4回目 7
「それで、庵は俺の隣のベッドで俺みたいに拘束されるはめになった、と」
「はぁ」
思わずため息をついてしまう。
「あーあ、庵だって隠してればこうならなかったかもよ?」
「いずれバレてたろ。時間の問題で」
部屋のドアが開いて、右京が入ってきた。
「ん」
「あ、右京さん」
「二人に聞いてほしいことがある」
普段の様子からは考えられない真剣な顔だった。
右京は想定より時間がないと言って説明を始めた。
「僕達が病院の外に出たら死んだって言っただろ?」
「ああ」
響も同じように答えようとして目を見開いた。
「なんで右京がそのことを覚えてるんだ?」
「あっ」
「それはなんでかわからない。説明したいのは別のことだ」
曰く。
右京と颯は一度病院の外に出た。
そして死んだ。そのことから外に何かあるのではないかと推測しドローンを飛ばした。
外は、俺達も見たように真っ白いだけの風景だった。
そこで、ドローンで複数地点にカメラを設置し、颯の研究室のモニターにそのカメラからの映像が表示されるように設定した。
そのカメラからの映像が、遠い所にある物から段々と消えていっているらしい。
「最後に映される映像は、決まって黒いカーテンのようなものが迫ってくる所なんだ。黒いカーテンっていうのは生物じゃなくて、例えるならブラックホールみたいなものじゃないかと思ってる」
右京は体の横で拳を握りしめた。
「君達に託す。君達は死んだとしても記憶を持って過去に戻れる。この事実を、過去の僕達に届けてほしいんだ」
「いいんですか?俺達はいつ誰かに操られるかもわからないんですよ」
響の疑問はもっともだ。俺だって同じだ。
「それに、その誰かというのが俺達の敵だとしたらこの情報をやっていいのか?」
「もう、それしかない。颯の計算では、もう他の手立てを考えている時間もない。そろそろここにも届く」
右京の台詞が終わるとともに壁から黒い膜が現れた。
右京は目を閉じた。
その体が大きく歪んで見えた次の瞬間、自分の意識も消えていった。
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