第二十七話:霊仙のとある策略

「本気を出す...覚悟」


日神

「あぁ、お前は戦闘を楽しむ気概がある反面、

 トラウマかなにか知らんが躊躇いが見えた。

 だが、無理して気持ちを切り替えろとは言わん」


「じゃあどうしろと...?」


日神

「お前が躊躇うのは殺しだろ? なら、殺さずに本気を出せば良い」


「殺さずに...本気を?」


日神

「あぁ。お前の全力の動きで相手を気絶させる戦い方だ。

 俺はお前に、その戦い方と戦闘の技術を叩き込む」


「全力で気絶させに行く...それなら出来るかも」


日神

「そう甘いもんではない...が、お前らなら出来るさ」


こうして御巫と庭香と日神の特訓が始まる。

数日後、その影でアギ魔隊もとある男の対策に動き出していた。


古近衛

「ふ〜ん、コイツがウワサの阿良日か〜」


その会議に大々的に映し出せれたのは、とある教団の教祖、

阿良日十祇あらびとがみその人であった。


賢崎

「本人が厄介なのは勿論ですが、留意すべきはその周りです。

 彼の能力は"恩恵の力"。触れた相手に一度だけ、

 能力を与えることが出来ます。非アギは彼の力でアギとなり、

 アギが彼に触れられれば、自らの能力と新しい能力が体内で反発、

 すぐに身体が耐えきれず朽ちるでしょう。そして彼を盲信する信者は、

 彼に能力を与えられたアギ。それらが彼を阻みます」


月守

「危険度はどれくらいなんスか?」


賢崎

「一人で軍を構築、どんなアギでも一撃で殺せる能力、

 そして今は実際に教団を作り、その勢力は劇的に増えている。

 無論、危険度は高いですし早々に対処したい所ですが、

 彼の教団が民間に被害を出した報告はないため、

 今は踏みとどまっている状況です」


月守

「なるほど。ならまだ僕達の出る幕じゃ無いっスね」


古近衛

「そだね」


賢崎

「とて放っておくのは愚策かと。

 協会の場所だけは把握しているのですがね...」


霊仙

「それなら...ワシ等に任せて頂戴な」


古近衛

「えぇ、なんでぇ?」


賢崎

「いいのですか?」


霊仙

「モチのロンじゃよ! ちょっと良いこと思いついたんじゃ♪」



〜それから少しして、阿良日の視点へ移る〜



十祇

「誰もが神様からの寵愛を受けた神の子なのさ。

 勿論、君も僕もね。でも世の中は良い人と悪い人が居るだろう?

 悪い人だって本来は神の子さ。ただ感謝が足りないだけなんだ。

 だから僕たちに出来るのは何をされても怒らず、

 神へ感謝を捧げることで人は磨かれるのさ」


十祇はいつも通り、信者たちに教えを授けていた。

そんな十祇に一報が届く。


光神教幹部:富澤

「大変です阿良日様、アギ魔隊に教団の存在がバレました!」


十祇

「大丈夫さ。今すぐ殺しに来る訳じゃない。

 話せばわかる。今は唯、皆の幸せを願わせてくれないか」


富澤

「しかし阿良日様! 連中の手がすぐそこまで来ております!

 今はまだ一人ですが、後に大勢を引き連れてココへ来るんです!」


十祇

「...僕が話を着けよう」


そう言って協会の外にいるアギ魔隊員に話しかける十祇。


十祇

「どういったご要件で?」


まずは穏便に話し始める十祇。


参番隊隊員

「近々非アギが突然アギになる現象があってな。

 それがココから起こっているらしい。心当たりは無いか?」


十祇

「僕の能力ですよ。触れた人に一度だけ能力を与えることが出来ます」


参番隊隊員

「一般のアギが臨時でも無いのに、

 能力を行使するのは認められていない筈だが?」


十祇

「それは能力を行使して実害が出た場合だけでしょう。

 僕が能力を与えているのは教徒だけですし、

 教徒には誰かに危害を加えるような教えなどしてません」


参番隊隊員

「うるせぇ、テメェがクロなのは知ってんだよ! 口答えすんな!」


参番隊隊員は話を聞かずに十祇の手に手錠をかけようとした。


十祇

「あぁっ!!」


乱暴に手錠を掛けようとした参番隊隊員の手が、

あろうことか十祇の手の平に触れてしまった。


参番隊隊員

「が"あ”ぁ”っ!?」


〜時を少し遡り、隊長会議が終わった後〜


霊仙

「君ぃ〜、ちょっち来てくれる〜?」


参番隊隊員

「霊仙様!? 僕みたいな者にどの様な要件で?」


霊仙

「それがねぇ〜? ココで非アギがアギになる現象が起きててね?

 それの発端となってる男がこの十祇って子なんじゃけど〜、

 コイツを君一人で捕まえてきて欲しいんだよねぇ〜」


参番隊隊員

「僕一人でですか!? もっと適任がいるのでは...」


霊仙

「一応偵察だからさ...それに、もし捕まえられたら昇格の件、

 考えてあげても良いんじゃよ?

 その年でまだ底辺彷徨ってる様じゃ、将来不安じゃろ?

 ここで一個、功績を上げるチャンスを与えたつもりなんじゃがの〜...」


参番隊隊員

「やります! やらせてください!」


霊仙

「ありがと♪ それじゃ、他言無用で頼んだよ」


参番隊隊員は意気揚々と協会へ走る。


霊仙

「ま、キッカケを作れれば誰でもいいんじゃけどな♪」



〜そして今に至る。〜



ジュバァアァァアアア....!!!!!!


参番隊隊員は風船の様に破裂し、十祇に返り血が降り注ぐ。


十祇

「あ...あぁ...あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"あ!!!!!」


信者

「教祖様は悪くありません! ですから落ち着いて!」


十祇

「やってしまった...僕のせいで...」


信者

「事故です! 故意ではなかったじゃないですか!」


十祇

「でも...何の罪も無い人を殺した...

 使命を持って生まれた神の子を...僕の手で...殺めた」


光神教幹部:天峰あまみね

「この協会には誰も十祇様を責める者は居ません!

 私達は皆、十祇様に救われたのです! 命を!」


十祇

「でもしたことはしたことだよ...自首しに行かなきゃ」


信者

「それじゃあ十祇様の教えは!? 十祇様が居ない間、

 私達は何をすればいいのですか!」


十祇

「幸いな事に、僕には優秀な部下がいる。

 不在の間は天峰、富澤、清白、右京に任せるよ。

 いつか必ず帰るさ。まだ救える人がいるからね」


そう言ってアギ魔隊に出頭しに行こうとしたその時ー


参番隊"金"副隊長:小田信馴

「犯行現場を確認。直ちに光神教教祖、阿良日十祇を処分する」


副隊長を含む参番隊の隊員達が協会を囲う。

まるで十祇が隊員を殺す事を把握してたかのように。


光神教幹部:右京うきょう

「テメェ等...十祇様を嵌めやがったな...!」


十祇から貰った能力で参番隊に抵抗しようとする右京だがー


十祇

「手を出したらダメだよ。 君たちまで悪人になってしまう」


右京

「でもこのままでは、貴方が殺される!」


小田

「大人しくその男の首を差し出せ」


十祇

「止むを得ない...今は逃げよう!」


小田

「させるか!!」


逃げる十祇を取り押さえようとする参番隊だが...


清白

「こっちのセリフですよ!」


空中から現れた鎖が参番隊を縛る。


小田

「小賢しい! 威力業務妨害と不正能力行使罪で、

 漆番隊に送ってやる!」


清白

「その程度...十祇様の命に比べれば安すぎるな!!」


清白は参番隊相手に時間を稼いだ。


十祇

「すまない...! ありがとう清白...いつか必ずまた助ける」


逃げながら清白の身を案じた十祇であった。



〜視点は御巫へ移る。〜



日神

「ただ噴射するな。炎を拡散させずに撃ちたい方向に絞れ。

 炎の密度が上がって威力が増し、エネルギー効率も格段に上がる」


庭香

「はい! ってうわぁあぁあ!!!」


自分の出した炎の反動で後ろに転げる庭香。


日神

「この短期間でその威力が出せるとは意外だな...

 っと目を逸らしてる場合じゃないか」


御巫

「どぅらあ!!」


日神に向けて蹴りを放つ御巫。


日神

「だから振りかぶりすぎだ。

 それだと足の攻撃が来るってバレバレだ...ぞ!」


御巫の腹に一瞬で拳を突き出す日神。


御巫

「ぐ"ぼ"ぇ"え"!!」


学生時代、自他共にあまりにも容赦のない日神には、

とあるあだ名が付けられていた。


"所業無情の鬼"

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