闇の城防衛戦(一)
果たして、
正門の方向から声が聞こえます。兵士さんの大声にアイナさんがそれを上回る大声で応えたようですが、よく聞き取れません。
私は一人、『玉座の間』の大きすぎる玉座で所在なく足をぶらぶらさせていたのですが、どうにも落ち着かないので様子を見に行くことにしました。シャルナートさんは「総大将はここで座ってろ」と言っていましたが、ちょっと様子を見るくらい良いと思います。
長い年月に傷んだ
対する兵士さんは三十名以上はいるでしょうか。その中の隊長さんらしき立派な兵装の人が大声を張り上げました。
「吸血鬼に
「へっ、俺らが吸血鬼の手先なら、お前らは
「無礼者!我々はオピテル侯国ルイエル領主に属する者である!我らに対する暴言は領主閣下に対する暴言と心得よ!」
「だから、その領主閣下が
どうやら論戦ではこちらに分があるようです。というよりもシャルナートさんに口喧嘩で勝てる人などいるのでしょうか。
「ぐぬぬぬぬ……ええい、やってしまえ!」
「やっちゃう?じゃああたしの出番だね!」
私がすっぽり隠れてしまいそうな大盾を一振り。跳ね橋の上に立つ完全武装のアイナさんが、突撃してくる兵士さんを三人まとめて叩き落としました。彼らが落ちたお
次々とお
「よう、『猛牛』。吸血鬼の手先になったんだってな」
「『狂犬』、あんたこそ領主の犬になっちゃったの?」
それを聞いて思い出しました。ガラ・ルーファの闘技会で、アイナさんと同じく本選出場を果たした『狂犬』という
「ああ。金さえくれりゃ尻尾でも何でも振ってやるよ」
「じゃあ『忠犬』に改名しなよ!」
そんな中、私を見つけた兵士さんから「いたぞ、吸血鬼だ!」という声が上がりました。
「あわわわわ、見つかってしまいました!」
舌打ちしたシャルナートさんが私の襟首を掴み上げ、子猫のように玄関
「ったく、おとなしく座ってろって言ったろ」
「で、でも、アイナさんが……」
「あれで良いんだよ。あいつは
「わかりました……」
お役に立てないのが悲しいですが、どうやらお邪魔になってしまいそうです。役立たずの私はとぼとぼと薄暗い廊下を引き返すのでした。
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