ロナの四騎士(五)
初夏の陽射しが
五十日ほど前まではいくらお掃除しても血の匂いと
「ええと……みなさん、私、魔血伯ロナリーテ・レントはエルトリア王国にも、オピテル侯国にも属することを望みません。ですが
広すぎる部屋で小さな私を囲んで、皆が黙って聞いています。
「私はお父さんとお母さんの思い出が残るこのお城を、みんなが大切に思っていたベン爺さんと、たくさんの
人に注目されるのも、お話するのもあまり得意ではありません。でも今は皆に私の気持ちを伝えなければなりません。
「みなさん、それぞれの夢があると思います。アイナさんは騎士に、フリエちゃんは大魔術師に、シャルナートさんは……
何度も練習した長い台詞を言い終えると、ふう、と大きく息を吐き出しました。
これで良いのです。もし誰も残ってくれなかったとしても寂しくはありません、慣れていますから。アイナさんが来るまではずっと一人だったのですから、元の生活に戻るだけです。
「ロナちゃん!」
「ぴゃい!」
「ちょっとこっち来て」
「ひゃ、ひゃい!」
「お姉ちゃん言ったよね。寂しいのも、悲しいのも、辛いのも、ごまかしちゃ駄目だって。嬉しいことも、楽しいことも、何でもないことも、みんなで分け合うんだって」
なぜか怒ったようなアイナさんに軽々と抱え上げられて、黒光りする玉座に座らされました。
「あたしロナちゃんの騎士になる。ロナちゃんと皆を守る騎士になる!」
私の前で片膝を着き、左手を胸に当て、騎士の礼をとるアイナさん。
「同じくシャルナート・エスターク、ロナリーテ様にこの剣を捧げます。お受け頂けましょうや?」
アイナさんの横に並んで片膝を着き、見たこともない真剣な
「なに勝手に面白そうなことしてんのよ!ロナはアタシの弟子なんだからね!」
両手を腰に当て、なぜか胸を反らすフリエちゃん。
『我ら四騎士、ロナリーテ様に生涯の忠誠を誓うものでございます』
慣れた動作で優雅に
「俺も!」「私も!」「僕だって!」
真似をして次々と
「え?え?ど、どうしましょう?」
私はどうしたら良いのかわからず、偉そうな玉座に座らされたまま固まってしまいました。
……こうして『
吸血鬼が棲むとはとても思えない、強い陽射しが差し込むお城の中のことでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます