第4話 不思議な光
葵は岡田先生との約束はきちんと守り、1週間ごとの課題をレポートにして提出した。授業の準備で多忙を極めるのに先生は葵のレポートに目を通し、優しい励ましの言葉で答えてくれた。
いつものよう葵を見送る向日葵も岡田先生との約束を知っているので何も言わずに送り出していた。ただ今までと違うのは登校しない葵に弁当を持たせることだった。葵はいつもどおり大楠山の頂上を目指していた。
不思議な少女茜にはこの2週間会っていなかった。茜は突然現れたと思うと突然消えてしまうのだった。一度は追いかけようと思ったが、まるで霧の中に消えていくように姿を見失ってしまった。葵はいつものように大楠山の頂上近くの斜面に大の字に寝転ぶと青空をゆっくりと流れていく白い雲を眺めていた。
葵はいつのまにか眠りに落ちたのか、頬を伝わる水滴の冷たさに目が覚めた。いつの間にか雨が降り始めていた。さっきまでの晴れ渡った青空がどこに消えたのか、空一面を黒い雨雲がおおっていた。眩い光を放つ雷とほぼ同時に雷鳴が激しく空気を揺さぶった。葵から数十メートル下った所に雷が落ちた。
雷が直撃した樹齢数百年の大木が音を立てて倒れた。辺りは一瞬にして、漆黒の闇に包まれ、大粒の雨が地面を激しく叩くように落ちて来た。葵は闇の中で方向感を失った。ずぶ濡れで重くなった瞼を上げると前方にほのかな紫色の光が見えた。葵はその光に引き寄せられるように近づいて行った。
漆黒の闇の中で紫色に輝く光の輪は空中に浮かんでいるように見えた。葵が目と鼻の先まで近づいた瞬間、光輪の波打つような動きが止まり、一瞬にして鏡面に変わった。鏡に映っていたのは葵の顔だった。
しかし、その端正な顔はしだいに歪み、吐き気を催すほど醜悪な表情に変っていった。葵が恐怖で後退りした時、鏡面が割れて辺りに飛び散った。その衝撃で葵は意識を失った。
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