3回目 11

「ねえ庵くん、なんで殆どの概念が消えてしまった中で僕達四人とこの病院はこの世界に残ってると思う?」

「わからない。知ってるのか?」

「まさか。わかるはずがない」

そのくらい可笑しいことだ、ということか。

「でも、君たちがあの人形を倒したら空の色が戻ったんでしょう?だったら他の人形を倒せば世界も元に戻るんじゃないかって思ってさ」

「なるほど」

「あ、庵、右京さん。何の話してたの?」

響が歩いてきた。

「この世界について、かな」

「え、気になるんだけど」

「まあ、全部僕の憶測だからさ。ご飯食べ終わったし化け物退治してくるよ」

「じゃあ俺も」

「大丈夫だよ、それにこいつらの解体たのみたいしさ」

言って、右京は大きな布袋を床に置いた。

ドサッ、と音がする。

よく見ると袋に赤い液体が滲んでいるようだからこれは化け物の死体だろうか。

「え、解体?なんで?」

「ご飯にするの。颯くんがそういうの詳しいから何かわからないことがあったら聞いてみなよ。じゃ、行ってくるねー」

右京が部屋を出て行った。

頬を膨らませる響を宥めて袋を開ける。

犬、鳥、狼、他にも様々な種類の化け物の死体が入っていた。

他に折りたたまれた紙が入っている。

説明でも書いてあるのかと思って開いてみる。

「ん、庵、どうかした?」

「いや、なんでもない」

平静を取り繕って答える。

「何でもないんだったらいいんだけどね」

「あ、こいつの解体法を颯に聞いてくる」

「ついていこうか」

「いいよ、他の解体しといて」

頷いた響に背を向ける。

「っぅあっ」

後ろから体を刀で貫かれていた。

「っひび、き、っ」

刀を体から抜かれた。

傷口から大量に出血してその場に膝をつく。

響は無表情で俺の袖を捲った。

そこにしまっていた紙を取り出しぱらりと開く。

「あーあ、やっぱりそういうことか」

響がつまらないことのように言った。

どうして、そう言おうにも声が出なかった。

そのまま意識が遠のいていった。

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