3回目 2

病室のドアが開いた。

「!!」

同時に振り返ると、入り口のカーテンの向こうに二人の人影があった。

響が咄嗟にベッドサイドの電気スタンドを人影に投げつけた。

高校生とは思えない勢いで電気スタンドが飛んでいき

―――背が高い方の人影に片手で受け止められた。

ガラスが割れる音が響いた。

「こんにちは、庵くん、響くん」

カーテンの向こうから声が聞こえる。

「誰ですか」

俺と話すときよりもかなり硬質な声で響が応じた。

シャッと音を立ててカーテンが開いた。

立っていた二人は響や俺と同じ病院着を着ていた。

「君達が最近死にまくってる子達?」

隣の響も同じようなものだろう、体が動かなかった。

二人の病院着には大量の血液が付着している。

「っ、その、血は」

「これはただの返り血だから気にしないでね」

「何故返り血を浴びるようなことに」

「僕の質問に答えて貰いに来たんだけどな」

態度は朗らかだが、彼の話し方や声にはどこかぞっとするような響きがあった。

「嗚呼、最近2回死んだ。それで、此方の質問に答える気はあるか?」

「あるよ」

そう言って彼はにっこりと笑った。

「僕は、柊右京。こっちの喋んないのが、結城颯。君達と同じように二人で目覚めたんだ」

「ナースステーションのカルテに、貴方達は死んでいると書いてあったのは何故だ」

「順を追って説明するね。僕達が目覚めた病室には大量の銃器があった。戦えって言ってるみたいにね」

自分達の病室にはそんなものはなかったし、最大で一週間ほど生きても戦いを強いられるようなことはなかった。

「俺達はそんなことはなかった」

「それが何故か、僕達でもすごく疑問なんだ。でもこれまでここにいて分かったこともいくつかある。何を教えてあげようか」

右京は颯の方を振り向いて笑った。

颯の表情は変わらない。

「例えば、僕達は死んでからここに来ていること。君達のカルテをよく見れば死亡日時も書かれているはずだよ」


――――――――――――――――――――――――

《神楽 庵》

物語の登場人物。

十八歳の元高校生、男性。

黒髪黒目。

カルテの数字は7。

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