウス」にいつからいたのかヒルツ本人も覚えていない

誰ともつるむことも無かったが、突然いなくなったりして周囲を困らせていた。九歳の頃外国船に密航し、外国の町ほっつき歩いているところをとっつかまって強制送還されたこともある。

意味が分からない。

16の春には既に街のワルどもを束ねていた。暴力の嵐の中で。そんな楽しい日々も長くは続かなかった。

ある日、羽振りのいい爺共が集まる街の盛り場でオヤジを狩る。しょぼくれた奴は狙わない、いかにも偉そうでお供を引きつれ悦に入っている奴を狙う。

そんな奴は大物面をし、これで旨い物でも食え、などとほざいて大金を出し面子を保とうとする。「恩に着るよ」とでも言えば表沙汰になることも無い。しかしその日は違った。

やばい奴には決して手を出さなかったヒルツは初めて見誤った。

美女に囲まれにやけた狒々爺、ホストみたいなチャライ男も二人。

早速「おねだり」にかかった。

女達は皆一人のホストと共に逃げ、残るは爺とチャラ男。

この二人にヒルツと子分達は半殺しにされた。それでもヒルツは善戦し狒々爺の面に二、三発叩き込んだ。

効かない。

後はタコ殴りである。

「お前、これで済むと思うなよ」

その爺はあの”マライヒちゃん”長谷川巌だった。

その後、ヒルツは強引に長谷川に引き取られ。そして陸軍泣鬼之学校予科に放り込まれた。

予科においてもヒルツの奇行と問題行動は治まるわけは無かったが

その度に半殺しにされた。

いい勝負が出来るようになったのはヒルツが十八になる頃であった。


「やめてください!」

ヒルツの悪乗りを止めたのは。幼馴染の緑川ゆきこであった。

彼女も「とらじろうハウス」で育った孤児である。

苦学して、児童福祉士の資格を取り戦災孤児達の母親代わりをしている。

彼女は誰にでも優しい。

ある日、掃除の時間、退屈していたガキ共の間にゴキブリが闖入した。

「うわー気持ちワリー」ほうきをを使ったホッケーが始まった。

その瞬間、彼女はその汚い害虫を素手で抱きかかえ

「やめて!かわいそうでしょう!」と泣いた。

彼女が泣いたのを見たのはそれが最初で最後だった。

悪ガキ共はスゴスゴと引き下がる。

後日、台所で手伝いをしていたゆきこが、現れたその害虫をお手製のハエたたきで即死させなにかささやいてゴミ箱に捨てるを見て

こいつに逆らうと


ヤバイ。


デストロイ・オブ・ザ・キューティーハニー

ヒルツは確信した。


https://www.youtube.com/watch?v=EQ0mWw5ZGfg

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