第二十五話:アギ魔隊見学ととある教団

古近衛

「続いて番隊ぃ〜!」


伍番隊隊長:海人蒼汰かいじんそうた

「俺が偉大な伍番隊の隊長、海人かいじんだ。

 海人うみんちゅじゃねぇから気をつけろよ。

 伍番隊の役割は主に海上の取締だ。海から発生した魔物や、

 海外との違法取引をしてるアギの集団を懲らしめてやるのよ!

 海で動きを落とさない、寧ろ海でこそ本領を発揮する奴が入れる隊だ。

 そのトップの俺の能力こそ、海鯨かいげいの力だ。

 俺こそが、召喚系能力の真髄とも言えるだろうな!」


(自分でそういう事言っちゃう? ただのイタイ人じゃ...)


...ズンッ!


慢心していた生徒達の真上に突然、液体(?)で出来た鯨が泳ぎ始めた。

その場にいた誰もが、その鯨の底しれぬ力に息を呑む。


海人

「コラ、ビビらせんなよ〜。 あぁ、ごめんな!

 コイツは俺をナメた奴には少々荒っぽくてな。

 俺を好きすぎるがあまりの行為なんだ、すまん!」


古近衛

「そういうの自分で言っちゃうイタイ奴だけど、

 コイツの力だけは本物だよ。ボクとタイマン張ったら負けるけど♪」


海人

「うるせぇな、俺達はテメェより広い範囲を守れるからいいんだよ!

 とかく俺はこの相棒、鯨の精霊のネビュラを召喚出来んのよ。

 ネビュラはありとあらゆる物をすり抜けて移動する事ができる。

 他にも水でレーザー撃てたり尻尾でえげつない攻撃もイケるぞ」


古近衛

「何より厄介なのは、蒼汰自身もネビュラに乗れば、

 すり抜けの恩恵を得られることだろうね」


海人

「俺達がいる限り、海からの災害は絶対に起こさせねぇ!

 海上で仕事出来そうなら是非俺の所に来い! 何時でも大歓迎しよう!」


古近衛

「そんじゃ次行こう!」


ろく番隊〜


陸番隊隊長:擂佐九孝明すざくこうめい

「こんにちは、俺が陸番隊隊長、朱雀だ。

 陸番隊の仕事は、千差万別隊員人それぞれだ。入れる条件は唯一つ、

 変身系の能力を持っていればいいのだ。美しい生き物に成れるのなら、

 広報からの仕事が来るだろうし、体力が多い生き物に成れるのなら、

 力仕事の手伝いの依頼が来るだろし、強い生き物に成れるのなら、

 俺みたいにひたすら魔物やアギの犯罪者を始末すればいい。

 成れる生き物によって仕事を選べる、変身系能力持ちの社会が陸番隊だ」


(いいなぁ変身能力持ち。って、一応私もそうなんだっけ?)


古近衛

「どの方面にも手を出せるし、誰から見てもいたら滅茶苦茶助かるんだよね」


擂佐九

「そして俺の能力は朱雀の力。朱雀の権能は風と炎と羽を操れる事だな。

 炎とはいえ、日神殿程のものではない。羽に炎と風を付与して羽ばたいたり、

 羽や尾のジャラジャラした飾りみたいなのを弾丸のように飛ばせる程度だ。」


古近衛

「擂佐九君の戦闘はマジで美しいんだよね!

 ムカつくことにボクよりファンも多いんだ!」


(言われてみれば格好が厨二病なだけで、クソイケメンだなこの人)


擂佐九

「変身系のアギは是非とも我らが歓迎しよう」


古近衛

「...それだけっぽいね! ホイじゃ、

 次はボク達漆番隊に案内したいとこだけど、

 漆番隊には囚人くらいしか見るものがないし、

 ボクの紹介も済んでるから、捌番隊へゴー!」


はち番隊〜


???

「ぬぅらぁあ!!!!」


生徒たちが捌番隊の城に入った瞬間、

ムキムキの男が100キロのバーベルをぶん投げつける。


古近衛

「コラコラてっちゃん、危ないでしょぉ〜?」


そのバーベルをサッカーボールの様にトラップして勢いを殺す古近衛。


捌番隊隊長:常田鉄士つねだてつし

「なんだ、客人が来てやがったのか」


古近衛

「もぉ〜、そろそろ出番だって言ったでしょ?」


(なんだコイツ)


常田

「悪い悪い、俺ぁ常田。捌番隊の隊長だ。

 捌番隊はどんなアギでも能力の活用方法を見出す隊だ。

 捌番隊がある限り、アギの無職は無くならないと言っても過言じゃねぇ」


古近衛

「そそ。別に魔学に通ってなくても、アギは捌番隊なら入れるんだよね!」


常田

「仕事さえすればどんなに使えない奴でも追い出したりもしない。

 だが使えないやつは上に上がることは出来ねぇ、実力主義の隊だ。

 逆に実力があれば上に行けるし、他の隊からもスカウトが来る。

 それが、アギの育成機関、捌番隊だ」


(へへっ、下剋上が可能な訳ね、唆るわ)


常田

「俺も昔は大した実力はなかったが、ここで鍛えて今じゃ隊長だ。

 俺を超えたければいつでもかかってこい、相手をしてやる。

 お前ら学生にはハンデだ。俺の能力を教えてやるよ。俺の力は、

 "磁力の力"だ。金属を引き寄せ、遠ざける事ができる。

 どう攻略するかは、テメェの頭で考えるんだな」


古近衛

「てなわけで、捌番隊でした〜! 次行こう!」


きゅう番隊〜


玖番隊体調:賢崎みゆ

「こんにちは、私が玖番隊隊長の賢崎よ。玖番隊の役割はサポート。

 アギ魔隊に不可欠な隊ね。他の隊の回復は勿論、

 武器の制作や作戦の立案、オペレーションに加えて、

 広報活動予算の管理も行っているわ」


(お世話になることはあれど、私が直接この隊に入ることはないか)


古近衛

「肉体労働以外のほぼ全てを担ってるから、ある意味他の隊より大変かもね!」


賢崎

「そうね。けれど殉職率はダントツで低い隊よ。それの隊長、

 私の能力は"不忘の力"。一度見たものは際限なく詳細に覚えられるわ。

 けれどデメリットとしては眠れないことかしら」


古近衛

「でも眠らなくても身体は休まるんでしょ?」


賢崎

「そうね、常に疲れている、なんて事はないわ。最後に、

 戦闘向きの能力じゃない人、戦うのが怖くなった人は、

 ウチで面倒を見てあげるから、いつでも来て頂戴」


(滅茶苦茶姉御肌!)


古近衛

「最後はじゅう番隊だ〜!」


〜拾番隊〜


拾番隊隊長:月守素晴

「よろしくッス〜、月守素晴ッス! 拾番隊は最近出来た隊で、

 隊員もまだまだ募集中ッス! 拾番隊の役割は七変化、

 必要に応じて隊の役割を果たすってことしか決めてないんスよね〜」


下っ端の様な挨拶をしながら、生徒たちと握手を交わす月守。


(一番気になってた隊が一番心もとない!)


古近衛

「マジで若い世代の子達ばっかだから、一番爽やかな隊だよね!」


月守

「アギ魔隊の不足を補ってるんだから、それだけで偉いんスよ!

 あっ、ちなみに僕の能力は"コピーの力"。触れた相手の能力を、

 劣化行使することが出来るッス!色々と制限はあるっすけど、

 取り敢えず何個でも行使出来るんスよ!相手に触れれば触れるほど、

 コピーできる時間が増えるんス!」


(いや意外と言ってはなんだが...滅茶苦茶強い?

この人。人柄の良さで油断してたわ)


古近衛

「劣化とて、神器までコピーして生み出して来るんだよね〜、

 マジで若い才能の権化って感じだよね」


月守

「君たちとも比較的年齢層が近い人ばっかなんで、

 どうか来てくれると助かるッス!」


古近衛

「それじゃ、こっからアギ魔隊全体でボク達会議するから、

 今日の見学はここまでだね! まったね〜!」


古近衛は意気揚々と生徒達の前から去る。


付き添いの先生

「...それではバスに戻りましょうか」


こうしてすごくアッサリとアギ魔隊の見学は終わった。


「さて、どの隊が良いかな〜。庭香ちゃんはどこ行くの?」


庭香

「私は...壱番隊、かな。弟がそこ希望だから」


「マジ? 壱番隊かぁ〜」



それぞれの進路を考える中、不穏な影が東京の小さな協会で動き始める。



???

「あぁ神よ、どうか人々に災いが降りかからぬ様に...

 降りかかるのであればせめて僕に降り掛かってください」


灯りの無い協会の中で、祈りを捧げる男が一人いた。


信者

「教祖様! また信者になりたいと申す者が...」


???

「その呼び方はやめておくれ。人には上も下もないんだ。

 人の魂は皆等しく尊いものなんだよ」


信者

「とて神の御言葉を給うことの出来る教祖さまに無礼など...」


???

「...わかったよ。君がそれを望むならそう呼んでくれ。

 それはそうと、教えを請いたいって人はどこに?」


信者

「こちらの清白裕典さんでございます」


清白裕典すずしろひろのり

「私は能力が無いというだけでアギに虐げられ...生きるのが辛くて...

 もう自殺するしかないと考えていたその時...この協会の存在を知り、

 どうせ死ぬなら一度訪れて見ようと...」


光神教教祖:阿良日十祇あらびとがみ

「そんなっ! 命を放るだなんて考えないでくれ!

 君を愛してくれる人は沢山いるはずなんだ!」


清白裕典

「そんな人、もういないんです。アギの親にも見放されて...」


十祇

「ならこれからは僕が君を愛す! 僕はこうして君に出会えた。

 これで僕と君はもう他人じゃない! 今まで辛かっただろう。

 もう大丈夫だよ。神様は君を見捨てたりなんかしない。

 君にも神様の御力を授けよう」


清白裕典

「えっ...これは!?」


十祇が清白に触れると、清白に能力が発現する。清白はその瞬間、

アギと成ったのだ。


清白裕典

「そんな...!! なんで...アギを見分けられる!」


十祇

「本当は皆平等なんだ。皆が神様に愛され、その愛を賜ることが出来るんだよ」


清白

「ありがとうございます、ありがとうございます!」


十祇

「僕は僕に出来ることをしなきゃ。君も来るかい?」


清白

「はい! 行かせてください教祖様!」

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