第6話 ルシアとセラフィ

 池にダイブして少しの後。陸を求めて浮上した俺は現在全裸の美女二人に詰め寄られていた。


「おい!貴様、手を挙げたまま反対側を向け。いいか?私とルシアを変な目で見たら即座に叩き切る」


 まるで不審者とそれに対峙する警察官の様相である。いやまあ確かにいきなり降ってくる男など不審者以外の何物でもない。こうなるのも無理はないのかもだが...。

 

 剣を突きつけ俺を睨みつけるのは綺麗な金髪の女性。どことなく女騎士を彷彿とさせる言動と意志の強そうな瞳。

 

 対して彼女の後方で杖を構えるのは銀髪ショートのこれまた綺麗な子である。どこか幼さの残る雰囲気からして中学、高校生位の年齢だろうか、先程から金髪の女性を宥めてくれている。

 

 そうしてる間にも見えてはいけないものが色々と見えてしまったので滅茶苦茶テンパる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。後ろを向くし、誓って何もしないから切るのは勘弁してくれ」


「そうだよセラフィ。いきなり切りつけるのはよくないよ...せめて話を聞いてからでも」


 どうか穏便な方向へ進んでくれと考えていたその時、右手に着けていた指輪が淡く光りだした。


「な!?貴様こそこそと詠唱していたな!?何をするつもりだ!」


 指輪の光を攻撃の準備と勘違いしたらしい金髪の女性が即切りかかってくる。悪即斬の勢い。


「誤解だ!俺は魔法の使い方なんて知らない!」


「知らない訳があるか!逃げるな!」


 溺れそうになりながら死に物狂いで逃げる俺が哀れに思えたのか、暫くした後に手足を縛られめでたく事情聴取と相成った。

 

 こうして異世界に来て初の現地人との接触は、女性の水浴びに乱入し裸の女性に縛られるという何とも形容し難い結果に終わったのだった。




「それで?今の話が事実だとして、お前はこれからどうするんだ?」


 その後、縛られ近くの雑木林に押し込まれた俺は着替えを済ませた二人に事の経緯を詳しく尋問されたのだが、馬鹿正直に話しても信じて貰えないだろうと思ったのですっとぼける事にした。

 

 必死の形相で記憶が無いと何度も伝え、半信半疑だった二人がとりあえず納得するまで粘り続けたのだ。これなら詳しい地名も聞かれることはないだろうし大体の常識も知らないで通せる筈だ。


「二人が拠点にしてるルクトの村だっけ?出来たらでいいんだけど、そこまで俺も連れてって欲しい。そこからは働ける所を探して自分で何とかするよ」


 聞いた話では二人はルクトという村から食料となる動物を狩りに来ていたのだという。金髪の女性がセラフィで銀髪の子がルシア。

 

 先程の指輪の反応やルシアに関して詳しい話をしたいが今は余計な疑いが増しそうなので難しい。その為とりあえず二人に同行して関係を深めて行こうと考えた次第だ。


「ふむ...ここに置き去りにして死なれても寝覚めが悪いしな。仕方ない、ルシアもそれでいいか?」


「勿論。ツグミさん、私も村で生活できるようお手伝いしますので、頑張ってくださいね」


「ああ、本当に助かる」


「但し、ツグミのせいで狩りの時間を無駄にしてしまった。これでは帰れないから荷物持ちとしてついてきてくれ」


 ある程度の獲物を確保したいらしく、そのまま三人分の荷物を持ち必死に二人へ着いていく。 

 

 ルシアは手に持った杖の先端から弾丸の様に石礫を発射し先制攻撃、そしてセラフィが目にも留まらぬ速さで獣に止めを刺していく...。試しに俺も石を作り出せないかと念じてみたがさっぱりだった。


(後でルシアに教われないか聞いてみるか...)


 その後も森を進んでいく二人。魔法を教わり一度日本へ帰れたら二人へお礼の品を用意するのもいいかもしれない。なんなら二人を日本へ連れていく事は出来ないだろうか、等と思いを馳せてしまう。

 

 結局村へ着いたのは夕暮れ時の事だった。





 

 






 

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