第20話 友達 2/2
「柚佳はこう見えてちょー優秀な
「よ、よ、よろしくお願いします……が、がん、ばります……っ」
木原のおっちゃんが待つテーブルに座り、軽く自己紹介を終えて、俺たちは柚佳ちゃんに今後の方針を伝えた。
目標金額の三億を稼いでおっちゃんの娘を助ける、という内容。
柚佳ちゃんはそれを聞いて、なんとも言えぬ表情で交互に俺とウララを見た後、二つ返事で協力してくれることとなった。
「沢奈さんはレベルどのくらいなんだい?」
木原のおっちゃんが柚佳ちゃんに訊く。
それは俺も気になっていた。
「女性にレベルを訊くのはマナー違反ですよ?」
「いや年齢じゃないんだからいいだろ」
「そういうのを気にする女の子も多いのよねえ」
「ぁ、ぅぅうう……っ」
俺とおっちゃんの視線に、恥ずかしそうにしながら俯く柚佳ちゃん。
ボソボソとなにか数字っぽいことを言っている気はするが、うまく聞き取れない。
そういえば、はじめて会った時もこんな感じだったっけ。
俺はウララを見た。
ウララは、そんな柚佳の様子をニヤニヤしながら見ていた。
「はぁ〜……かわいい♡ 癒される、まじ天使」
「ひゃう……っ」
真横にピッタリと椅子をつけて
なんだろう。ちょっと妬けるぜ。
「お兄ちゃん、嫉妬してる?」
「お、女の子相手にするかよ……っ」
「うへえ」
「ニヤけんな」
とはいえ、仲が良いに越したことはない。
美少女二人が絡み合ってる姿は見ていて心地がいいし眼福ものだ。
しかし、木原のおっちゃんは不安を募らせたまま。
「本当にいいのでしょうか……女の子に、タンクだなんて危険な役割を任せても……」
「ウララが信用して連れてきてんだ。少なくとも俺たちよりは強いと思うぜ」
なんたって、俺たちより強いウララが一緒に戦っていた
「あ、ちなみに前回言ってた編集者って柚佳のことだから」
「あー、そういえばなんか言ってたな」
だいぶ序盤の方で。
「柚佳の家に編集機材揃ってるし、今アップしてる動画も全部柚佳がつくってるんだ。配信のアーカイブを柚佳に送りつければ、一つの配信で五個は動画作ってくれるよ」
「あの効果音もめんどくさそうな字幕もショート動画も、全部一人でやってんのか?」
「す、す、すき、なので……そういう、の……お、おもしろいし……」
「ちなみにタンクやりながら二カメラ担当するよ」
なんだろう。俺はこの子が不憫でならない。
「これで魔物狩りはかなりやりやすくなると思うよ。オークの巣窟もきょう明日で抜けられると思うな。目指せ、十階層ボス!」
「やったな、おっちゃん。レベル上げまくって強くなろうぜ」
「そ、そうですね……」
「と、その前に」
ウララがスマホを取り出して、ギルドを開いた。
「木原さんはまずジムの予約を済ませてね。あとスキルもこっちでいい感じの構成考えといたからまず習得して……心配しなくとも元手の二倍は稼がせてあげるからね」
「……ハイ」
木原のおっちゃんが死にそうな顔をしながら、ジムのネット予約をはじめた。
「う、う、うちはと、トイレ……い、行きます……っ」
「気をつけてな」
「は、い」
モゾモゾと小動物のようにコンビニ内のトイレへ向かう柚佳ちゃん。
ウララは木原さんへの指導モードに入ってる。
手持ち無沙汰になった俺は、ギルドを開いた。
『お疲れ様です、探索士さ——ひゃあっ!?』
「うほぉッ! たまねえやこの胸はよォ!」
『……探索士さま』
「ごめんって」
マウリちゃんとのいつもの挨拶を済ませ、俺はスキルショップに向かう。
「所持金は三〇万か……知らないうちにだいぶ貯まったな」
討伐報酬やらデイリー依頼やら実績やらをクリアして、気がつくと一週間足らずでサラリーマン時代の月給を超えていた。
「配信の投げ銭も合わせると四〇万は超える……の、か?」
ちょっとこれはヤバイ。
魔物を倒したドロップ品なんかも売れば、さらに金額が増える。
そりゃみんなダンジョンに篭るよなって話だ。
ビーチューブの収益も許可されれば、いったいどれだけ稼げるのだろうか。
案外、三億はすぐに貯まってしまうような気がした。
「底辺階層でこれだけ稼げれば、上に行くとどれだけ稼げんだよ」
俺は震える指先でスキルをタッチした。
『千里眼《F》:俯瞰した視点で戦況を読み解く。ランクに応じて世界の
俺は数秒悩んで、購入ボタンを押した。
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