2回目 2

鉄の扉の前に着いた。

扉は硬く無機質に沈黙している。

「鍵、探してみる?」

「そうするしかないか」

目下の目標は、このドアを開けること、その為に鍵を見つけること。

彼はナースステーションに行こうと提案して歩き出した。

扉に背を向けた。


病棟の廊下はどこまでも無音だ。


「さてさて。何か面白いものあるかな?」

とりあえず机の引き出しの中の大量の書類に目を通すことにした。

書類の中にカルテが混ざっていた。

「!」

「どうかしたの、あ」

一番上の2枚のカルテ。

写真に写っていたのは自分と彼だった。

自分は無表情で此方を見つめている。

対して、同じく此方を見つめる彼の瞳には憎悪が宿っている。

「なんか俺怒ってるね」

「『九条響』これがお前か?」

「たぶんそうだね。じゃあ、この『神楽庵』っていうのが君か」

響は違和感すごいねと言って笑った。

イオリ、カグライオリ、

何も思い出せない。

「面白いね。君は『18才、元高校生』で、俺は『16才、元高校生』だって」

自分のカルテの端には7、響のカルテの端には26と書いてある。

「この数字は何だと思う」

「うーん、何だろう。個人番号みたいな?」

「そうかもしれない」

「それより、他にもカルテあるよ」

響はページをぱらぱらとめくる。

「『柊右京』、『結城颯』、他にもいっぱい」

経歴を見て絶句した。

「全員死んでるぞ、それ」

「え、嗚呼、本当だ」

鍵を探していなかったと気付き立ち上がる。

「あ、これ」

壁に取り付けられたフックに、鍵が吊り下げられている。

「持っていくか」


鉄の扉の鍵穴に鍵を入れ回すと、ガチャリと音がした。

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