魔龍公アウラケス(二)
参ったな。敵が来る前に
空から現れた魔龍公アウラケスとその
突然の奇襲を防ぐ
これは敵が現れたときの手順と避難場所をシャルが考えてあって、何かにつけて子供達に言い含めてあったからだ。適当で計画性がなくて金遣いが荒いけど、頭が切れて先がよく見える奴なのは間違いない。
避難場所にこの場所を選んだこともそうだ、窓がなくて入口は両開きの大扉が一つだけ。あの扉から入って来る奴らをみんなぶった斬ってしまえばいい、そのうちロナちゃんとシャルが帰ってくるはずだ。
「さあ!ロナちゃんとシャルが戻ってくるまで、あたし達でこの城を守るよ!」
「う、うん……」
「声が小さい!」
「お、おー!!」
がしゃん!と鎧を鳴らして気合を入れると、弱々しいけど皆から声が上がった。
あたしだって自信があるわけじゃない。なにしろ相手は魔貴族、それも
でも、子供達の前で弱気なところを見せるわけにはいかない。あたしはご主君の留守を守る騎士なんだから。
廊下の向こうでたくさんの気配がした。続いて何度も何度も扉を叩きつける重い音。分厚い木の扉が揺れ、
「来い!この『猛牛』アイナさんが相手だよ!」
……もっと戦えると思った。目の前の龍みたいな人みたいな奴は四匹目か、五匹目だったか。
力も生命力も私達
「お父さん……こんな気持ちだったのかな」
お父さんはエルトリア王国の
あの日お父さんは、「ちょっと仕事に行ってくる」と言って家を出た。
……そして、いつまで待っても帰って来なかった。小さな村をたくさんの妖魔から守って亡くなったと聞いたのはしばらく後、傷だらけの兵士さんが帰ってきてからだった。
それから何年かしてお母さんも亡くなった。もともと体が弱くて病気がちだったのに、あたしを育てるのに無理をして働いたからだ。何も知らないあたしはたくさん食べて大きくなって、反対にお母さんはどんどん痩せて小さくなっていって、あたしが働けるようになった頃にはもう手遅れだった。
だから家族を失う悲しさも、一人で生きていく辛さもよく知ってる。ロナちゃんが、あんなに小さくて優しい子が、暗く湿った大きすぎるお城で私達
「だから……負けない!」
眼前に迫った
『お見事です、アイナ殿。この場は任せましたぞ』
「骸骨さん……?」
がちゃり、と鎧の肩当てに手を置かれて驚いた。目の前の龍みたいな奴に気を取られていたとはいえ、あたしが背後の気配を読み損ねるなんて。振り返ることさえできなかったなんて。
この骸骨さん、たぶん……今まで出会ったどの相手よりも強い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます