魔都ガラ・ルーファ(六)
景気良く
「ガキどもが!お前の心臓も喰ってやろうか!」
「ぴええええ……」
右手に持った家宝の短剣を
「ど、どうしましょう……?」
「ロナちん、乗って!」
その声に思わず
「の、乗ってどうするのです?」
「さあ?」
「
「そう。とりま突っ込むから、あとはノリで」
「もう!【
ただ
「やるじゃん、ロナちん!」
「駄目です、この程度では……」
十分な手応えはあったのですが、相手は私と同じ魔貴族です。私と同じ程度の再生能力があるとすれば片腕を失ったくらいでは致命傷にはなりません、それどころか数日もすれば再生してしまうでしょう。
「天に
「うえっ!?」
そうでした、新しい魔龍公は魔法の力も使えるのです!私を
「イブ、ごめんなさい!私が油断したんです」
「はあ?こんなもん余裕なんですケド!」
駄目です。イブは強がってはいますが、翼に力が入っていません。空を飛ぶ速度が明らかに落ちてしまっています。これではもう戦えません、だとすれば私に残された手段は……
「い、いただきましゅ!」
もうこれしかありません、私は黒い鱗に覆われた首筋に牙を突き立てました。
私はこれまで魔族の血を吸ったことはありません、それも魔貴族の血を引くイブの血を取り入れてしまえばどうなるか……
「ううっ……」
ほんの少し、ほんの僅かに血を頂いただけだというのに、胸の奥が
「下郎どもが……愚かな
「ち、違います。私そんなこと思ってません。みんな大切なお友達で、
黒く、赤く、胸の中で何かが渦巻いています。心が闇色に塗りつぶされていくようです。
「違うよ!ロナちゃんはそんな子じゃない!」
この声は……アイナさんです。大きくて強くて優しくて、人の話を聞かない私のお姉さん。
「ちょっとアンタ、アタシ達のこと一人で背負ってるつもりじゃないでしょうね!」
「ロナちん、あーしの血ぃ吸った?吸ったっしょ!だったらあんな奴に負けんなし!」
「お、俺だっていつまでも役立たずのガキじゃねえんだからな!」
フリエちゃん、イブ、エミーロ君。
……そうです。私はずっと、大人になりたいと思っていました。
体が大きくなって力も強くなって堂々として、誰もが私を一人前だと認めてくれるようになれば、誰かと争うこともなく誰かを傷つけることもなく一人で生きていけるのだと。
でも違いました。大人になるというのは大きくなることでもなく強くなることでも偉くなることでもなく、自分で道を選べるようになること、その選択に責任を持てるようになるということだったのです。
そしてそれは、私一人でできることではありません。みんなが支え合って、誰かの足りないところを誰かが助けてあげる、それで良いのです。自分の足りないところを認めるのもまた、大人になるということなのです。
暗く湿った
でも、みんなのおかげで少し大人になれました。強くなれました。だからもう大丈夫です。心の闇に飲まれることは、もうありません。
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