第17話 相棒

「本当にありがとう、ロードにーちゃん!」

 あれから三日後。ようやく落ち着いたので、旅立つ前にアキに会いに行った。下層から屋敷に戻ったアキは、随分元気そうだ。父親も、なんだかスッキリした顔をしていた。

「本当にありがとうございました。何度お礼を言っても足りません」

「俺は、ただの通りすがりのもんだ。礼なら、この街の住民に言ってやってくれ。みんな、もう一度あんたを信じてくれたんだ」

 街の管理権は、領主に残ったままになった。会心したことが街の住民に伝わったからだ。その手始めに、税金を下げたり整備が甘くなっていた道の舗装工事に着手したりしている。この街が再び元の姿に戻る日もそう遠くないだろう。

「本当に、いっちゃうの?もっといてもいいのに」

「はは、ありがとよ。けど、俺は行かなきゃいけねぇとこがあるんだ」

「そっか。……うん、わかった!元気でね、ロードにーちゃん!僕のこと、忘れないでね」

「ああ、忘れないさ。世話になったな、ありがとよ」

 二人に別れを告げ、街の外に出る。領主のおかげで旅の資金に余裕ができたし、かなり遠くまで行けそうだ。次はどこに向かおうか。そう考えながら、街の外をしばらく進んでると。

「おーい!まちやがれー!」

「へ?」

 後ろから、知った声がした。振り向くと、ルークが馬に乗って全速力でこちらに向かってきていた。なんで⁉︎

「はー、追いついた追いついた。馬なんてひさびさに乗ったぜ」

「な、なんでここに⁉︎忘れもんか⁉︎」

「はは、驚いてんな!何、ちょいとオマエのことが気になってよ。ついていくことにした!」

「はぁ⁉︎」

 ルークは軽快に笑う。その顔は晴れやかだ。

「オマエ、なんかほっとけねぇ顔してるしよ。それに、街を救ってくれた恩は、返さねぇとなぁ?オレはそういうところ、ちゃんとしてんだぜ?なぁに、足手まといにはならねぇぜ、勇者様?」

「おま、それ覚えてたのか……」

 魔物が死ぬ直前。俺が勇者であることを喚いていた。それをちゃんと聞いていたらしい。「まさか、本当に勇者だとはな!驚いたが、なんだかしっくりきちまった。オマエの旅の行く末、オレも共にいくぜ。なに、長い旅になるんだろ?退屈しなくていい」

「街のことはいいのか?ルーク、なんだかんだで慕われてたじゃねぇか」

 作戦のあの日の士気の高まりよう。あれはルークの信用あってこそだ。それを残して、旅についてきていいのだろうか?

「あの街は、もう大丈夫だ。アキがうまくやっていくさ。それより、オマエについて行った方が何倍も楽しそうだしな!──というわけで、改めて。オレの名前はルーク。オマエの旅の行く末まで、一緒に行ってやるよ。よろしくな、相棒!」

 一人だった俺の旅路に、仲間が増えた瞬間だった。

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