第十七話:爆撃の悪魔

胡桃沢

「コレでも倒れないマ!?

 流石に倒れてくれないと色々心配だよ...」


「どうやらこの敷地内じゃ死んでも後遺症も残らず回復するらしいわよ。

 それに、心配される程私はヤワじゃないし」


胡桃沢

「ヤワじゃなさすぎるから心配なんだよっ!?」


二人が問答をしていると、白雪が口を挟んで再び戦いの火蓋が切られる。


白雪

「なら俺がとっとと御巫コイツを倒してやるよ」


「アンタ等は漆原より手応えあるのかねぇ!?」


ドッ...!!

まず足元を爆発させ、爆炎に身を包む。


白雪

(初動が見えない! 対応が遅れるぞ!)


「まずはテメェから!!!」


緋縅

「私っ!?」


ジュアアァァアア...!!!

御巫は手始めに緋縅を爆炎で溶かした。


「そしたらお前!」


白雪

「来いよぉ!」


ボッ...

殴ると見せかけて微量の爆炎を白雪の目に掛けて一瞬生まれた隙に、

白雪の腹に高温の回し蹴りを食らわせる御巫。


白雪

「ぐはぁあっ」


天摩奏

「いやああぁぁあぁああ!!!!!」


一秒足らずにチームの二人を失った天摩は、無策で御巫に突っ込む。


「ハハッ!!!」


天摩が振りかぶった手を流し、天摩の目の前で拳から爆破を起こす。

天摩の顔面は焼け爛れ、息もできずに倒れる。

御巫の広角は上がったまま胡桃沢の方を向く。


胡桃沢

「なんか...おかしいよムグち...

 これが庭香ちゃんの言ってた...ムグちの暴走?

 なら私が...友達として! ムグちを止める!」


デルタ

(余計なこと言ってんじゃねぇヨ)


「余計なこと言ってんじゃ...アレ?」


胡桃沢

「例えそれが不可能でもっ!

 友達を助けるのを躊躇う理由にはならないよ!」


「何で私...思ってもいないことを...」


白雪

「貰ったぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ" ! ! ! ! ! ! 」


戸惑う御巫の背後から、不意を突こうとする白雪。


「まさか...そんなこと...」


白雪

「ぶごぁっ!!」


ドゴッ

御巫は後ろも振り返らず、

拳から爆発を起こして後ろの白雪にエルボを食らわせる。


「るみちゃん...逃げて...やっぱ逃げないで!」


胡桃沢

「友達のためだもん、逃げる気なんて元からないっしょ☆」


「あぁ...るみちゃんが友達でよかった...ッ!!」


ドゴッ!! ドガガッ!!!

御巫は胡桃沢が気を失うまで全力で殴った。

いや、本来は一撃目で気を失っていたのかもしれない。


私&デルタ

「(張り合いのねぇ奴等だな)」


1ミリの躊躇いもなくクラスメイトを殴る御巫の、

その一部始終を見ていたとある生徒の証言から、後に御巫に異名が付いた。

その名もー


"爆撃の悪魔"


「やっぱり今日の私...おかしい...」


御巫は暫く廃ビルの中で体力の回復に努めた。

残り時間が10分を切った頃、御巫は現在のポイント状況を確認した。


「チッ、私のチームが今10ポイントで4位か...3位が11ポイント...

 あと二人はやらなくちゃいけないのか...でも身体は思うように動く。

 1時間も経ってないのにね。これも脱皮の力恩恵か」


回復も済み、ビルの屋上へ上って索敵を開始する。


「いやマジでどこに誰がいるんだか...

 こんなに広いフィールドじゃ人一人探すのも無理だろ...いや、

 わかりやすくヤバいのが一人いるな...建物が浮いてるし...

 かと思えば超加速して飛んでるし...

 今の私じゃ流石に太刀打ちも出来ないかな。っと、

 ちょうどいいや。索敵する手間が省けたし、やろうか?」


???

「バレていたか、流石は御巫。

 拙者が目をつけていただけの事はあるな」


御巫を不意打ちしようとしていた男が、上から目線で物を言ってくる。


「アンタっ、あの時のちょんまげイケメン!」


※ちょんまげイケメンは、第七話の最後の方参照


忍創真

「拙者は忍創真しのびそうま。忍者の家系の天才であるぞ、崇めよ」


「私を不意打ちしようとしてバレたのに忍者で天才? 面白いこと言うね」

(忍者といえば音無ちゃんが思い浮かぶけど、まぁ関係ないか。

苗字も性格も違うし、コイツ貴族だから、

同じ家計だとしてもCクラスに音無ちゃんがいる訳無いし)


「えぇい口を慎めこのアマァ! 拙者は憤っているのだ! 貴様に!」


「知らんし、どうせ言いがかりでしょ」


「忘れもせぬ! 拙者の入学試験の戦闘試験の順位の一個上が、

 下民の女など!!忍者の家の最高傑作と謳われるこの拙者が七位など!

 しかも貴様の能力! 聞けば我と同系統の能力ではないか!」


「へぇそうなんだ」


「おい少しは興味を持て! 下民の癖に生意気であるぞ!

 拙者はひたすら腹立たしいのだ!

 貴様が完全に拙者よりも上だと言っているようなものではないか!」


「まぁでも結果で出てるし、客観的に見たらそういうことなんじゃない?」


「ええいうるさい! ここで拙者が貴様を打ち倒し、

 拙者が上だと思い知らせてやる!」


そう言い放つと、忍は下のビルに触れる。

嫌な予感を察知した御巫は、直様ビルから距離を取る。


ドゴオオォオォオオン...!!!


ビルから爆炎が巻き起こり、躱した御巫も爆風で吹き飛ぶ。


「あり得ない! 拙者がこの程度で吹き飛ぶ様な奴より下だと!?」


「初見殺しも碌に決められないから私より下なんじゃないの!?」


「口が過ぎるぞ下民風情が!」


「下民風情の戯言に腹立ててんの!? 忍者の最高傑作が!?」


「...殺す!!!」


忍がそう言うと、視界から忍が消え、その後に爆発音がやってきた。


「ッ!?」


シュバッ

気付いた時には横から斬撃が飛んできていた。

御巫はギリギリで躱すも、忍の振り下ろした刀から爆炎が巻き上がり、

ダメージを負う御巫。その隙を見逃さずに爆発する斬撃で畳み掛ける。


「だらぁあぁあ!!!」


「ッ...!!!」


自分の身体にガソリンを振りまき、起爆して忍を吹き飛ばす御巫。


「飛べ!」


吹き飛ばされた先から手裏剣を御巫へ向けて投げる。


「手裏剣!? いよいよ忍者っぽい事してきたわね...」


手裏剣をささっと躱し、反撃をしようとしたその瞬間ー


ボボボッ...!!!


手裏剣が爆発して御巫を襲う。


「貴様は学ばないのか? そういう生物なのか?

 拙者の能力は"爆破の力"。触れている物を爆発させることが出来る。

 身体から離れても5秒だけ爆発させる事が出来る。

 爆発させるとは言っても、周りに爆炎が巻き起こるだけで、

 爆発させた物にはノーダメージだがな」


「まぁ確かに、爆発という点だけで見たら能力は被ってるか...

 ってかなんで敵に塩送るワケ? 仮にも忍者でしょ?

 さっきから爆発だの、全く忍ぶ気がないじゃないの、忍べ!

 黒江ちゃんの方がまだ忍んでるわよ」


「黒江...あぁ、音無家の出来損ないか。まぁアイツはどうでもいい、

 俺が忍んでないと言ったか? これでもそんな戯言が言えるのか?」


「危なっ!!!」


忍はまた音も無く消え去り御巫に切りかかる。御巫もまたスレスレで躱す。


ボオオォオン...!!!


そしてまた、音が後から鳴り響く。


「そういうワケね」


「珍しく勘がいいな。拙者は音よりも速く動ける。

 故に大半は何も分からぬ内に首を刈り取る事が出来る。

 だから忍なのだ」


「なのに私にバレたし、分かられたし首も刈り取れないんだ?

 それで忍の最高傑作なんだね」


「一撃も拙者に与えられてない奴が何を抜かすか」


「まあしょうもない煽り合いしてる間にこっちも準備整ったんで、

 とっとと再開しましょうや」


「いいだろう、今までの失言の数々悔いるが良い!!」


ビルとビルの間を縦横無尽に飛び回る忍。


紅蓮脚グレンキャク!!!」


紅蓮脚はただ超火力で蹴ることが出来るだけではない!

その真価は爆発よりも速い超加速にこそある。

その瞬間速度は音速にも勝る。


「追いついたァ!!!」


「何だとッ!?」


20秒間溜めて僅か6秒だけしか至れない速度だが、

忍に攻撃を与えるには十分な時間であった。

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