3回目 8
銃声が止んだ後、右京は部屋を出て地上に向かった。
倒れている颯と庵の体の至る所に銃創がある。
響は刀傷だらけだ。
「……」
ここで右京が得た能力は、誰かのダメージを誰かに肩代わりする能力。
三人を順番に拠点に運び込む。
止血と応急処置をして、重症の颯の体に触れダメージを吸い取る。
体に痛みが走っても能力を使い続けた。
少し経って庵が一度目を覚ました。
また眠りについたのを見届けて部屋を出る。
なぜかこの病院の入り口に物資が置いてあることがある。
実際、今自分達が着ている服もこの物資の中にあったものだ。
今日も段ボール箱が届いている。
この世界にまだ自分達以外の人間が残っているのだろうか。
颯は夢を見ていた。
まだこの世界がまともに機能していたころの夢だった。
でも今の世界の方がずっとましだ。
最初は自分の研究を認めてくれる人がいることが嬉しかった。
自分の存在意義だとさえ思っていた。
でも大きくなるにつれて幼い頃から聞いてきた言葉が空虚なものだと気付いた。
それでも空虚な存在意義に縋るしかなかった。
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