2回目 1

もぞりと身動きする。

相変わらず窓の外では蝉が煩く鳴いている。

真っ白なシーツはぐしゃぐしゃで体はじっとりと嫌な汗をかいている。

わずらわしい目眩と頭痛。

気怠さを呑み込んだような気温と湿度に舌打ちをした。

「おはよう、お寝坊さん。よく眠れた?」

隣のベッドと隔てるカーテンがあいて、彼が顔を出した。

何故この状況で上機嫌でいられるのだろう。

「暑い」

「嗚呼、俺が冷房を切ったからだね」

おかしい。この展開を俺は知っている。

この後、点滴を引き抜いて中庭に向かって、病棟に戻ったあと倒れたのか?

時間が巻き戻ったのだろうか、?

「、お前は」

「どうしたの?」

彼は何も知らなそうだ。

「いや、なんでも」

「なんか気になるから話してよぉ」

「…お前は、記憶があるか?」

「、え?」

本当に何も知らないのだろう、彼は首を傾げる。

「俺には以前の記憶があるようで」

「以前、って、病院に来る前の?」

全てを説明すると、彼は驚いたような顔をした。

「じゃあ、これ抜いちゃ駄目なんだね」

「そういうことになるな」

一瞬、ぞくりとした感覚が背筋を走る。まるで誰かに見られているような感覚だ。

後ろを振り返る。

そこには誰も居らず、ただ白いベッドの柵と壁だけがあった。

「どうかした?」

「誰かに見られてる気がする」

「え?でも誰もいなかったって言って、」

その瞬間に思い出した。

探索をしたとき、鍵が掛かってあけられない部屋があった。

そこに何かいたのか?

だとしたら、何故その部屋の前を通ったときは何も感じなかったのか?

何もわからない。

「あの部屋に行く」

「着いていくよ」

暫く歩いて、部屋の前に着いた。

他の部屋のドアは白樺でできているが、この部屋のドアだけは鉄でできている。

ドアは押してみても引いてみても動かない。

ドアノブの下に、此方を見つめるように小さな鍵穴がついている。

「鍵を探してみる?」

「そうするか」

彼は楽しそうに笑った。

「脱出ゲームみたいで楽しそうだね」

「、え?」

「なんだか、この世界に二人だけみたいだ」

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