第2話 村の日々

「じーちゃーん!牧草はこれで最後かー?」

「おお、それで最後じゃー。いやー助かった助かった。ありがとさん」

「いいってことよ。馬、元の位置に戻しとくな」

 一度外に出されていた馬を呼び戻す。えーっと、ジャック、シンシア、メイリン。

「あ、こら、ちょっと待って!あはは、くすぐってぇよ」

 じーちゃんのとこには馬が四頭いるのだが、そのうちの一頭であるパトリシアは、とても俺に懐いている。こうしてちょっかいを出されることも多い。かつては騎士様の馬だったそうだが、今は引退してじーちゃんのとこで隠居生活だ。真っ白な体毛は、きちんとブラッシングするとキラキラ光って綺麗なんだ。

「お前は今日も綺麗だなー。ふふ、元気そうで何よりだ」

「おお、相変わらずお主とパトリシアは仲がいいのう。他のもんには、なかなか懐かんというに」

「え、そうなのか?うーん、お前すごくいい子なのになー。なんでだろ」

「それだけお主と相性がいいんじゃろうて。おお、そうだ。ロード、昼飯は食うて行くか?ばーさんが今しがたパンが焼けたというておったぞ」

「あー、そうしたいけど、親父の分の昼飯つくんねぇとだから。あの人ほっとくと何も食わずに研究に没頭するからよ」

「ほほほ、さすが賢者様じゃのう。それじゃあ、パンは持って帰るがよい。籠も貸してやろう」

「いいのか?やった!ばーちゃんの焼くパン、ふわっふわで美味いんだよなー」

 小麦とバターの味がしっかりするばーちゃんのパンは、村でも人気だ。大きな町なら、パン屋が開けているところだ。ここは残念ながら田舎の小さな村なので、村の中で物々交換で取引されているだけだが。世界中がこの味を知ったら、いろんなところから弟子志願者が来そうだ。

 パンをいくつかと、牛乳を分けてもらった。労働の後の飯は美味いからな!ありがたい。

「ただいまー。親父ー、帰ったぞー」

 返事がない。どうやらまた部屋で引きこもっているようだ。うーん、たまには外に出た方がいいとおもうんだが。テーブルにパンと牛乳を置いて、部屋に向かう。

「親父ー、帰ったぞー。って、うわぁ。まーた散らかってんな」

「おや、もうそんな時間かい?おかえり」

「おう、ただいま。えーーっと、これはここに置いていいか?」

「ああ、すまないね。適当に置いていいよ」

 全く、足の踏み場もないとはこのことだ。俺も特別掃除が得意ってわけではないけど、親父はかなり掃除が下手な方だと思う。

「昼飯、ばーちゃんからパンをもらったんだだ。なんか適当にソーセージでも焼くから、今日はそれでいいか?」

「ああ、ご婦人からかい?それはよかったねぇ。お昼、それで構わないよ」

「ん、わかった。じゃあ作ってくるわ」

 ちらっとみた本のタイトルは「魔物の特性について」だった。この辺りは特別強い魔物もいないのに、一体親父は何を調べているのだろう?以前何度か聞いてみたが、はぐらかされてしまった。俺に、言いづらいことなのだろうか?

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