第7話

「ふぅ……俺は恋愛結婚を諦めません」


:賢者タイムみたいなこと言いながら全く意見が変ってないんだが?

:草

:頑なだな

:いや、その思いだけでSランクになれるんだから彼はそれでいいんじゃないかな

:頑張れとしか言えない

:でも本当に気の合う人とじゃないと結婚は大変だぞ

:結婚する前に同棲しておくといいぞ

:同棲する相手は……いないですね(笑)

:やめてやれ


 はっ! 俺は視聴者の人たちと違って性格もいい……いい? からな!

 絶対に誰もが羨むような性格の良い人と結婚して、視聴者から妬みの声を聞くからな! 将来的に勝つのは俺なんだからな!


「目標を高く持つのはいいことですよ。筋トレと同じです」

「全部筋肉に繋げるのやめません?」


:それはそう

:言われてんぞ

:筋肉に正論は効かない

:筋肉はバリアかなんかか?


「ですが、高い目標だけでは挫けてしまうものです……まずは身近に目標を作り、少しずつ段階をアップしていくのが、目標達成のコツですよ。筋トレと同じです」

「最早わざとですよね? そういうキャラクターなんですか?」


:残念ながらいつものことなのだ

:そういう奴だぞ

:頭の中まで筋肉なんだ

:すまないな

:うちの筋肉がすまない

:筋肉謝罪

:なんでも筋肉つけるな


 いや、視聴者もいつもので納得するな。おかしいことにはもっとおかしいと声をあげていけ視聴者……そうでないとこんな筋肉で会話を済ませようとする頭の筋肉な奴が出来上がるぞ。もう出来上がってるけど、第2の筋肉を作り出さない為にも学べよな。


「ふむふむ……ここまでのまとめですが、オークツリー君は女性にモテたくて大学を中退……そのままダンジョン探索者の資格を取得。そうしたら才能があったのかあれよあれよと最速でSランクに昇進して、この間初めて配信したら殆ど視聴者が付かなかった」

「そうです」

「このままではいけないと思いながらも、できることがなくそのまま朝起きたら登録者数が5000に増えていて、私からのコラボ依頼が来ていたから、私が有名なことを知って受けたと」

「最初が女性からのコラボだと嬉しいなと思ってました」


:潔いぞ

:筋肉はいいぞ俺も女にモテたからな

:自分磨きみたいなもんね

:自分磨きのために大学辞めるとかアグレッシブっすね(適当)

:モテるかなぁ?

:顔はそこそこだと思うんだけど

:キープ君って感じ?

:いや、いい人止まりやろ


 冷静にコメント欄で俺が女性からどう思われるかを考えるのやめませんか?

 精神的な苦痛を理由に開示請求しますよ?


「難しいですね……私が妻と出会ったのは筋トレジムでしたので、最初から趣味が合う仲間としてそれなりに良好な関係を築けていましたが」

「俺にそんな趣味、ないです……ゲームやるぐらいですけど、オタク趣味です」


:俺たちがついてるぜ

:仲間じゃん

:俺もソシャゲばっかやってるから大丈夫だって

:なにが大丈夫なんですかね?

:探索者としては限りなく成功してるから大丈夫だって

:へーきへーき

:草生えた

:望まぬ方向に成功してしまった男

:その方向に成功したくて頑張ってる奴が星の数ほどいるのにな


 そんなこと言われても、俺は探索者として成功したいんじゃなくて運命の一人にモテたいんだ。大多数の人にモテても運命の人にフラれてしまっては意味がない。ならなんで大多数にモテる有名ダンジョン配信者を目指したのかって?

 さぁ? なんでだろう……多分初手から間違えてるわ。


「まぁ、モテるかモテないかはわかりませんが……Sランクの配信者はそれだけで視聴者がつきますから、数ヵ月も配信していればあなたも立派な人気ダンジョン配信者になれていると思いますよ」

「Sの肩書に寄ってきた視聴者……複雑な気分ですっ!」


:こいつもうなんでも発狂するだろ

:くっそおもろいな

:チャンネル登録したわ

:普通に笑える

:地味にテンション高めなの笑えるから無限に配信しろ


 俺は視聴者とイチャつきたいのではなく、性格がいい俺の運命の相手とイチャつきたいのだ!

 まぁ……女性にモテるかモテないかの話は一旦置いておくとしても……ヨースケさんの配信の人気によって俺のチャンネルの登録者数はこれからしばらくはうなぎ登りだろう。問題はその視聴者の数をどうやって維持するかだけど……なにかいい方法はあるかな。ヨースケさんはSランクの名前を掲げながら数ヵ月配信していればそれだけで人気配信者になれると言っていたが、それでは遅いのだ。


「最短で有名になれる方法を、聞きたがっていますね」

「な、何故バレているんですか?」

「ふっふっふっふ……実は、私は結構な人からどうやれば有名なダンジョン配信者になれるのか聞かれるのです。そして普段から私はとにかく探索者としての実力を身に着けることと教えているのですが……私より強い貴方なら可能な方法があります」

「それはなんですか!?」


 ここはハングリーに食いつく!

 有名になれるなら、公共の福祉に反さない範囲でなんでもやるぞ!


「簡単なことですよ……この底なしダンジョンで、希少種であるドラゴンを討伐することです。ドラゴンを討伐できた実績があれば、ダンジョン探索者としても、勿論ダンジョン配信者としても一気に飛躍できるでしょう」

「わかりました! 俺、頑張ってダンジョンに潜ってドラゴンを探します!」


:希少種って言ってんだろ

:オーク君も人の話聞かない人種だな

:Sランクってそんな連中

:知ってた

:ドラゴンスレイヤー君は1年ぐらい配信して一度も会えてないんですけどね

:草

:ドラゴンスレイヤー(仮)やぞ

:これはオーク君もドラゴンスレイヤー(仮)の仲間入りやね


 底なしダンジョンに出現するドラゴンを討伐すれば、俺は有名人になれる。覚えたぞ……実は今まであんまり底なしダンジョンに潜ったことが無いので、ほとんど初見みたいなもんだけど大丈夫だろう。


「ちなみに、ドラゴンはかなり深い場所でしか発見されたことが無いので、行く場合はお気をつけて」

「はい! 俺はなんとしてでもドラゴンを討伐して有名になってみせます!」

「貴方の筋肉ならすぐにでもドラゴンに出会えることでしょう。頑張ってください!」


:駄目だこいつら

:草まみれや

:こうしてドラゴンを追い求める探索者がまた1人増えるのだった

:これは罪深いことをしたな筋肉

:罪の筋肉だな

:え、罪な筋肉?

:なんだよ罪な筋肉って……オーク君とは違ってモテる筋肉のことかな?

:草

:オーク君を馬鹿にするな

:笑ったぞ

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