ロナの四騎士(四)

 ザイドフリードさんや魔龍公に限らず、今の私の不安定な立場が誰かを不安にさせ、野心家を刺激する火種になっているとシャルナートさんは言います。周りじゅう敵だらけなのだから何を捨てて何を守るのか、自分の道を決めろと言うのです。


「隠していてすまねえ、立場を偽っていてすまねえ、人族ヒューメルやら国やらの事情に巻き込んでしまってすまねえ。お前には選ぶ権利がある。このまま魔貴族として生きるのか、オピテル侯国に付くのか、エルトリア王国に付くのか、それともただの子供ガキとして自由に生きるのか。俺には何も言う権利はねえ、お前が選んでくれ」


「急にそんなこと言われても……」


 なんだか事情も複雑ですし、今までずっと誰かに守られてきた私が急に道を決めろ、誰が敵で誰が味方なのか自分で決めろと言われても戸惑ってしまいます。私は困った挙句にアイナさんを見上げました。


「アイナさん、私……どうしたらいいんでしょう?」


「あたしはロナちゃんのお姉ちゃんだからね!どの道を選ぼうと一緒だよ!」


 そのお言葉は嬉しいのですが、具体的にどうすれば良いかの参考にはなりません。私はみんなのところを回って意見を聞いてみることにしました。




「フリエちゃんはどうすれば良いと思いますか?」


「ザイドフリードは嫌い!でも魔龍公も、イブリリスって子も嫌い!ついでにシャルナートも大っ嫌い!」




「マエッセン、私はどうすれば良いのでしょうか」


『私は既に命無き身。ロナリーテ様の仰せのままに』




「リゼ……」


 亡霊レイエスのリーゼロッテは困った顔で首を傾げるだけでした。




「エミーロ君、みんな、お話があるのですけど……」


「俺達のことは心配すんなよ!ロナの邪魔にはなりたくねえし」




 結局誰かが道を示してくれることはないまま、しばしの時が流れてゆきました。


 みんな普段通りの生活を送っていますが、どこかぎこちなくもあります。きっと自分がどこに向かうのか、誰の手を握り誰の手を離すのかわからないからです。そして、それを決めるのは私しかいないのです。


「お父さん、お母さん……私、怖いです。自分で道を選ぶのも、その選択に責任をとるのも。でもこれは私がすべきことなんですね。これが大人になるということなんですね」

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