4回目 1

「あ!庵君起きた!」

「っけほ」

「声出さないほうがいいよ、喉にもダメージ食らってるから」

ぼやけた視界が少し鮮明になる。

銀色の短髪と紫色の瞳が見えた。

「!!」

がばりと飛び起きる。

「こら庵君、安静にしないと」

銃を手に取った。

響は隣の寝台で眠っている。

まだ子供らしさを残したあどけない寝顔に心が痛んだ。

良心なんてものが自分に残っていたとは。

それでも、こいつは、敵だ。

『響は敵かもしれない。颯の部屋に行く素振りを見せろ。ついていくと言われたら確実に敵だから殺せ』

右京からそう書かれたメモを受け取って銃を取ろうとしたところで響に後ろから刺された。目を覚ます前に殺す。響の薄い胸に銃口を当てる。

「……」

右京は何も言わない。

俺が何をしようとしているのか察したのだろう。

銃声が響く。

「どうしてこいつが敵だと思った」

「全く、君は考えるより先に実行に移すタイプ?どうして本当に敵かどうかわからないのに撃ったの?」

「お前の言ってることが嘘じゃないから」

俺に発現した能力は嘘を見抜く能力。

「なるほど、そういう能力が発現したんだね」

「いいから理由を説明しろ」

「髪と目の色だ。ナースステーションの書類を見て」

「俺の色がどうかした?」

いつのまにか起き上がった響が右京の首の横に刀を突き付けている。

「なぜ生きている」

「ループ前の記憶があるから」

「は?」

それは当たり前じゃないのか?

「俺の能力は誰かが過去に戻った時、過去の時点で誰かが進んだ時刻までの記憶を得る能力だよ」

「庵くん逃げて!」

右京が叫ぶ。

ナイフと刀がぶつかり金属音を立てる。

「どうして止めるの?俺はただ君たちと仲良くしたいだけなのに」

「早く行って!庵!」

響の言っていることも嘘ではない。

人間不信になりそうな状況だ。

「っ!」

颯が俺の手を引いて走りだす。

拠点のドアを開けて俺を外に突き飛ばす。

ドアが閉まる。

「颯!?」

どうすればいいのかわからない。

右京の言っていたナースステーションの書類というものはどこにあるんだろう。

ナースステーションに着いた。

『重要書類』と書かれたファイルが目に入る。

中を探ると響の顔写真が貼られた紙があった。

『九条響、異変における重要人物。捜査班は彼を特異点と認定、捜索している』

重要人物。特異点。

聞き覚えのない単語だ。

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