闇の城の日常(八)
吸血鬼と骸骨と亡霊だけが住んでいた
溢れる春の陽射しの下、深い森の中に黒い石屋根の古城がぽつりと建っています。
門前の前庭には
城を囲む森では猪、鹿、山鳥、時にはアイナさんが熊まで獲ってきます。まだ果物の季節には早いのですが、秋になれば栗、柿、いちじく、山ぶどう、様々な果実が実り、それらは乾燥させたりジャムなどに加工したりして地下室で保存すれば春まで楽しめます。
「そっち洗濯終わったー?」
「あと下着干したら終わるよ」
「終わったら虫捕りに行こうぜ。掃除班も誘ってよ」
「男子だけで行きなよ。私達お花の世話があるもん」
「ちぇ、つまんねえの」
ベン爺さんというご老人がお世話をしていた子供達は男の子と女の子が五人ずつ、それぞれ大部屋で寝起きしています。感心なことに、ここに来る前から食事、掃除、洗濯、畑のお世話などの当番が決められていて、それは今でも引き継がれているようです。
お花や野菜のお世話が好きな女の子三人組、レレンちゃん、サリアちゃん、ブーケちゃん。
年長のエミーロ君を相手に木剣を振り回している男の子は、太っちょのポッケ君と元気なペリオ君。
ちょっと
とても物覚えが良くて、読み書きや計算をすぐに覚えてしまったジェイル君は天才かもしれません。
体が弱くてあまり外で遊べないリリーちゃんは編み物が得意で、みんなの帽子や手袋を作ってくれています。
絵本が大好きで、すっかり
夕刻になると皆でベン爺さんのお墓にお花を捧げ、感謝の言葉を贈ります。ここに来たばかりの頃はみんな不安そうな顔をしていたものですが、今ではすっかり明るくなりました。これならお爺さんも安心してくれることでしょう。
「おーいロナちゃん、いつもの商人さんが来たよ」
「はーい、今行きます」
何度もルイエル村でお買い物をしたり、城の周りで獲れる動物の肉や皮、春野菜を売ったりしているうちにお馴染みになった商人さんがお城に出入りするようになって、生活もずいぶんと便利になりました。欲しい物を注文すれば数日後には届きますし、商品を村まで運ばなくてもお金が手に入ります。
ですが……それは良い事ばかりではありませんでした。
やがて『枯葉の魔女』が実は吸血鬼であり、この古城に子供達と棲んでいることが広く知られるようになってきたのです。
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