第二十六話:弐番隊の後継

アギ魔隊の見学が終わってから数日後、御巫の元に手紙が届く。


「手紙...誰からだろう...って日神さん!? 一体何の用...

 俺は無事だ、今度行われるインターン、弐番隊に来い。

 それだけ!? ってかインターンって何!? ...まぁでも、

 今は日神さんの無事を喜ぶべきか」


後日。


音弥

「えー、お前達には言い忘れてたんだが、

 来週からは学校外での活動が一週間続くぞ〜」


Cクラスの生徒たち

「え〜っ!」


神園

「イッシュウカンモ...?」


くろえ

「はいは〜い! 何をするんですかぁ〜!?」


蛇目

「突然そんな事言われても困りやすよ」


音弥

「まぁ落ち着け、お前らにはインターンに行ってもらう」


白鳥

「おぉおぉぉおお!!! インターン!!! ...って何だそれ」


猫羽

「ハハッ、お前馬鹿だなぁ! インターンってのはなぁ!

 ...先生、インターンって何ですか」


音弥

「あんま考え無しに喋るなよ...インターンは所謂職業体験だ。

 お前達はアギ魔隊に五日間世話になる。その中で1〜10番隊、

 大まかな隊ごとの概要が書いてあるから、

 行きたい隊順に第一から第三希望まで書け。ま、

 第一から第三までのどれかに行けるとは限らないがな。

 お前達の能力を見てその隊の隊長が落とすかどうか決めるんだ。

 落ちても陸番隊か捌番隊か玖番隊には行けるから安心しろ」


庭香

「紡ちゃんはどこに行くの?」


「私? 私は直々に弐番隊から来いって手紙が昨日届いて...」


庭香

「何それ凄い! じゃあ私も弐番隊と拾番隊、第三希望を玖番隊にする」


「あれ? 壱番隊にするって言ってなかったけ?」


庭香

「いずれはね。今は一番行きたいところを選んだだけ」


「なるほどね。でも弐番隊って日神さんのワンマン隊だけど、

 二人も体験させてくれるのかな? ダメ元だけど後で聞いてみる」


庭香

「あっ、ありがと」


胡桃沢

「え〜、ムグちたち弐番隊ぃ〜? ウチ拾番隊!

 楽しくやれそうだからねっ!」


「るみちゃんは変わらないな〜」


尾野田

「俺はモチロン壱番隊よぉ!」


「一言も聞いてないんだが...

 ってかエロカスが女子の会話に入ってくんな」


猫羽

「アタシは陸番隊!」


獅子葉

「オデ、肆番隊」


彦凪

「ボクは伍番隊...かな」


「アンタは... ごめん誰?」


彦凪

「出番が無いが故の失態....!」



〜こうして、インターンの日が訪れる。〜



庭香

「望んだのは良いものの... 私がここに来ちゃって大丈夫かな?」


庭香と御巫の二人はインターン先の弐番隊本部(仮)に来ていた。


「大丈夫じゃない? しらんけど」


庭香

「不安要素を残さないで...」


「にしても、弐番隊はまさかアギ魔隊本部地下の人工平野にあるなんてね」


壱番隊の階段を降りるとそこには、

屋内であると言うのに草原のドームが広がっていた。


日神

「よく来たな」


「その怪我は...」


二人の前に現れた日神は、左腕を失い眼帯をしていた。


日神

「運動は出来るから大丈夫だ。幸いにも歩けるしな」


「そんな問題なんですかね...」


日神

「まぁ俺の怪我の事は割り切れ。っと、置いてけぼりにしてすまない、

 氷村井ははじめましてだな、俺は日神だ」


庭香

「あっ、氷村井庭香です。よろしくお願いします...」


日神

「おう。自己紹介も済んだし、早速本題に入ろう。

 普段はインターンの学生なんて受け付け無かったが、状況も状況だ。

 後継者を探さなくちゃならない。それの適任を探して、

 真っ先に思いついたのがお前だ、御巫」


「わっ、私ですか!?」


日神

「あぁ、能力も俺と似たようなものだしな。

 ついでにお前の友達も俺と御巫と能力自体は似てるから、

 もしかしたら化けると考えた」


庭香

「そっそんな...」


日神

「嫌なら嫌でいい。次の隊長は御巫に任せる」


「いや私が隊長になる前提で話さないでくださいよ」


日神

「それで、お前らの今の力を試すために早速実践をしようと思う。

 二人同時にかかってこい」


「能力、戻ったんですか? それに腕と目も...」


日神

「能力はせいぜいライター程度の火しか出せない。

 だからこっちは如意棒を使わせてもらう。」


庭香

「それだけで紡ちゃんに勝てるわけg」


日神

「あまり見縊るな。これでも俺はまだ弐番隊隊長だ。

 戦ってからどっちが強いか判断するんだな」


「そういうことなら先手必勝!」


ギュイン!


御巫は日神に向かって思いっきり走り出し、

炎を纏って蹴りかかるも、日神はそれを片手で受け止める。


「まだまだぁ!」


日神に爆破を用いた多段攻撃をするも、悉く流される。


日神

「出会った時からは見違えたが、隙がデカ過ぎだ」


ドゴッ


「あ"がぁっ」


御巫にも見えない速度で腹に膝蹴りを食らわす日神。

本来の御巫なら耐えていた攻撃だが、みぞおちの一点に攻撃を食らい、

御巫が一撃でダウンした。


日神

「その程度じゃ戦場で直ぐに死ぬぞ」


庭香

「コールドフレア!!」


ゴォオオオオォ!!!


辺り一帯を凍らせる蒼い炎を日神に向けて照射するも、

日神は如意棒を回転させて相殺する。


日神

「炎自体の火力は足りないが...出力は高いな。こりゃ磨けば光るかもな」


スドン!

庭香の首に手刀を放って気絶させる日神。


日神

「だが...戦闘センスに関してはゼロから教える必要があるな」


「ハァ...まだ! これから...ですよ...」


ゆっくりと立ち直りながら息を整える御巫。


日神

「ほう。強めに蹴りを入れた筈だがもう動けるのか。

 身体は強いみたいだな」


炎陽えんよう...爆渦ばっか!!」


ゴウゥウウン!!!


超高密度の爆発が日神に襲いかかるも、日神は飄々と躱す。


日神

「見事だが溜めがデカ...!?」


ズゥウウン!!


爆発した地点に引きずり込まれる日神と御巫。


紅蓮脚ぐれんきゃく!!!」


ジュガァアアッ!!

紅く輝くその脚が日神に襲いかかるも、日神が如意棒で受け止める。

が、如意棒がへし曲がって日神に襲いかかろうとする。


日神

「フン!!」


身の危険を感じた日神は咄嗟に御巫に蹴りを入れて距離を取る。


「まだまだこんなもんじゃ無いですから!!」


ドッ ドドッ ドドドン!!

爆発を起こしながらジグザクと間合いを詰める御巫。


日神

「ふん、筋が良いな御巫ぃ!」


日神も如意棒をぶん回しながら走る。


(またアレだ...この戦いの感覚...戦闘でしか得られない臨場感!

身体が戦闘を求めてる状態...! 最高にハイってやつ!

なんて気持ちいいんだろ...ボコボコにしたい! 格上なのは分かってる!

だからこそ! 本気でブチのめしてみたい!!! でも...)

「アハハッ...!!!」


御巫の顔は戦闘の喜びか、はたまたそれを感じる自分への嫌悪か、

魔人ラミを殺したトラウマのせいか、顔が引き攣って笑っていた。


日神

「いい顔するじゃないか」


「死んでも呪わないでくださいよ! 炎螺旋掌えんらせんしょう!!」


爆炎を放って回転しながら日神に向かって加速し、

超高温の腕で腹に拳を突き出そうとする御巫。


日神

「躊躇ったな!!」


能力の適応で熱や炎に耐性があった日神は、

冷静に火傷と打撃を喰らいながらも足で御巫の拳を受け流し、

御巫の項に渾身の肘を突き落とす。


「うがぁっ」


御巫は流石に気を失い、地面に突っ伏した。


日神

「やっぱりか...」



〜1時間後〜


日神

「起きたか」


庭香

「あれっ、私...」


「負けたのよ。まだまだ私達は特訓が足りないみたい」


日神

「そうだな。二人の現状はある程度分かった。

 まず氷村井。お前は能力の出力はある程度高い。

 お前は自分の炎の殺傷能力が低いとか思ってるんだろうが、

 全く持ってそんな事はない。自信を持て。あんな炎、

 2度吸えば肺が凍るだろう。そんなお前に足りないのは、

 ただ単に戦闘経験だ。反射神経、相手の出方、能力の使い方だ。

 お前、運動は得意じゃ無いだろう?」


庭香

「はっ、はい。そうですね」


日神

「なら無理に屈強な身体を作る必要はないが、

 不意に飛んでくる攻撃を躱せる程度の瞬発力と動体視力は持て。

 そんでもって相手が何をしてくるのか、それを見据えて動け。

 それに能力の使い方も一辺倒だ。ただ炎を放つだけじゃ、

 いずれ相手がお前の動きに慣れる。御巫の様に応用を効かせろ」


庭香

「わかりました!」


日神

「そして御巫、お前に足りないのは技術と覚悟だ」


「...っ!!」


日神

「お前が戦闘に愉悦を感じるタイプなのは戦ってて分かったが、

 それと同時にお前の不安が見て取れた。トラウマか何か知らんが、

 俺を殺してしまうかもとでも思ったんだろう。最後の一撃、

 あのまま行っても急所から外れていた。今のお前に足りないのは、

 全力を出す覚悟だ」


「...ッ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る