第伍章:魔人との邂逅編

第二十二話:化け物と魔人

オレは...魔王サマの役に...立てたかナ?


〜魔王が再生の力を得てから少し経ち〜


魔王

「貴様が愛媛で暴れるレベル5の魔物か」


魔王はとある魔物の噂を聞きつけ、魔王軍にスカウトしに来ていた。


赤き魔物(後のネバ)

「ダレだ...殺されたく無ければとっとと帰るんだナ」


魔王

「お前も喋れるのか? まぁいい、赤き魔物よ。

 我が軍門に下れ。貴様に名前と居場所をくれてやる」


赤き魔物

「オレは魔物に近い魔人なんだナ。だから人語を喋れるんだナ。

 それと...魔物にまとも居場所なんて無い。戯言も程々にするんだナ」


魔王

「だから、俺が創る。魔物が淘汰されるこの国を俺が壊す。

 その為に俺に協力しろ」


赤き魔物

「ハハ! 面白い、人間に報復すると言うんだナ!

 魔物が!? 協力して!?」


魔王

「そうだ。後ろ盾は出来ている。述べ2100体の魔物が我が軍の元にいる。

 俺は魔王として、それらを率いて人間を殲滅する。

 だからその戦力の要として、お前を勧誘しに来た」


赤き魔物

「ナるほど...それはアリだナ。だが...」


赤き魔物はその腕に炎を宿す。


赤き魔物

「俺が"魔王"だったらの話だがナ!!!!」


魔王

「受けて立つ。だが負けた時は我が軍門に下ると誓え」


赤き魔物

「勝ったら俺が魔王なんだナ!? 乗った!!!」


こうして、赤き魔物と魔王の決闘が始まった。結果はー


赤き魔物

「ここまでしても倒れないんだナ...」


体内の炎の全てを使い果たして倒れたネバだが、

魔王は全身に大火傷を負っていてもネバを前に膝もつかなかった。


魔王

「俺は"魔王"を名乗る...ココで倒れたら誰も付いて来ないだろう」


赤き魔物

(コイツには..."魔王"たる素質があるのか...絶対的な強さ、

圧倒的カリスマ...あぁ良い...コイツの...魔王の隣に立ちたいんだナ!)

「フン...魔王軍最高幹部の座は開けておくんだナ、魔王サマ」


魔王

「魔王軍は実力主義だ。その位置まで行きたかったら自分で来い」


それから赤き魔物はネバという名を与えられ、魔王軍最高幹部まで上り詰めた。


魔王

「ネバ、いよいよ明日、新宿を襲撃する」


ネバ

「分かってるんだナ。総隊長は魔王サマが相手をするんだろう?

 そしてオレの役目は新宿に破壊の限りを尽くせばいいんだよナ」


魔王

「そうだ。そしてアギ魔隊にもダメージを与えてくれると尚いい。

 期待しているぞ」


ネバ

「フン、わかったんだナ」


そしてネバが勝てると踏んで挑んだのが日神蓮であった。

ネバは黒炎を操る能力であるが故、

炎の能力には勝てるという慢心があった。故に負けた。

日神に身体を貫かれ、生命活動を維持できなくなったのだ。

だが日神の傷も甚大であった。


月守

「日神さん! 大丈夫ッスか!?

 今救護班の所まで運ぶッスからね!」


瓦礫の山の上に倒れていた日神は、左腕の肘から下が千切れて右目も抉れ、

腹部に穴が空いていた。そんな重体の日神を、

月守は背負って救護班の元まで運ぶ。その月守の背中が、

段々と赤色に染まっていく。


月守

「日神さんの命が危ないッス! 彼を一番優先して手当を!」


それから数時間後、日本中にニュースが出回った。

新宿の8割の建造物が崩壊した事。民間人は事前に避難させたので無事だが、

アギ魔隊員も十数人が犠牲となった事。弐番隊隊長が重傷を負い、

生死を彷徨っている事。アギ魔隊本部の総力でも被害を止められなかった事。

そこまで追い詰めたのが魔王軍という軍を成した魔物である事。

総隊長が一度魔王に殺されたという事。

そして魔王を逃してしまった事。その全ての失態が重なり、

90年程絶対的信頼を築いていたアギ魔隊の信頼は急激に下降した。

そしてそれは、日本の信頼が崩れたことも意味していた。

幸か不幸か、その一大ニュースは魔高学園に魔物が侵入し、

生徒に一人犠牲が出たという事実を覆い隠した。


「寝てる間にとんでもない事になってるわね...」


朝起きてSNSを覗く事が日課の御巫は、新宿に起きた事件の全容を把握した。


「日神さん...頼むから生きて...」


行き場のない不安を抱えたまま、学校へ足を運ぶ。


Cクラス担任代理

「今日だけ私が担任代理を務めます。後遺症はないので心配するなと、

 音弥先生からメッセージを頂きました。昨日は団体戦、

 お疲れ様でした...えぇ、音弥先生は只今保護者の方への...」


クラスの全員が俯いていた、地獄の空気のままその日の授業が終わった。


Cクラス担任代理

「そして最後に連絡です。明日から例の事件を受けて、

 暫くの間休校となります。各々自宅学習に務めるようにしてください」


「マ?」


突然の朗報が舞い降り、木曜日と金曜日が休みとなった御巫。

しかし喜ぶにもいつ魔物に襲われるのか、人々は不安を隠しきれない。

守ってくれる筈のアギ魔隊も、今回の件でアギ魔隊の信頼も薄まり、

安心できる居場所を国民は失った。今の東京はそんな空気が漂っている。

今日は曇り。気分も淀む。そんな午後4時、それでも御巫は外へ出る。

寮の外へ出る時、御巫は首輪を着けなくてはならない。


「これが憧れの新宿...か」


目の前に広がった光景は、バラバラの道路と崩れたビルの地平線であった。


???

「酷い光景だよね」


「!?」


突然御巫に話しかけてきたのは、人ではなく女型の青髪の魔人だった。


青髪の魔人

「あぁゴメンね、ワタシに敵意は無いから安心してよ」


「騙される訳無いでしょ! 今ココでブチこr....」


青髪の魔人

「いやホントに敵意は無いよ! 唯この光景を見に来ただけ、マジで!」


「馴れ馴れしい、魔人の癖に喋んな」


青髪の魔人

「ホラ! こうすれば敵意がないって分かるでしょ!」


青髪の魔人は膝を付き両手を上げる。その姿は、

自分が魔物だと疑われ、追い詰められた御巫の姿と同じであった。


「...何のつもりよ」


青髪の魔人

「いや、ワタシは唯この光景を見に来ただけなのよ。

 今だったらこの辺に人間はいないから殺されないと思って」


「まぁ確かに...」


理に適った行動をする魔人に、警戒はしつつも心を開き始める御巫。


青髪の魔人

「アナタは何をしに来たの?」


「いや...何となく? 寝てる間にこんな事になってて...

 命の恩人も生死を彷徨ってるって言っててさ...

 無力感に襲われたっていうか...衝動でココに来た感じ」


青髪の魔人

「そっか...それは心配だね...」


「アンタ名前は?」


青髪の魔人

「名前...? あぁ人が使うアレ?」


「そっか、魔物や魔人には名前は無いのか...じゃあラミ。

 私はアンタをラミって呼ぶから、私のことはつむぐって呼んで。

 アナタだとちょっと...こそばゆい」


ラミ

「ツムグ? わかった! そう呼ぶ!」


それから二人は数十分談笑をした。


「じゃ、私そろそろ帰るわ」


ラミ

「うん! 楽しかったよツムグ!」


「...明日もここに来る、今日と同じ時間にね」


ラミ

「えっ...いいの!?」


「うん。どうせ暇だし、今のこの辺りはキナ臭いっていうか...

 こういう風に心置きなく話せる相手がいなかったからね」


ラミ

「うん! ワタシもまた来るね!」


腕を翼に変形させ、ラミは自分の住処へ帰る。


ラミ

「嘘でしょ...」


あるはずの魔人の集落は見るも無惨な姿へと変貌していた。


ラミ

「何で...」


集落に住んでいた魔人

「人間の仕業だ...クソッ! 8割は殺された!

 わざわざ壊さなくてもいい筈の家まで壊された!

 生まれたての魔人の子供もだ!」


ラミ

「そんな...」


集落に住んでいた魔人2

「オマエも行くぞ...皆オマエ待ちだ。オマエはこの中で一番強いだろ」


ラミ

「行くってどこに...まさか無策で突っ込むワケじゃないでしょ!?」


集落に住んでいた魔人3

「あぁ、決行は明日午後4時、魔王軍の後始末で急いでいる所の不意をつく」


集落に住んでいた魔人1

「目に映る人間は皆殺しだ」


ラミ

「...!!」

(それじゃツムグが危ない!)

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