第九話:そうだ、野球拳しよう

音弥

「んじゃ、親睦を深めるゲームを始めよう」


音弥が手を叩くと、教室は何もない空間に変わる。


Cクラス一同

「!?」


音弥

「これが俺の力、児戯の力だ。遊びたい相手を強制的に俺の空間に引きずり込む。

 競技は俺が決める。道具を使う競技は、道具が勝手に補完される。

 また罰ゲームも俺が決めれて、負けた側が出来うる範囲で強制的に実行させる。

 おまけにアギは能力も神器も使えない。ま、

 漆原みたいなヤツは解除されないけどな」


尾野田(野球とヤマアラシのやつ)

「そんなのズルじゃないっすか!」


音弥

「本当にそう思うか? とんだぬるま湯育ちだな。

 ゲームを提案したら強制的に俺も参加させられるんだぞ?

 それにお前らはアギだ。能力の適応で、

 能力がなくても強いやつだってザラに居る。既に、

 俺より強いのもいるだろうな。だから心理戦を持ち込む。

 でもどうだ? 俺は天才やメンタリスト、詐欺師でもない。

 運で持ち込んで俺が罰ゲームを被ったらどうする?

 俺はしたことがある。アギの犯罪者と3対1でゲームをした。

 罰ゲーム内容は下位三人の"死"だ。そんな時に俺は大富豪を持ちかけた。

 イカサマも出来ない、勝率は四分の一、相手の性格なんて知らない。

 天才かもしれないし豪運の持ち主かもしれない。そんな勝負を強制された。

 それでも俺の能力はズルか?」


一同

「...」


「タイマンだとズルですね、ってかこの空間って時間流れてます?」


音弥

「流れているぞ。傍からみればお前らは突然消えたことになるな」


「なるほど、ありがとうございます」

(確かに最悪デルタが暴走してもこの空間に引きずり込めるし、

負けたとしても消えた地点に罠でも人でも仕掛ければいいのか。

確実に私を止めるなら賢明な判断ね)


デルタ

(厄介な能力だナ。ってか能力が使えないなラ...)


音弥

「そんじゃ、ゲームを始めよう。何が良い?

 22人で出来るゲームだ」


白鳥 (バカのやつ)

「鬼ごっこ! 負けたヤツ脱ぐ!」


音弥&女子

「却下!」


尾野田

「バカ、そこは野球拳トーナメントだろ?」


くろえ(陽キャ忍女のやつ)

「サイテー!」


片桐(大女優のやつ)

「ホントですね」


私 (デルタのやつ)

「勝てばいいんでしょ? 男子だけ残して恥かかせてやるか」


猫羽(ねこの男名前の女のやつ)

「アリだね」


胡桃沢 (ギャルのやつ)

「楽しそー!」


蛇目(鞭のやつ)

「やろうと思えばそれも出来るんスカ?」


音弥(先生のやつ)

「やろうと思えば、だ。だが俺は教員だ、バレたら殺される」


彦凪(環境適応のやつ)

「フン、くだらない」


漆原 (ゴキブリのやつ)

「何か良い提案はありませんかね?」


佐久間(好青年のやつ)

「う〜ん、綱引きとか?

 それだと漆原君のチームの勝利が濃厚か...

 ドッジボールでどうでしょう?」


音弥

「採用。負けたチームの罰ゲームはどうする?」


白鳥

「そりゃ、脱g..」


音弥

「却下」


獅子葉(心優しきモンスターのやつ)

「課題増ヤス...モシクハ、トラック3週?」


猫羽

「やるならトラックの方だね、キツイけどいいね、乗った!」


「やらないメリットがない!」

(私は1200mを全力疾走した程度では一切疲れないのだよ。勝っても負けても、

何もデメリットがない、何この便利能力!)


デルタ

(なんでオレの能力をこんな奴に使われなきゃいけねぇんダ!)


音弥

「異論のあるやつはいるか?」


一同

「無いです!」


音弥

「決まりだ。チーム分けは入学試験成績上位二人を分けて、

 それ以外はランダムだな」


チーム漆原  チーム御巫

漆原貫徹   御巫紡

片桐阿佐美  志熊十三

有栖美玲   佐久間星義

蛇目健太   神園京

尾野田孝太郎 胡桃沢紅葉

猫羽巧    白鳥雷也

天摩奏    獅子葉響

彦凪哲也   氷村井庭香

有田明人   音無黒江

緋縅仁美   白雪真也

音弥源治   月守素晴


「ちゃっかり月守さんいない?」


音弥

「この空間に引きずり込む時に廊下にいたからついでにな」


ひょっこりクラスの皆の中に、月守はいた。


月守

「いや〜、居ていいか分かんなくて奥で隠れたんスよ、

 言い遅れてたけど、入学おめでとう、つむぐちゃん!

 僕が来たからには必ず勝たせてあげるっスよ?」


「ありがとうございます! 滅茶苦茶頼もしいです」


志熊(渋いやつ)

「彼は一体どんな人で?」


音弥

「コイツは一昨年この学校を卒業したばっかのアギ魔隊拾番隊隊長で、

 元オレの教え子だな」


一同

「えぇ〜!?」


月守

「よろしく〜」


こうして、ドッジボールが始まった。

ルールは開始の前に頭に情報が流れてくる。

・内野8人、外野3人

・一人一機で内野が当たったら退場。退場した者は死んだ外野として扱う。

・死んだ外野の人間は敵チームの内野の人間を当てても復活できない。

・元外野の人物は、適当なタイミングで内野に入れる。

・内野が0人になったチームの負け。

・外野は横から敵内野にボールを投げられない。(後ろからの攻撃は当然アリ)

・横から味方内野へのパスはアリとする

・顔面にボールが当たった場合はセーフとなる

・ルール違反は敵チームのボールとなる。


チーム漆原:元外野 漆原 蛇目 緋縅

チーム御巫:元外野 月守 志熊 神園

面倒くさいので内野は省く。


「陣地とボール、どっち選ぶ?」


漆原

「どちらでもよろしいですよ。どうせ負けませんので」


「ほんじゃ、陣地どっちでも変わんないし、ボールで」


漆原

「それではボク達はコチラ側の陣地を頂きます」


「随分と上からね、コレで負けたらトラック、ねぇ...ふっ」


アナウンス

「Cクラスドッジボール、スタート」


「くらえぇええぇええ!!!!!!」


御巫は思いっきりボールを振りかぶって投げる。


天摩奏(自信ないやつ)

「危ないっ!」


ギリギリで躱されるも、ボールの行き先は奥の志熊であった。


志熊

「喰らえ、おんどりゃあ!!!」


御巫の一投を警戒していた漆原チームは、後ろからの攻撃の警戒を怠っていた。


有田明人(普通のやつ)

「うわぁああぁぁあ」


(これが私の作戦、主力は私と月守さんと志熊君...

いや志熊さんと言うべきか、そして獅子葉君とその他動ける男子。

ただ月守さんと志熊さんを外野に置くことで、

外野と内野のパスは上手くいく!)


アナウンス

「有田明人、外野へ退場」


有田明人

「悔しい!」


(やられ方まで普通だ)


音弥

「だが有田、お前のお陰でボールはコッチのものだ、礼を言う」


月守

「皆さん、気を付けてください、来るっすよ〜!」


音弥

「しねぇえぇえ!」


(あの人今初対面の生徒に死ねって言ってなかった!?)


ギュゥゥウゥウン...ドドッ!


庭香

「きゃあぁあっ」


白雪真也(自尊心(プライド)のやつ)

「何故だ!? このオレがこんな早く退場だと!?」


音弥の球は時速90kmを超えて飛び、ダブルアウトを取る。


尾野田

「なぁ白鳥...! あの女エロくね?

 ボールぶつかってた時すげぇ揺れてたぞ!」


白鳥

「だな、確かにそこにはボールが3つあった。」


敵チーム同士が境界線で猥談をする。


「アイツ等カス...!」


デルタ

(テメェも似たようなもんだロ)


アナウンス

「白雪、氷村井、外野へ向かってください」


「まずい、数的不利を取った上にまだボールはあっちチームだ」


漆原

「行きますよ、ゴキブリの底力、思い知れ!」


ドゴォオォオォオォオオオオ...!!!!!

4本の腕の内、右の2本で思いっきり振りかぶって投げた。その速度は、

飛行機に劣らない速度だった。


(しまった、相手も同じ作戦だった!! 外野に漆原がいる!

先生と漆原のパスはヤバい!どうする、止める!?

この人が死にそうな球を!? でも止めなきゃ殺られる!)


正常な判断を失った御巫に、容赦なくボールは襲いかかる...


獅子葉

「う"が"あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!!!!!」


そんな御巫を庇ったのは獅子葉であった。

獅子葉は全身の力を使ってボールを止めにかかるも...


タン...

ボールは獅子葉の腕から転げ落ちる。


「ししばぁあ!!!!」


獅子葉

「後ハ...頼ンダ...」


アナウンス

「獅子葉響、退場」


佐久間

「ボクが獅子葉君の敵を取ります...!」


「生き急がないで! 私達はチームでしょ?

 チーム御巫! 獅子葉の敵討ちよ!!!」


チーム御巫一同

「おう!!!!」


獅子葉

「オデ、別ニ死ンデナイ」

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