11 遊園地の大怪獣
マグナスたち1行が怪物たちと戦っている時、もう一つの別の事件が起きていた。そこはこのパプリアのあるエステル諸島の最北端にあるビルゴル島だった。未確認の巨大な怪物が出たのだ。
ビルゴル島はゴールドマン知事の前任者メイランド知事の出身の地で、メイランド知事が空港建設を決めてからは、リゾートホテル、別荘地、遊園地など、メイランド知事の親族企業が次々と観光施設を招致して大人気観光地となった。だが、ご存じの通り無計画な乱開発で、観光客が年間何万人も訪れるようになると、海岸はごみであふれ、下水の垂れ流しで水質もひどく悪化し、臭いワーストリゾートとますコミにも取り上げられ、観光地は大打撃を受けて、一時はガラガラ状態となった。
そこで次の知事となったゴールドマン知事が環境改革を宣言、3年の間観光客を締め出し、環境条例を決め、パプリア全体で環境問題に取り組んだ。ここビルゴル島にも下水浄化施設がこの地域で初めて完成し、本格的なごみの焼却場やエネルギーの切り替え、もともとの自然を生かした農地の管理など、総合的に取り組んだ。その過程でジムのような作業アンドロイドが大活躍したのである。メイランドパークの遊園地も大きく様変わりし、波の静かな内湾の自然を生かしたふれあい水族館では、魚類を見るだけでなくビーチクリーンプログラムやサンゴ礁保護プログラム、高級な魚類の養殖体験プログラムなども行われるようになり、環境体験型アミューズメントも増えていった。
テーマパークのレストラン街も様変わりし、体験プログラムで見たマグロやスマなどの養殖魚が捕りたてで食べることができたり、海がきれいになったこの辺りで特産の大きなエビが食べ放題のロブスターバーなんて言うものもできた。普通のアミューズメントも改良され、丸いプラスチックの球体でできたバブルロボにのっての海中散歩や、潜水艦ジェットコースターでは、最後に海の中に水しぶきを上げてコースターが飛び込み、熱帯魚が群れ泳するサンゴ礁の中を走ったり、漁礁となった沈没した海賊船の隣を走っていくのである。海賊船には船長のガイコツや海の魔女などの人形が置かれ潜水艦が通るたびに海水が流れてユラユラ動く仕掛けも大人気だ。
また、7つのウォータースライダーが人気だが、小さな板をはいてウォータースライダーを滑り降り、その勢いで水上を30m滑っていくウォータースライダースキーやボードも人気だ。
この遊園地のすぐ沖に、見たこともない怪物が現れたのである。エイラス島やデノス島からはかなり離れているので怪物による封鎖なども行われず、生まれ変わったメイランドパークは今日もにぎわっていた。
サンゴ礁の海をめぐる遊覧船の乗客が最初に気付いた。遊覧船は200mほど沖合にあるブルーホールと言う海の中の青い観光名所を見て帰ってくるのだが、ブルーホールを見ようと海をのぞきこんでいた乗客が発見したのだ。
「とても大きなものが海の中を動いている。よく分からないが、イルカだとかクジラだとか魚の類ではない、体調が15m以上あり、海底を歩いていたようだ…」
すぐに遊覧船は港に戻り、遊園地の営業をどうするか話し合いが行われた。遊園地はその日は半日で終わりにし、すぐに軍の海洋部隊の出撃となった。海洋部隊は軍事用海中ドローンを使い、怪物の正体に迫った。
「なんだこれは…?いくつもの海洋生物が寄り集まったような形をしています」
ただデカイだけでなく、脚の部分はヤドカリ、胴体は無数のイソギンチャクとホヤ、イカの触腕やカニのはさみが手のように動き、深海魚のような鋭い歯も見える。しかもその怪物はやがて遊園地の方向に進路を変えると、バブルロボを襲い始めた。子供が乗っているバブルロボもいて襲われたら一大事だ。とりあえず、無人のバブルロボを自動運転で怪物の方に歩かせ、子供はその間に救出されたのだった。
子どもが襲われたとなるともう見ているわけにはいかない。軍部はモンデール博士に緊急通信を送り、指示を仰いだ。
「1つの大きなプラスチックを書くにして数種類の別々な生物がそこに集まり、1つの生物のようになったものがいくつも見つかっています。その怪獣の中心に、何か大きなプラスチックがあり、それをえさに集まってきた生物たちが合体したものと推定できます。プラスチックと生物を切り離すような攻撃が効果的だと思います」
それを聞いた軍は、近くに待機させていた潜水艦の魚雷攻撃で怪物を攻撃、大きな水柱が立ち、怪物はバラバラに粉砕されたのであった。バラバラになった内部を調べると、なるほど中心あたりに数百個のペットボトルが圧縮されたプラスチックごみが確認された。その日はそれで終わったのだった。
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