第12話 不可視
葵は驚いて、思わず自転車を急停止させた。その声は茜に間違いなかった。
「茜、どこにいるんだ」葵は周囲を見回したが、誰もいなかった。
「葵、急いで」葵は茜の言葉に従って、左折すると狭い路地に身を隠した。すると茜の言葉どおり自転車に乗った二人の警察官が走り去っていった。
「葵、あなたには普通の人には無い能力があるの。その隠れていた能力が今目覚めようとしているの」「大楠山で見たことを言っているのか」
「あれは幻覚なんかじゃないし、連続した殺人事件の発端になっているの」
「まさかあれが地獄の門とか言うんじゃないよね」
「葵、今は詳しく話している時間が無い。分かっていることは今まで封じ込められていたものが現れ始めているってこと。葵にはそれが見え始めている」
「ぼくは一体どうしたらいいの」「まずは向日葵を助け出して。それから見えるものを怖がらないで」「今まで二人も死んでいるのに怖がらないなんて無理だよ」
「外見だけで判断してはだめ。危険がある時は私が教える。さあ、すぐに出発して」葵は耳元で囁く葵の指示に従って、向日葵の入院先を目指した。葵は天候の急変を予感していた。吹きつける風がしだいに湿気を帯び始めていた。
「あっ」という叫び声とともに葵は自転車を急停止させた。前方から数人の男女が歩いてくるのだが、その動きは明らかに奇妙だった。遠目にもぼろ切れのような服装で泥酔者のように足元がおぼつかなかった。近づくにつれて、葵には彼らが生きているとはとても思えなかった。
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葵の旅 @Blueeagle
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