第31話 義手
「結構、重いのな。義手って」
俺はさっそくガチャで排出された『戦闘用強化義手(左右使用可)』を取り出してみた。
ずっしりくる重み。
マネキンの腕とそう変わらない見た目のそれを指先で撫でた。
「……よろしくな。俺の新しい腕」
装備するのにわざわざアイテムボックスから取り出す必要はなかったが、なんとなく、その前に触れて確かめてみたかった。
俺の新しい腕。
人生で、腕を取り替える機会なんてほとんどないから。
なんとも言えない感覚だった。
俺自身、なにを言いたいのか、なにを思っているのかすら曖昧で。
ただ、明確なのは一つだけ。
「一緒に、アイツを殴り飛ばそうぜ」
この胸に、絶えず
それを鎮めるためには、もう一度アイツに会う必要があった。
アイツに会って、病院送りにする。
そのためにも
「お兄ちゃん、もしかして……木原さんの仇を」
「このまま、黙ってられるほど俺は大人じゃねえ」
「……うん。そうだね」
ウララも拳を握る。
光を失っていたその双眸に、新たな光が宿った気がした。
「あいつを倒さないと、わたしはわたしを許せなくなる。黙ってみていた、助けることができなかったこの愚鈍を、一生ゆるせない」
「で、でも、相手はランキング9位……か、勝ち目はあるの……?」
「死んでも勝つ。それだけだ」
「……わ、わかりました」
はっきり言って、勝機があるとは思えなかった。
相手はランキング9位。
公式に載っている現在レベルは85。
俺とのレベル差は、68。
その分だけステータスの差も広がっているはず。
正直、見当もつかない強さだ。
おっちゃんの時にみせたアレはほんの片鱗に過ぎないのは、火を見るより明らか。
ある程度予想ができれば、対策のしようがあるのかもしれないが……。
「……作戦はわたしが考える。三日ちょうだい」
「うちも……戦うから」
「いや、戦うのは俺一人でやらせてくれ」
「そ、そんな……っ」
「頼む」
「あ、頭下げないでください……っ! わ、わかりましたから……!」
「ありがとう、柚佳ちゃん」
慌てふためく柚佳ちゃんに礼を言う。
「どっちみち、戦えるのは一人だけだと思うよ」
ウララがスマホをいじりながら言った。
何かを閲覧しているようで、すごい勢いで画面が縦にスクロールしている。
「逢木鬼ウユカの情報はある程度、SNSとかまとめサイトで晒されてるの。有名人にもなると隠蔽スキルで隠したりするんだけど、逢木鬼は一切隠してないから知りたい放題だよ」
「ステータスとかスキルが丸裸ってことか」
「うん。週一で更新されてるし、わたしも視てる」
それで、と一つの写真をウララは俺に見せてきた。
それは影だった。
侵入を阻む、陽炎。
「職業専用スキル:凶剣の殺意《S》——かなり珍しい、強制的に
――――――――――――――――――――
名前:
Lv.85
職業:凶戦士、料理人
称号:バーサーカー、小物狩り
HP=8500/8500
MP=3400/3400
ATK=1780(+2000)(+1015)
DEF=1700(+1250)
MAG=1230(+500)
AGI=1550(+1000)
LUC=500(+100)
成長値=10(×3)
固有スキル:怒髪冠《EX》
職業専用スキル:凶剣の殺意《S》
武器スキル:二刀流の心得《A》、心眼《A》
スキル:剣術《A》、身体強化《A》、痛覚耐性《C》
料理《A》、縮地《A》、魔力放出《A》———
スキルP:0
――――――――――――――――――――
『職業:凶戦士……禍々しい血風身にまといし餓狼。ATKとDEFの成長値を3倍にする。さらに魔物を斃す度にATK+5』
『固有スキル:怒髪冠《EX》……沸き立つ憤怒の総和が攻撃力に加算される』
『職業専用スキル:凶剣の殺意《S》……凶戦士の殺意に当てられたものは、戦闘終了までステータスが5%下がる。さらに殺意の影が対象と周辺を覆い、逃げ道を塞ぐ』
ウララが鑑定とネットで得たスキルを紙に起こす。
出来上がったそれを見ながら、改めて俺とのステータス差に寒気が走る。
しかし、もはや歯止めは効かない。
負けるとか勝てるとか、そんなのどうでもいい。
必ずあの顔面に、拳をぶち込んでやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます