第2話

列が不ぞろいな金網が取れかかった防爆蛍光灯が明滅する薄暗い廊下、そこを大股で闊歩する男。その者、青き衣を身にまとい、金色の地に降り立ってはいない。

赤銅色に日焼けし、がっしりとした顎に真一文字に引き絞られた強固な意志を感じさせる大きめで厚い唇、それでいて切れ長の秀麗な目は針のようなある種の奇矯で狂気を帯びた光を湛えている、彼が沈黙し何事かを試案していた時、見つめていた熱帯魚踊る水槽が前触れもなく割れ、原色に光る魚たちが床に躍った。とまことしやかにかに噂されている。

コンコンッ!「ヒルツ大尉であります。」投げやりな口調で言う。

入りたまえ、の声と共にズカズカと部屋の中央に入って来た。

「まあそこにかけたまえ」の声に食い気味でどっかと座り、あまつさえ机の上に組んだ両足を乱暴に乗せた。

通常なら即軍法会議物である。

「相変わらずだな」笑いながら直属の上司であるヒクツ大佐は取って置きのバランタイン30年物を無造作にロックグラス二つに注ぎ、一つを大尉に渡した。「頂こう」ヒルツ大尉はテーブルの上に置いてあった葉巻にすでに火をつけ紫煙をくゆらせている。

「ちっ!出世頭は健康志向と来てやがる。ヤニのない模造品吸って何がうれしいのやら」

舌先に押し付け火をけし無造作に灰皿に投げ入れる。

さすがのヒクツ大佐も顔をしかめた。

「貴様のその態度がお偉方の逆鱗に触れるんだ。もっと大人しくしていれば出世する物を。馬鹿な奴だ。

相変わらず部下をからかっているようだが、そのうちセクハラで訴えられるぞ。」

「人の趣味口を出すのは悪趣味だぜ?」

 この二人遠い姻戚関係でもなんでもなく、単に名が似ているだけだが

陸軍泣鬼之学校の同期であり、親友だ。ヒルツ大尉の数少ない理解者でもある。卒業間近に第2:50限定核戦争勃発、ヒクツ大佐その分析能力を買われ諜報部へ、ヒルツ大尉はその類まれな戦闘能力と作戦立案能力を買われ特殊部隊へ異例の編入を許されたされた。

何ゆえ非常時である。

ヒルツ大尉はすぐさま頭角を現し「ケルベロス」の異名と共に畏怖される救国の英雄となった。しかし気に入らなければ上官であろうと、コック長であろうと噛み付き。敵に対しては冷酷非情。作戦無視は当たり前、思い付きで立てた作戦で十分以上の戦果を上げるため、非常時の人材不足も手伝って上層部も処分に困り果て、常に最前線へと飛ばされた。

そこでまた戦果をあげ、のこのこと生き残り一部の上層部に非常に憎まれている。

また天才とアレwは紙一重故か非常に奇行も多く。

「ウンコ大好き!今日もウンコ漏らして全身に塗りたくりました」

と奇声を発し嫌がる部下を追い掛け回してはそれを擦り付けてはケタタマシク笑うその姿は大いに恐れられていたが。なぜか糞を擦り付けられた者は生還率が高く。ヒルツのウンコは幸運のウンコとの都市伝説が蔓延し、ヒルツ大明神と崇められ、作戦前にはヒルツ大尉の尻を拭いた紙を欲しがる部下が急増し、当の本人も「面倒くせー、やんなきゃよかった」と思う頃にはもはや手遅れになっていた。


https://www.youtube.com/watch?v=AoDZxcnEYG4

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