第5話 死ぬほど痛いんですけど!
マンションの屋上で能力の発見をしていたら他のHIROを見つけた。
エクストラスキル、他のHIROの能力を検索出来る能力… 長いな… HIROサーチと呼ぼう。
このHIROサーチで赤いスーツのHIROを見る事が出来た。
わかった事はHIRO名と年齢… そして能力だ。
能力には今発現している能力とまだ発現していない能力を見る事が出来た。
フォンッ
「ありゃ、表示が消えた?」
周りをみるとHIROレッドクイーンの姿はなかった。
「目視できないとサーチできないのか」
「まあ、また会う事もあるだろう」
「それよりもウリカちゃん!」
(なんでしょうか37)
「スーツだよ!スーツ!」
(スーツなら37の部屋、寝室にある小さいクローゼットの中に収納されていますが)
「え。あそこにあるの?」
(今の会社に入る前に量販店で安く購入した物ですね)
「それは普通のビジネススーツでしょ!」
(ええ、今はお腹がキツくなり着られなくなったスーツですね)
「良く知ってるねウリカちゃん、そうなのよ20代後半から体の一部が再成長しだして着れなくなって…」
(中年太りですね! ね! ね!)
「そんなはっきり言わないでも…エコーまで効かせて」
「じゃなくてHIROスーツだよ、初期特典の」
(初期パックですね)
「そう、それ!」
鏑木は誰もいない屋上で指をビシッっと刺して言った。
「俺用のがあるんでしょ?」
キラキラした目で期待している鏑木。
(わかりましたキラキラした目をしたおじさんは鑑賞に耐えませんので初期パックを出します)
「えへ」
恥ずかし気もなくぶりっ子ぶる鏑木。
(キモ!)
(はいどうぞ!)
ぞんざいにスーツを出すウリカちゃん。
「おおーこれが俺のスーツ…?」
目の前に缶バッチの様な物が現れた。
スカイブルーの下地に黄色で37と数字が入っている。
手に取り確認する。
見れば見るほど缶バッジだが裏に止めるピンは付いていない。
「これは?」
(それが37専用のHIRO初期パックです。37しか使う事は出来ません)
「どうやって使うのかな?」
(よく聞いて下さい。まず初期パックを人差し指と中指のみで挟みます。数字がある方を下にする様に)
「ふむふむ」
言われるがまま右手の指で缶バッジを指2本で挟んだ。
(そしてそのまま初期パックを胸の中心に文字が見える様に固定して下さい)
「こ、こうかな?」
(ちゃんと直立不動で行って下さい。猫背にならない!)
「う、うん」
改めてビシっと立ち缶バッジを指に挟み37の数字が綺麗に胸の中心に来る様に構えた。
(そこでサーティセブーン!と叫ぶ)
「ええ!ぞれはさすがに恥ずかしいのですが…」
(何か言いましたか?)
「何でもないです…」
覚悟を決めて叫ぶ、幸いここには誰も居ない。
「サーティせびゅっ!」
(噛んだのでもう一度ですね)
「うぐ…」
「サーティせブーン!」
もはやヤケクソで叫んだ。
胸の缶バッジが光出した。
眩い閃光が屋上を照らす。
「眩しいなぁ…」
閃光が収まり再び静寂な夜の屋上が戻って来る。
「こ、これが俺のHIROスーツ!」
(そうですね)
しかし、鏡が無いし暗いからさっぱりわからん!
(どうですか?)
「うむ、暗くてさっぱりわからんね」
(少しはわかるでしょう?)
「ああ、缶バッジの色と同じ空色に黄色の模様が見えるね」
黄色の模様は蛍光色に光っている。
そしてマスクも装着されているがその感覚がほとんど無い。視界は何も付けていない時と同じだし頬を撫でる風さえも感じる。
「すごいねこのスーツ、体にピッチリフィットしてるのに全然圧迫感とか息苦しさが無い」
(この世界の技術ではないですからそうかもしれません)
「しかし鏡があれば全身を見れるのだけどな」
(ピッ)
「おお、何これ?」
目の前に小さな枠やグラフの様なものが表示された。
(コンソール画面です。スーツのマスクにより表示されています)
360度視界良好のマスクなので画面が空中に浮かんでいる様に見える。
(ピコッ!)
左下の小さな枠に可愛いウサギ耳をした女の子の絵が現れた。耳がぴこぴこしている。
(マスクの画面に現在の37を移します)
ウリカちゃんが話すとウサ娘もそれに合わせて動いていた。
「ウリカちゃんウサギっ娘だったのか」
(それはアバターです)
「何だ、そうなんだ… 」
(ピッ)
真正面に大きく映像が表示された。
映像には全身がスカイブルーで蛍光イエローの模様が光スーツを着ている者が映し出されている。
「おおーこれが俺か!?」
手を振って見ると映像の者も同じ様に手を振っている。
(37を他視点から暗視モードで投映しました)
「なるほどこれが俺のHIROスーツ!」
体をクネクネさせあちこちを確かめる。
背中を見ると大きく37の数字が描かれていた。
「37か… 意味を知らなきゃかっこいいかな…」
「もしかして来年誕生日来たら38とかになるのこれ?」
(いえ,37はHIRO名として決定しているので変わる事はありません。よかったですね)
アバターのウサギっ娘も無表情に答える。
「そうか、年取るたびに数字が増えてくと思ったよ。まあ37でもこの数字何の意味か聞かれたら答えるのに躊躇するけど…」
良く見ると胸の真ん中にも先ほどの缶バッジくらいの37のマーク、マスクの額にも同じ様に37のマークがあった。両方にも…
「ちょっと37を強調し過ぎでは?」
(HIRO名が37ですから他に強調するものがありません)
ウサギっ娘が呆れた顔をする。
「でもまあ、HIROらしくはなったな」
(中年にも衣裳ですね)
「馬子にも衣裳だから!」
ウサギっ娘がどや顔をしている。
「それで?このスーツを着る事でなんか強化されたりするの?」
(身体能力は装着する前の1万倍、防御力なども1万倍になります)
「何それ!凄すぎない!?」
(37はさらに年齢特典でその2倍になります)
「おお!年齢特典というのが気になるがすごい!」
(ですが現在はセーフティが掛かっているようですね…
「ええ、それってどうなの?他のHIROと比べると?」
(セーフティが掛かった状態で他のHIROよりも約1.2倍の能力になります)
「1.2倍か~微妙だね。セーフティを解除する方法はないの?」
なぜセーフティが必要なのかがわからないな…
力が強すぎて安全装置とかならわかるけど、普通でも1万倍だよ?2万倍でも一緒だと思うんだが。
(情報がありません、調査しておきます)
(それと37は不屈の身体がありますのでスーツで2万倍強化されても痛みは普通です)
「ちょ!そこは痛みも無くそうよ?どんな荒行だよ!」
(不屈の身体は痛みを乗り越える事で発揮できる能力ですので痛みは必須です)
「やっかいな能力だな~」
(少しテストをしましょう、先ほどのブロックを蹴って下さい)
「え?あんなの蹴るの?なんで?」
コンクリートブロックを蹴るなんて絶賛やりたくないがアバターのウサギっ娘がさっさとやれやー!という顔をしているので渋々ブロックに向かった。
「これを蹴るの~?絶対痛いじゃん!」
(そうですね、でもダメージは無いはずです)
「どれくらいの力で蹴ればいいのかな?」
(思いっきりどうぞ)
「思いっきりって1.2万倍の力があるんでしょ?危なくない?」
(大丈夫です、その辺も説明する為のテストです)
ほんとか~ いきなり屋上壊したりして訴えられたくないぞ~。
それっぽくブロックの前で構えて左脚でブロックを蹴った。
ゴンッ!
「い、痛ったー!」
脛でもろにブロックの角を捉えて死ぬほど痛い。
痛みでゴロゴロ転がりまわった。
しかし、2回転位ゴロゴロしたら痛みは引きなんともなくなった。
「超痛いよ!ウリカちゃん!」
(そうでしょうね)
ウサギっ娘がニヤリとしている。
この娘はマゾか・・・?
しかもブロックを見るとなんともなってなかった。
「結構きつく行ったつもりだったんだけど全然ブロック壊れてないね?」
(はい、スーツの力が強すぎるのでAI《人工知能》により状況を判断し最適な力に制御されます)
「最適って壊すつもりで蹴ったんだけど?制御されすぎじゃ?」
(この場合、ブロックを壊した際に起きる影響が計算されブロックが破壊されないように制御されました)
「そんな事まで計算するんだ?すごいねAIって」
なるほど、コンクリートブロックといえども壊してしまうと後々問題になるからな。
でもそれじゃ力なんて全然出せない気がするが…
「でもどうしても壊したい時はどうするの?」
(どうしても壊したい場合にはその理由を思い浮かべ、後は根性で壊してください)
「根性かーい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます