第十五話:アギ至上主義の学校で、私は狂っていく

烏帽子(虫みたいなヤツ)

「ケッヒヒヒヒヒヒ! 恐らく獅子葉、貴様は暫く叫べないだろう?

 そして御巫はオレが完封する! からの九頭竜が佐久間を完封!

 氷村井の炎は浴び続けなければ対処は容易い。

 五人目が見当たらないがまあいい。お前らを蹴散らしてやるよぉお!」


「誰が誰を完封するって!? もう一回言ってみなさい!」


二人の激しい肉弾戦はヒートアップする。


烏帽子

「生憎、オレは耳が聞こえなくなったんでな! 問答は出来ねぇぞ!」


「ならっ...!!」


御巫は拳から爆炎を巻き起こし、烏帽子の視界を塞ぐ。


「おらぁああぁあぁああ!!!!!」


無音で起きた爆炎の中から殴りかかる御巫。


烏帽子

「音は聞こえなくてもオレには触覚とハエの反射があるんだよォ!!」


御巫に生まれた隙をカマキリの鎌で攻撃したその時ー


烏帽子

「あ"ぁ"!?」


「痛った!」


カマキリの鎌は確かに御巫の腕を切断しようとしていたが、

その刃は骨にすら到達していなかった。


烏帽子

「どんだけ頑丈な腕してやがるんだァ!?」


急いで御巫の腕から鎌を抜こうとするも、御巫の筋肉に阻まれ抜けない。


「...これで回避もクソも無くなったわね!

 虫に炎は...効果抜群よ!!」


烏帽子

「ヤメロォオオォオオォォオ!!!!!」


顔面に爆炎を纏って思いっきり殴る御巫。


「これが脱皮の力...今までの私なら確実に腕が取れたわね...

 悔しいけど割と有用な力だわコレ...にしても...」

(にしても...今ので一つ気付いた事がある。

薄々気付いてたけど私...私...

戦闘が好きだ...! 命のやり取りに近い緊張感!

生きてるって感じがする! 勝てば満たされる!

一種の快楽とも言える...! 強者との戦いを...欲してる!

この全能感! 高揚感! 堪らない!

ここまで戦闘狂だったっけ私? まぁいいわ!

今はとにかく...誰でも良いからブチのめしたい...!)


庭香

「...ちゃん! 紡ちゃん!? ボーっとしてないで、逃げるよ!」


優越感に浸っていた御巫の目を覚まし、逃亡を促す庭香。


「何で? 九頭竜、だっけ? 私なら多分倒せるよ」


とにかく戦闘欲求最高潮ハイなっていた御巫は、

それを拒んで佐久間と九頭竜の戦いに混じろうとする。


庭香

「大丈夫...? 何か変だよ紡ちゃん」


「大丈夫。今はとにかく戦いたい気分なの。

 ゾーンって言うのかなぁっ、波が来てるの」


庭香

「...ダメだよ紡ちゃん!

 紡ちゃんが前に言ってくれた周りを巻き込む危険な能力って、

 多分それの事でしょう!?」


「違うから大丈夫っ!」


意気揚々と佐久間の元へ向かう御巫。


佐久間

「うがぁあ!!!!」


退いて佐久間くん!」


苦戦を強いられていた佐久間を置き去りにして、

また九頭竜を蹴り飛ばす御巫。


「嗚呼ッ生きてるっ...!」


九頭竜(竜のやつ)

「テメェ...二度も俺様を蹴りやがったな...殺す!

 どういう原理か知らねぇが、

 この敷地内じゃ人を殺しても無問題モーマンタイらしいからな。

 時間が立てば傷も残らねぇ」


「そうなの...!? 確かに先生そんな事言ってた気がするけど...

 どうでもいいわ! じゃあ私がアンタを殺す!」


九頭竜

「やってみろよゴラァ!」


九頭竜は風竜の羽と氷竜の爪を発現させ、御巫を空中戦に巻き込んだ。


ドゴッ ドガガガッ!


空中で何発も何発も爆発を起こし、爆炎の中から豪速で攻撃し続ける御巫に、

九頭竜は反撃の一手を打てずにいた。


九頭竜

「クソっ! 何でこんなに速ぇんだ!」


「まだまだこんなもんじゃ無いでしょう!?」


九頭竜

「当たり前だ! ナメんなや!」


「どらぁあ!!」


九頭竜

「あがっ」


ボゴォオン...!!

爆発の勢いを利用して凄まじい速度で回し蹴りを食らわす御巫。


九頭竜

「ハァ...ア"ァクソ...なんだあの動き...どんな手練だよ...」


ボロボロに崩れ落ちたビルの中から憔悴した九頭竜が立ち上がる。


「もう終わりなの?」


九頭竜

「へっ、俺様にはまだ手がある...せめて貴様を道連れにする...!」


「させないっ...!」


ドガァァアアァァアアアン...!!!

御巫は九頭竜の腹を爆炎で撃ち抜き、九頭竜の手は御巫の身体に触れていた。


「あ"が"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"あ"ぁ"! ! ! 」


九頭竜が最期にとった行動、それは鱗を一つに凝縮して放つことであった。

九頭竜の鱗は鱗の数が少なければ少ない程、鱗一枚の硬度が上がる。

その一枚に凝縮した鱗を飛ばし、触れた物は鱗の硬度分の圧力がかかる。

その威力はビルが一瞬で瓦解する程の圧力である。

そしてその圧力は内側から発生する。

つまり御巫は内側からビルが弾け飛ぶ圧力を内側から食らったことになる。

ちなみに九頭竜がこの技を使うと、暫く能力が使用不可になる。


「あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ" ! ! ! ! ! ! 」


庭香

「紡ちゃん! 紡ちゃん!」


「やばいかも...私の骨...多分全部持っていかれたねコレ...」


脱皮の力にて頑丈になった御巫の体は、

全身の骨が折れる程度の怪我で済んでいた。


庭香

「どうしよう...! 紡ちゃんが! 主力なのに...!

 このチームの要なのに!」


有栖

「まだ焦るときではありませんわ、御巫さん聞こえますか?」


絶望の淵に立たされたかと思われたその時、有栖がとある提案をする。


「聞こえるわ...」


有栖

「応急処置ですが私の骨を貴方の骨に埋めます、大丈夫ですね?」


「えぇ、それで体が動くならお願いするわ」


その方法とは、有栖の骨から蟻を生成し、御巫の骨に蟻をねじ込み、

蟻を骨の状態に戻すという方法である。


有栖

「蟻が貴方の肉を食い破りますが、少し我慢してくださいね。」


「う"ぅ"...っ!」


骨から生成した蟻達が、腕を食い破って侵入していく。

五分程度の痛みを耐え抜いた後、御巫の骨は完全復活した。


「ありがとう...ってかこれ有栖ちゃんは大丈夫なの?」


ふと有栖の安否が気になって有栖の方を向くと、

そこには小さくなった有栖がいた。


「その姿...」


有栖

「能力の適応ですわ。私は蟻を生成すればするほど身体が縮むのです」


「可愛い...」


庭香

(よかった...元に戻ってる...のよね?)


その時の御巫には既に先程まで残っていた闘争心は消え去り、

元の御巫に戻っていた。


デルタ

(チッ)


(いきなり舌打ちなんてなんなのアンタ、

もしかして私が動けるようになって悔しかったりするの?)


デルタ

(そうじゃネェ。たダ.....なんでもネェ)


(何が言いたいのよ。まあいいわ)


何か考え事をしている様子のデルタに疑念を抱きつつも、

また新たな作戦に取り掛かる御巫と、その仲間たち。


庭香

「コレで私達の得点は5ポイント。5人残って上位3チーム入りを果たせたよ」


「っしゃ!」


獅子葉

「メデタイn...」


漆原

「会議の最中失礼しますよぉ!!!」


現状把握と次の作戦会議の最中、漆原が5人の真ん中に上から殴りかかってきた。


「クソがよ...!」


漆原

「クソで申し訳ありません」


白雪(自尊心高いやつ)

「タイマンを張れ佐久間ぁ!!」


漆原の参戦で混乱している時に、更に白雪が場を掻き乱す。


佐久間

「受けて立ちます!」


庭香

「一旦立て直す! 皆私の後ろに...」


恐らく相手チームは作戦を練って自分たちを倒しに来た事を悟り、

庭香は一度体制を立て直そうと青い炎を出そうとしたその時ー


胡桃沢

「させないよんっ☆」


毒を持って氷炎を相殺する胡桃沢。


庭香

「るみちゃん...!?」


胡桃沢

「ウチだけハブられて寂しかったんだから、加減はしないよっ!」


獅子葉

「スゥウゥウウウ...ッ!!」


大きく息を溜め込み、叫びの力を発動させようとした獅子葉を、

後ろから天摩がスタンガンの力で気絶させる。


有栖

「獅子葉さん!?」


緋縅が獅子葉に刃物(?)を突き立て、

獅子葉の救出に向かおうとした有栖の行く手を阻む。


緋縅(刺々しい能力だけど刺々しくないやつ)

「アナタは私と天摩さんの2対1で相手をしますよ。

 おっと、卑怯だなんて思わないでくださいね。

 こっちは元からこの作戦で行く予定だったので」


天摩奏(オドオドしてる様に見えて強情なやつ)

「そういうことです...!」


「戦況は少し絶望気味ね...」


漆原

「希望など元からありませんよ、ゴキブリの前に平伏すがいいのです」

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