閑話休題 2

逃げると決まれば、兄の行動は迅速だった。

早速外について調べてきて、兄の上品な着物も少年のぼろぼろの服も外の世界に行くには向かないからと、兄は少年に変わった形の服を着せた。

首の下の所から紐が二本出ていて、首の後ろには袋のような形状の布がついていた。

少年は兄に倣って袋を頭に被った。


夜中、家族が寝静まった頃に二人は家を出た。

門番や使用人に見つからないよう細心の注意を払って裏口から外に出た。

少年は初めて空を見た。

星が綺麗な夜だった。


これでどこにでも行けると兄が言って二人で駆け出した。

もうどこまで走ったか分からなくなったくらいの所で兄は小さな建物に入った。

「右京が困らないように頼んでおくから」

変な帽子を被って変な服を着た大人の男が二人いた。

要は交番の警察官である。

兄は周到に右京の現状を示す証拠を持ち、事前にここに連絡した上で右京を連れ出したということだ。

右京は急に閉塞感を感じた。

小さな暗い部屋を出られても結局はこの小さな建物に囚われるという事か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る