ミーティングに俺の存在感は無いようです(代表ってなんなんだろうね?)

 なんだかんだとツッコミどころは割愛させてもらって、blessing softwareの新年度初ミーティングが始まったわけだけど……


「今年に関しては、僕もあくまでも推測だから違ったら申し訳ないけれど加藤さんも、そして出海もまだ2年だし、氷堂さんと倫也君に関してはフリーなわけだから全員昨年度よりも取れる時間は多くなっていると思う。だから、今年は夏コミに『冴えない彼女の育てかた』の追加DLCとして、その後の姿を描いた『冴えない彼女の育てかたAfter Stories』の頒布と、冬コミで出す新作のキービジュアルのペーパーの配布を行おうと思うんだけど、みんなはどう思うかな?」


 いつもは決まったスケジュールに対してあれやこれやと手を出してくるはずの伊織が今回は提案をしてきた。その提案に対して四者二様の反応三対一を示しつつ、その中の三側の筆頭(?)であるメインヒロインがその提案に対する質問をぶつける。


「波島君、そのAfter Stories?のシナリオは全ヒロイン分作るの?」


「いや、この後日談はあくまでもメインルートの世界線におけるアフタールートのみだ。だから、他ヒロインのルートでの後日談は作らない。ただし、このAfter Storiesにも選択肢による分岐ルートは作る予定だよ?まあ、ただただ幸せなルートだけを見せるのは目の肥えたギャルゲーオタクの食指を動かすことはできないからね。基本的には平和なルートだけれど、一部は他ヒロインとの関係値にいくルートやバッドエンド寄りな世界観ルートも組み込んで欲しいとは思っているよ」


「なるほど……」


 伊織の説明に少し悩む表情を見せた後、恵が下した判断は……


「私はいいんじゃないかなって思ってるよ?バッドエンド寄りなルートに関しては大いに倫也くんとお話しして決めたいけど」


 というものGOサインだった。そんな実質的代表の判断に、三側の残りの2人出海ちゃんと美智留も盛り上がり始める。ただ、そんな中でも俺は気持ちが上がっていなかった。


「あ、あのさ?俺は、ここでそういうのを出すよりも、冬コミに出す三部作の完結作に力を入れた方がいいんじゃないかなって思うんだけど」


 でも、この俺の正論気味の意見個人の感想ですは、より強大な正論の前にいとも簡単に負けてしまうことになる。


「倫也くん。こんな事を言うのは倫也くんに刺さるかもしれないけど、氷堂さんはまぁ置いておいたとしても、学校とかがある出海ちゃんとか、波島君とか、もちろん私とか、倫也くん以外がみんないいと思ってる中で、1、2を争うほど暇人に成り下がった倫也くんがそんなことを言うのはなんだかなぁだよ。まぁ、確かに間違ってはないと思うけれど、これから先、私たちのこのサークルを同人を越えて商業の世界に広げていくのなら、今までよりも使える時間は増えるんだから夏に出す後日譚も冬に出す新作もどっちも神ゲーにすればいいんじゃないかなぁ?」


 そんなフラットなようで実は誰よりもこのサークルblessing softwareのことを大切に思っている恵の想いを聞いてしまうと、俺もうだうだと言い訳を並べるようなダサいことはもうできなかった。


「じゃあ、今年の大きなスケジュールはこれで決まりでいいかな?ちなみに、夏コミ用のDLCについては後日談ではあるけれど、これだけでも独立しても楽しめるような作品にはしてほしいと思ってるから、まずは倫也くんのシナリオに期待かな?」


「そうだねぇ〜。去年みたいにうちのゲームをほったらかして他にうつつを抜かすようなどこかの代表じゃなければ仕上げてくれるんじゃないかなぁ?」


「そんなことないですよぅ!って言いたいですけど、それだけは恵先輩と同感ですぅ!」


「そうだねぇ〜。さすがにあれはトモのことは理解はしても納得まではできないよねぇ」


 そこからの俺には発言権などもうなく、他の4人が話しているのを聞いて、時にはクリティカルヒットして悶える時間が続いた。

 ……代表ってなんなんだろうね?

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冴えない彼女の育てかた after story 神崎あやめ @badstory1

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