第5話
5ヒルツ大尉西へ5・ヒルツの休日
「良し起きよう!」
少々二日酔いの残る体を無理やり起こし10キロほど走り冷たいシャワーを浴びた。もう酔いは消えている。
夕べは久々に大笑いした「ジグラットの魔女」での乱痴気騒ぎ。
「実戦あるのみよ!」”マライヒちゃん”の鶴の一声でお笑い化粧を施され、ドレスとカツラを蒸着された小早川をさんざんからかってやった。お化けちゃん達を中心に色んな奴らがかわるがわるキスの雨アラレを小早川にお見舞いしていった。
あの堅物を選んで大正解!半べそかいたあの野朗のツラを思い出すだけで腹がよじれる。ケケケケケケケケケケ!
よーし、久しぶりにガキ共をからかいに行くか。
ヒルツはフルチューンナップした愛車のエンジンに火を入れた。
パフパフパフ~猫バスのペイントが施された軽ワゴンがニャーゴと走る。
殺伐とした道路を浮きまくって走る姿はスカシてアナーキーだ。
戦災は本土にも及んだ。その爪あとは深くその傷は常に弱者の頭上に降り注ぐ。
空は放射能でにごり海は見えない涙で染まり慢性的な食糧難は民衆に怨嗟の声を上げさせた。
四肢のいずれかを失った人々がごく当たり前に生活している。
ヒルツのアホ車を見かけて、満面に笑顔を浮かべ追いかけてくる子供達の中にも松葉杖を足代わりにしている子がちらほらいる。
子供は暗然たる未来より目の前の面白いことに夢中になる、今日を毎日生きるのだ。それがいつまでも続くわけではないにしても。
ヒルツは孤児であった。
育ったのは孤児院「とらじろうハウス」ヒルツのいた頃よりもはるかに多くの子供たちで溢れ返っている。戦争の影だ。
ヒルツの猫バスが派手なエンジン音と共にとらじろうハウスにやって来たヤアヤアヤア!
「あっ!ウンコ野朗だー!」「ワ~!」たちまち歓声がヒルツを取り囲んだ。
「やあ!ウンコチンチンの諸君!元気ですかー!」
「うるせーウンコ野朗!」「ウンコ!ウンコ!ウンコ!ウンコ!」大合唱である。近所の子供たちも混ざっている。
「ウンコ野朗!今日はなにもって来たのー。こないだのお菓子とっても
うまかったぜー!でも全然たんないよー」
ガキ大将の雄大がクソ生意気に礼を言う。
このご時勢、ヒルツ大尉がいくら豪腕であろうと、全員の腹を満たせる量の食料品を調達できるわけは無かった。
「よーし、お前ら戦え!勝った奴の総取りだ~!」
「やめて下さい!」
「は~い。」
さあ大変なことになってまいりました。
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