死せる老人と生ける骸骨(二)
「どうしたのよ、子供ばっかりたくさん連れて来て」
「ええと……色々ありまして。これからお葬式を始めます」
「全然わかんないんだけど!?」
ともかく。皆で城の裏手にある墓地に穴を掘り、いよいよベン爺さんのお葬式を始めようとしたのですが、そこに
泣き出す子、逃げ出す子、アイナさんの後ろに隠れる子。反応は様々でしたが、マエッセンが優雅に一礼し、リーゼロッテが丁寧に
「みなさん、怖くないですよ。こちらはマエッセン、骸骨の騎士さんです。こちらはリーゼロッテ、とっても物知りの亡霊さんですよ」
私がそう言うと子供達は恐る恐る近づいてきて、ご挨拶をしてくれました。特に一番大きなエミーロ君はマエッセンに興味を持ったようで、握手までしています。
「な、なあ。この骸骨、生きてるんだよな?じゃあベン爺さんも生き返らせてくれよ。できるんだろ?」
「マエッセンは魔法の力で動いているのです。生きているわけではありません」
「でも動いてるじゃねえか、生きてるのと同じじゃねえか。なあ、そっちの小さいのは魔術師だろ?魔法が使えるんだよな?」
エミーロ君はそう言ってフリエちゃんを指差したものですが、フリエちゃんはそれが気に食わなかったようです。
「小さいのって何よ!魔法は万能じゃないのよ、寿命で亡くなった人を蘇らせる魔法なんて無いわ」
「骸骨でも亡霊でもいいんだ。まさか魔術師のくせに出来ないとか言わないよな?」
「はあ!?
「どう見てもお前の方がガキだろうが!」
「なんですって!?あったまきたわ、カエルにしてやろうかしら!」
まあまあ、と
「
これでも私は闇を操る吸血鬼です。闇と死は近しい関係にあり、亡くなった方の魂が再び生を受ける時まで優しき闇に抱かれること、安らかな眠りを
しばしの時、アイナさん、シャルナートさん、フリエちゃん、マエッセン、リーゼロッテ、エミーロ君、子供達、みんなが
「ねえ、これからどうする?」
「村に戻ってみんなで働こうよ」
「小さい子もいるんだぜ。どこでどうやって働くんだよ?」
子供達の間からそのような声が上がりました。一番年長らしいエミーロ君でも十五歳くらい、小さい子は五歳くらいでしょうか。
世間知らずの私でもわかります、子供達の未来が閉ざされてしまったことが。お爺さんに心残りがあるとすれば、この子達の成長と行く末を見守ることができなかったことでしょう。
「あの!」
私は思わず声を上げてしまいました。皆の不安そうな顔を見ると、どうしても放っておけなかったのです。
「よかったら……ここでみんなで暮らしませんか?お部屋ならたくさんあるし、裏の畑で食べ物も作っています。どうでしょうか?」
子供達は驚いたように顔を見合わせるだけでしたが、反対の声は後ろから上がりました。しばらく黙っていたシャルナートさんです。
「おいお前、責任取れるのかよ」
「せ、責任って……」
「いいじゃない、あたし達で面倒見ようよ」
「そうよ!みんな困ってるじゃない!」
と、アイナさんとフリエちゃんは賛成してくれたのですが、シャルナートさんは舌打ちしつつ背中を向けて歩き去ってしまいました。
「ちっ、犬や猫じゃねえんだぞ。俺は知らねえからな」
私はこのとき、責任という言葉を軽く考えていたつもりはありませんでした。
でも……人を預かるということ、自分の決断が誰かの人生に影響を与えてしまうこと。その意味を後から思い知ることになるのです。
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