パンドラの記憶【孤独な獅子】
ずいぶん懐かしい話だ。文字通りの登校拒否、いや、登校拒絶といったところか。
あの日、どこまでも続くあの坂を見上げて、
「ああ、この坂を上がってしまえば、学校に着いてしまうんだ……。」
とつぶやいて、長い長いため息をついた。そして、ため息が消えるように、意識も消えた。
この主人公も、長い坂を見上げて、同じように感じたのだろうか。
テストのエピソードにも驚いた。まさか、母の言葉までそっくり同じだとは。
ただ、一番悪い点数を上にして貼り付けたのは、柱じゃなくて壁だったと思うけれど、そんなのは誤差だ。
恥ずかしいから貼らないで、と、母に懇願したときに、恥ずかしかったら勉強しろと言われたのを、昨日のことのように覚えている。
わたしは、冷めたコーヒーを口に運んだ。
深海の羽衣の主人公も、自分の母親を恐れていたのだろう。恐怖心に負けないように、牙をむき出しにして、母親に立ち向かっているのだろう。
わたしは、孤独な戦いを続けるライオンを思い浮かべながら、深海の羽衣を開いた。
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