闇の城の日常(四)シャルナートさん
シャルナートさんは長身で細身の女性です。たぶん二十代半ばだと思うのですが、年齢も子供の頃のお話も聞くたびに違う答えが返ってくるのでよくわかりません。
薄茶色の長い髪は八方に乱れ、大きさの合わない緩んだシャツと
ですがその正体は絶世の美女であること、私とアイナさんは知っています。ひとたび容姿を整えて
そのシャルナートさん、このお城に自分の部屋は確保してあるのですが、どうやら荷物は何も置いていないようです。そしてふらりと現れ、気が付くと消えています。今日はというと……
「ねえシャルナート、お
「うるせえガキども、クソして寝ろ」
……どうやら
「なあロナ、金貸してくれよ。千ペルでいいからさ」
「だ、ダメです。この前も競馬に全部使っちゃったじゃないですか」
「今度は大丈夫だって。前走も芝二二〇〇で圧勝してんだ、ゴールデンジップの三連覇で決まりだって」
「ダメです。絶対お貸ししません」
「ちぇ、ケチだなお前」
そう言って背を向けたシャルナートさん。私が見るところアイナさんに劣らないほどの剣の遣い手だと思うのですが、体を鍛えたり訓練をしているところを見たことがありません。それどころか。
「ちょっとシャル、その剣全然手入れしてないでしょ!」
「あー。ちょっと忙しくてよ」
アイナさんが指摘した通り、元々は繊細な細工が施されていたはずの
「今回はあたしが手入れしてあげるけど、次はちゃんとお店に
「悪い悪い。いま金無くてよ」
そんなシャルナートさんですが、とても意外なことに
「おう。この前のアレよ、アレにコレでNTRぶっ込んでくるとは驚いたぜ。お前すげえな、声出ちまったよ」
シャルナートさんが本を返すと、リゼが身振り手振りを交えて何やら早口でお話ししています。ここからではよく聞こえませんが、あのリゼがあんな反応を見せるなんてよほど嬉しいのでしょう。
「ああ、百合はいいぞ。BLも否定しねえ。でも全部混ぜて四角関係にする必要ねえだろ、ごちゃごちゃで意味わかんねえよ」
あまりにもリゼの表情が生き生きとしているので、つい私もお話に混ぜてもらいたくなってしまいました。ですが。
「お花のお話ですか?」
「うるせえ、ガキはあっち行ってろ」
シャルナートさんとリゼは揃って手を交差させて、私を図書室から追い出してしまいました。ちょっと寂しいです。
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