3回目 10
ダメージを跳ね返してくる人形を倒した。
怪我が治って窓の外を見た。
最初は変化に気づけなかったけれど、風景は確かに変わっていた。
空が青色だ。
初めて外に出たときは空は地面と同じ灰色だった。
それを右京に伝えると驚いた顔をしていた。
右京と颯には窓の外が見えないそうだ。
右京は、世界がこうなる前の話をしてくれた。
街にはたくさんの高層ビルが並んでいたらしい。
田舎の地域はまだ未発達で田畑を耕して過ごす人々もいたらしい。
世界の国々は絶妙のバランスで平和を保っていて。
でもある時突然、国が1つ消えた。
いや、正確に説明すると、国が1つ消えたと予測される出来事があった。国が1つ入るくらいの面積が突然更地になっていたのだ。
誰も、その土地の事を覚えていなかった。
確かにそこにはかつて何かがあって、それが突然消えてしまったというのに、誰も何もその土地について覚えていなかったのだ。インターネット上の記録、紙や本での記録も全く残っていなかった。
その場所にその瞬間まで確かにいた人々のことも誰も覚えていなかった。
また、同じことが起こるかもしれない。
原因も詳細も分からないのだから、防ぎようがない。
それを知って世界はパニックになった。
ゆっくり時間をかけて、最初に消えた国の周辺から世界は消滅していった。
右京は白い壁のようなものが迫ってきた所で記憶が途切れていて、次の記憶は病院で目覚めたところだと説明した。
「これは完全に僕の憶測だけど、発生源から段々と概念というものが消えていったんじゃないかも思うんだ。消えて、概念さえも残っていないから誰も覚えていない」
「……」
「驚いた?」
「驚きはした」
素直に答えると右京は笑ってそんなもんだよねと言った。
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