第10話 天使
「はー疲れたな、なんか」
あれから二人と別れ、上層部に戻ってきた。下層部だと気が付かなかったが、外はすっかり暗くなっており、お腹の虫もなっていた。慌てて出店で飯を買って、ついでにパトリシアのための人参も買って宿に着く。一日別行動だったからか、パトリシアは少しご機嫌ななめで。すまん、明日も留守番だ!せめてもの機嫌を取るために、ブラッシングをしっかりしておく。パトリシアにはこれからも世話になるし、ここで彼女の機嫌を損ねたくはない。
作戦は明日の夜だ。陽動班が領主の家の前で暴れて気をひいている間に、俺とルークとアキで、裏口から侵入する。アキは自分の家なので、間取りをよくわかっている。だから案内役だ。「当日バテないようにいっぱい走ったの!これで二人にも負けないくらい走るよ!」と言っていたので、危なくなった時の逃げ足は大丈夫だろう。問題は、ルークと俺が上手く連携をとれるか、かな。他人と共闘したことがないから、そこが心配なんだよなぁ。ルークの戦闘スタイルも良くわかなんねぇし。装備を見た感じ短剣だったから、俺と違って素早く懐に入っていく、みたいな感じだろうか?盗みの手も鮮やかだったし、そういうの得意そうだ。
「ねみぃな……早めに寝るか」
ここに来るまでしばらくキャンプ生活だったから、ベッドのふかふか具合が心地いい。これならすぐに寝れそうだ。
「明日、上手くいくといいな」
布団をしっかりかけて、目を閉じる。今日のことを思い出しながら、すぐに眠りに落ちてしまった。
魔物は全て「共喰い」により進化してきました。己より強い個体を食い続けることで、その強さを受け継ぎ。より強いものへ、強いものへと生まれ変わるのです。
遠い遠い昔、人がようやく生まれた頃。魔物の中から特別なモノが生まれました。「それ」は「共喰い」だけでは飽き足らず、ありとあらゆる生物を食べ。ついには「天使」を喰らいました。「天使」を喰らった「それ」は、見かけだけは「天使」のようにも人のようにも見えました。しかし幾度も幾度も「天使」を喰らおうとも、羽だけは得ることができませんでした。「それ」はやがて人を喰らうようになりました。「天使」によく似た人の、何が「それ」にとって気になったのかはわかりませんが、それにより人も危機にさらされたのです。人は「天使」と共に戦いました。「天使」は同胞を殺された報復に。人は生存の頂点を賭けて。幾度も幾度も戦いました。やがて、「天使」と人の間に生まれた者が「それ」を封印することに成功しました。ですが、この封印は永遠のものではありませんでした。「天使」と人は血を繋ぎ、必ずくる「それ」の復活と共に生まれる勇敢な戦士を送り出し続けました。
「それ」に名はなく。人は「魔王」と呼ぶことにしました。
かの戦士は、今日では「勇者」と呼ばれています。
「魔王」が幾度蘇ろうとも。「勇者」がある限り、世界は平和であり続けるのです。
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