第4話 決意
夜中に、ふと目が覚めた。窓の外は、まだ星が瞬いている。鶏の声は聞こえない。……寝直そうにも、なんだか目が冴えてしまった。親父、まだ起きてんのかな。気になって、部屋に向かった。ドアの隙間から、うっすら光が見えている。まだ起きているようだ。ドアをノックする。驚いた様子だったが、入室の許可が出た。ゆっくりと部屋に入る。
「おや、随分早いお目覚めだね。この通り、まだまだ外は暗いよ?」
「悪りぃ、なんか寝れなくて。親父こそ、まだ起きてんのか?」
「ふふ、バレてしまったね。今日届いた本を読んでいたんだ」
そういう親父の手元には、今日受け取った本。緑色の表紙のそれは、かなりのページ数がありそうだが、もうほとんどが読まれていた。
「その、親父は何を調べているんだ?」
「ふふ、気になるかい?ちょっと、ね。魔王について、調べているんだ」
「魔王」
この世界には、数百年に一度の天災として「魔王」という存在が復活する。その天災はいくつもの国を滅ぼし。最後は世界そのものを滅ぼす存在になるのだという。だが、それが阻止されてきたのは。魔王の復活と同時に、「勇者」もまた生まれ落ちるといわれているからだ。何千年も続く魔王と勇者の戦い。それは、もしかすると。
「それって、もしかして。隣街が燃えたことと、関係ある?」
「さて、どうだろうね。けれど、可能性がないわけではない。お前も、ここ数年魔物が増えているのは感じているだろう?」
俺はうなづく。スライムくらいしか出ない村の周囲だが、それでも数が増えるとなると話は別だ。俺や用心棒たちのように鍛えている人たちはまだいい。だが、女子供や老人は違う。たとえスライムであっても、数が増えれば脅威になる。村の外に出られない日が来るかもしれない。
「魔王が、復活していたとして。それでもこの村のためにできることがないか。それを探しているだけだよ」
「親父……」
親父はこの国を守るための大魔法使い、賢者と呼ばれた人だ。引退した今でも、自分にできることが何か、探しているのだろう。
「俺も、俺も何か手伝えないのか?」
「ロードが、かい?ふむ。お前は充分強い。私が教えられる魔法も、用心棒たちが教えた剣術も。すべてものにしてみせた。それだけで、充分だよ。ああ、だけど」
「だけど?」
「もし、この村を出ていくことがあるのなら。その時は、お前の強さで誰かを救ってやってほしい。それが、私の願いかな」
「俺が、村を出る時……」
これまでも何度か、そういう話はあった。あったが、それは親父からではなく、村の住民から言われたことだった。親父からこうして直接言われたのは、初めてだ。
「ああ、わかった。俺に、何ができるかわからないけど。誰かのために、この力を使うって約束する。──約束するよ」
親父は、にっこりと笑った。ランタンの灯りに照らされたそれは、とても優しかった。
「さぁ、夜ももう遅い。そろそろ私も寝るから、お前も戻りなさい」
「ああ、わかった」
おやすみ、と。そう言おうとした時だった。
村の教会から、聞いたこともない断末魔の叫びと共に、爆発音が聞こえたのは。
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