第9話
底なしダンジョンは本当に底なしなんじゃないか、なんて言われている。上の方は本当に弱いモンスターばかりが出現して、探索者になりたての人だって武器を振るえば普通に倒せる。そんな場所だから、初心者用ダンジョンとか、練習用ダンジョンとも呼ばれているが……実は一番下が全く見えないぐらいに何回層降りても次の階段が現れるのだ。故に、底なしダンジョンとも言われている。
ダンジョンは下に行けば行くほどにモンスターが強くなっていく特性があるので、一番上の階層がクソ雑魚しかいない練習用ダンジョンでも、50も潜れば中堅の冒険者でもきつくなり、80を超えれば上級者でも死人が出るレベルになるそうだ。練習用ダンジョンだからと舐めて深くまで潜って死人が出るのが後を絶たなかったので、ダンジョン庁の前身である組織は40階層から先の立ち入りに規制をかけた。
まぁ、俺が目当てにしているドラゴンは80階層より下らしいから、俺はその底なしで恐ろしいダンジョンに潜っていかなければいけないんだけども。これも有名になる為だから仕方ない。
「なので、今回は初の挑戦でできるだけ深く潜ってみたいと思います」
:何言ってんだこいつ
:頭悪そう
:筋肉とコラボするから頭が筋肉なったんだぞ
:いや、こいつ元からモテたいとか頭悪いこと言ってただろ
いや、ヨースケさんとのコラボで人が来るようになったのは確かだけど、みんな辛辣すぎないか? もしかして、俺って視聴者の皆さんの中では既にヨースケさんに勝るとも劣らない馬鹿だと思われてるような……有名になってもこれでいいのだろうか。
:で、モテるようになった?
:なってる訳ないだろ
:なってたらモテるためにドラゴンをとか言わないと思うの
:草
:まぁ、頑張れ
:モチベーションを保つ方法は人それぞれだからな
:お前、こんなことしなくても放送繰り返してたら絶対人気なれるよ
「数少ない視聴者さんが滅茶苦茶コメントしてくれてるけど、すごい辛辣なのは何故?」
:胸に手を当てて考えてみろ
:大胸筋に聞け
:頭ヨースケがコメントにもおるやん
:筋肉対話しろ
:筋肉二世みたいな扱いで草
:こいつも筋肉なのかwww
「俺はヨースケさんみたいに筋肉してませんよ!?」
とんだ風評被害だ!
俺はあんな筋肉だけで全てが解決できるとか口で言っておきながら、実は魔法も結構多用する万能系の探索者とは違う!
いや……戦闘スタイルとしては、刀振り回して魔力を固めた剣を振り回すんだから、俺の方が筋肉な気がするけど……そういうことではない。
「俺は、ちゃんと一途にモテたいんです。運命の人と出会い……そして結婚してなんやかんやです」
:お付き合いと結婚以外にビジョンが全く出てこないのが最高に童貞
:童貞の妄想かな?
:人間の関係ってのはそんなに簡単なもんじゃないぞ
:まだ魔法使いには早い年齢なのに、既に魔法使い感が出てる
:童貞の貧弱な妄想ならこれぐらいだろ
:やめてやれwwww
:俺にも流れ弾になるからやめろ
:視聴者は童貞の方が多いのでは?
「ぐっ……確かに、俺が持っている女性との経験なんてギャルゲとエロゲだけですけど……女友達と買い物ぐらいには行ったことありますよ?」
:1対1?
「……複数人です」
:じゃあ無理
:諦めろ
ま、負けた……こんなに簡単に視聴者に敗北するなんて屈辱過ぎる。何故俺はこんなにも弱いのか……モテ力の違いか。
「視聴者の人たちはきっとモテるんでしょうね。既婚者の人とかもいるんだろうし、友達も沢山いるんだろうなー! 皆さんで2人組作ってくださいね」
:あ
:おい
:絶対に許さないからなお前
:スレで晒してやる
:宣戦布告とみなしてよろしいか?
:陰キャガチギレで草
:2人組ちゃんと作れよ……あ、いないのか(笑)
:コメント欄にも鬼畜湧いてるぞ
:視聴者の分断をするとはやるな
へん! 俺は女にモテないだけで、友達は昔から沢山いたからそこらの陰キャとは違うのだ。男子グループの中では陽キャで、女性が混ざると陰キャになる奴いるだろ? あれが俺だ……いや、それでも俺は女子とも普通に話してたけど。
:いい人どまりだから実質一緒じゃん
:たし蟹
:私、優しい人が好き(大嘘)に騙されてきた人生はどうだ?
:若いねぇ……
:女は嘘しか言わないから気を付けろ
やっぱり的確にこっちの弱点を付いてくるような奴が何人かいる……こいつらは絶対に彼女持ちか既婚者だな。
勝てない戦いに興味はない!
「と言う訳でドラゴン探しに行きます。底なしダンジョンの魔導エレベーターがどれぐらいあるか知らないですけど」
:は?
:知らないとか引きこもりか?
:こいつ悪魔の巣窟出身なんだ
:悪魔の巣窟に住んでるとか変態じゃん
:草
:いやSランクの時点で変態だから事実だろ
:エレベーターは60まであったはず
:今70まで通そうって計画が進行中のはず……モンスターが強くて難しいらしいけど
「へー……簡単に下までエレベーターでいけるのはいいですよね。毎回階段降りてたらそれだけで死にますよ。別に30階層ぐらいならいいですけど、80階層ですから」
先人たちが築いてきたエレベーターに感謝しよう。
:それはそう
:このエレベーターなかったらダンジョン行く気にもならないからな
:正直滅茶苦茶ありがたいよな
「こんにちは、どちらまでですか?」
「あ、60までお願いします」
「……40階層以降は探索者ランクの提示をお願いします」
「あ、やべ」
そういえば言う時に一緒に探索者ランクを証明するのが普通だった……コメント欄見てて忘れてた。
「はい」
「……Sランク、ですね……し、失礼しました。60階層ですね」
いやぁ……エレベーターガールのお姉さんにも失礼なことしちゃったな……最初から提示しておけば変な風に警戒させる必要もなかったのに。反省しなきゃな。
:Sランクの探索者にビビってるの草
:俺だってビビるぞ
:Sランクとか頭おかしい連中ばっかりだから仕方ないな
:草なんだよなぁ
:お姉さんお仕事頑張って
まぁ、エレベーターガールの仕事だって楽じゃないだろうな。俺だってダンジョンの中でエレベーターの管理の仕事してくださいとか言われたらやりたくないと思うわ。だって、絶対の安全性が保たれている訳じゃないんだよ? 普通に嫌じゃない?
命かかってるからそれなりに給料はいいらしいけど、給料がいいからって命かけるほどの人はそう多くないよねーと、命かけながら金稼いでる探索者が言っても意味ないな。
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