第十一話:寮生活は良生活?

現時点でのドッジボール状況

御巫チーム:内野御巫 外野それ以外

漆原チーム:内野漆原 外野それ以外


アナウンス

「月守素晴、退場」


月守

「申し訳ないっス...後は頑張ってください、誰も責めないっスよ」


一対一タイマンか...ますます負けられないじゃん」


漆原

「受験と一緒ですよ、ボクが君に勝って終わりです」


「別にあの時も負けては無いから!! 逃げたけども」


ビュゥウウゥウウゥウウン...!!!

言い訳をしていたら御巫の真横をご右側のボールが横切る。


漆原

「話し合いはさておいて、とっととドッジボールを終わらせましょう」


外野の蛇目にボールが渡る。


「クソゴキブリ野郎が...!!」


蛇目

「受け取ったッスよ漆原君!」


プーさんのホームランダービーのみたいな挙動の球をギリギリで躱す御巫。


「危なっ! あいつ無法すぎる...!」


漆原

「トドメだぁ!!!」


躱した反動で御巫は倒れ、すかさず漆原が投げる。


「終わった...」


バチィイイィイイィイイィイイン...!!!

ボールが肌に触れる衝撃音がその空間に轟く。


「痛"っ"た"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"!!!!!」


漆原

「これにて僕たちの勝利でs」


「待って、まだ決着は着いてないわよ」


漆原

「何を言ってるんです...ってまさか!?」


「顔面セーフ...!」


鼻血を垂らしながらボールを抱える御巫。


漆原

「ま、続いた所で結果は変わりませんけどね」


「そういうのは勝敗が決まってから言ってもらえ...る!?」


漆原に向けて全力投球する御巫。


漆原

「だって御巫さん、能力がないと動きは速くても攻撃力が無いじゃないですか。

 その速度なら、僕の瞬発力で躱すことが出来ます」


右の手2本で御巫のボールを軽々とキャッチする漆原。


(んなの私が一番わかってるっての! だから...)


漆原

「それでは、さようならぁ!!!」


漆原が野球選手さながらの投球フォームで御巫にボールを投げる。


「だから私は、お前の球を利用する...!!」


漆原のボールを手で受け、その勢いを殺さずに軌道を変えて漆原に投げる。


漆原

「何!?」


ビュオォオオォオオン...!!!

漆原の身体にボールが触れた。


アナウンス

「漆原貫徹、退場。」


漆原

「嘘だ...そんな...」


「っしゃあああああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!」


チーム御巫

「やったぁああぁぁぁあああぁぁ!!!!!!!」


月守

「うぉ、勝ってる! 負けだとばかり...」


志熊

「見事...」


佐久間

「凄いです御巫さん!」


胡桃沢

「やったじゃんムグち! ありがとう、これで走らずに済む!」


白鳥

「すげぇ!」


獅子葉

「オマエ、スゴイ」


庭香

「御巫さん、凄い...」


くろえ

「見せ場全部御巫ちゃんが持っていったな...」


「リベンジ成功! 何が"続いた所で結果は変わらない"よ!

 変わっとりますが!?」


漆原

「クッ、コレばかりは仕方ありません、皆さん走りましょうか」


チーム漆原

「だな」


その後空間は教室へと戻り、窓から外で走る漆原チームを悠々と眺めた。


音弥

「いや〜疲れた...明日からは本格的に実技と授業が始めるから、

 忘れ物は無いようにな」


Cクラス

「は〜い!」


音弥

「そんじゃ、解散! そして寮の生徒はコッチだ」


「キタぁ!!」


私が今日一番楽しみにしていた事、寮の部屋である!

完全個室! 荷物は既に届いてる! 部屋は自由にカスタマイズ可!

いくらでもゲームが出来る...! 夜ご飯以外は基本自由! 消灯もない!

夜更かししても怒られない! 寮なのに! 最高! 近くにコンビニがある!

スーパーがある! R◯UND1がある! 田舎の頃からは考えられない。

本来は全然アギ魔隊になんざ入りたくもないし、この学校も嫌だったが、

都会で衣食住を保証される且つ自由に行動が出来る! 案外この高校、

凄いのだ。だからこの学校に来るのはわりかし、

いや物凄く楽しみだった。まぁ全員が全員寮って訳じゃない。

家が遠い人や、私みたいな異常者イレギュラーがここで生活していくのだ。


音弥

「有田は401号室、尾野田が402号室、片桐は302号室、鍵は呼ばれたら取ってけ。

 そんで胡桃沢は303号室だな。佐久間が403号室、獅子葉が404号室、

 白鳥が405号室、天摩が304号室、氷村井305号室、そして御巫が306号室だな」


庭香

「とっ、隣だね」


「そうだね、よろしく庭香ちゃん!」


胡桃沢

「もうそこ仲良しなのか〜? 私も混ぜろっ!」


庭香

「ひっひえ! えっと...胡桃沢...さん?」


談笑していた二人の間に割って入る、るみちゃんこと胡桃沢。


胡桃沢

「そうそう! 覚えててくれてありがとっ☆

 るみちゃんって呼び方オキニだからるみちゃん呼びでいいよん!

 えっと庭香ちゃんだから...そのまま庭香ちゃんって呼ぶね!」


庭香

「はっはい...好きに呼んでもらって結構です...」


胡桃沢

「おっけー! 承諾も取れたことだし、荷ほどきしてくるねー」


庭香

「私も部屋を作らないと...」


「それもそうだね。んじゃ、これからよろしく!」


庭香&胡桃沢

「よろしくー!」


そして遂に入った部屋。...素晴らしい! 前の家の自室より2.5倍は広いな。

常備されてるのはエアコンとモニター、そして机付きのベッド。

トイレとシャワー付きの風呂。そしてトイレと風呂は別々である!

快適極まりない! そしてベッドは上にあるのに柔らかい。

最先端の学校ってすげー


「いいね、最高!」


どんどん荷ほどきしていき、自分なりの部屋を作り終えた。


「...さて、ゲームでもするか」


それからはモニターにゲームを繋いでゲームを楽しんだ。


「一生をこの寮で過ごすのもアリなんだけどな...

 アギ魔隊に入らなきゃ死ぬし、

 どうあがいても将来出なきゃいけない事が欠点だな...」


庭香

「アギ魔隊に入らなきゃ、死ぬって...どういうこと?」


ブツブツと独り言を言っていた時、庭香が部屋のドアから出てきた。


「あっ...なんでココにいるの!?」


庭香

「ごめんなさい盗み聞きするつもりはなかったんです!

 荷ほどきが終わったので少し話がしたいなって思って...」


「そういうことね...」

(今のうちに言い訳を考えなきゃ...!)


庭香

「それでアギ魔隊に入らなきゃ死ぬって?」


「物の例えよ、あっホラ、

 私戦える事以外の取り柄がないから将来の職業とか、

 それ以外が何も思い浮かばないって事!」


早口で弁明する御巫。


庭香

「そう...そうだよね。御巫さんの秘密一個思わぬ形で知っちゃったし、

 私も1個だけ秘密を話すから...これでお愛顧というか何というか...」


「このくらい大丈夫だよ別に」

(だって嘘だし、何なら将来の夢は玉の輿だし)


庭香

「私が申し訳ないから...!」


「そういうことなら...」

(何というかこう...罪悪感!)


デルタ

(オマエに罪悪感とかあったんだナ)


(久々に喋ったと思ったら五月蝿いわね!)


庭香

「実は私、双子の弟を蹴落としてこの学校に入学したの」


「え」


庭香

「ずっと罪悪感でいっぱいで...」


「何があったの...?」


あまり踏み込んではいけないと分かってはいたものの、

好奇心が勝ってしまい、その理由を訪ねた。


庭香

「弟はね、凄く強いんだ。弟の能力は"炎氷の力"。

 私とは反対に、炎みたいに熱い氷を生み出せるの。私の両親はね、

 母が炎の力、父が氷の力を持ってて、その間に私達が生まれたんだ。

 二人の能力は遺伝して、思ってたのとは違う能力だったみたいだけど、

 弟は子供の時から親二人かかっても倒せない位に強かったんだ」


(いやヒ◯アカの轟家かよ)

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