第六話:敗北の味と試験終了

「アンタまさか...天城さんの弟の...」


???

「何だァ? テメェ...また俺は兄貴と比べられんのか、あ?

 しかもお前下民だろ? 俺に大層な口聞くんじゃねぇ」


「なるほどね。君が噂の天城瞬人あまぎしゅんと君ってわけか。

 私の名前は御巫紡。雄介さんとはちょっとした繋がりがあって、

 多少性格がひん曲がってるって聞いてたけど、割と重症みたいね」


御巫は、壱番隊での生活で多少天城の弟の情報を聞いていた。


天城瞬人

「うるせぇんだよさっきから。下民が俺に知ったような口聞くな。

 お前は俺の何を知ってやがんだ、気味が悪い。敬語使えカス」


「やなこった、偉そうなやつには敬語なんて使うもんかバーカ。

 私が何者か知りたかったらお得意の暴力で吐かせてみなよ?」


瞬人

「あぁそうかよ、大人しく答えてれば無事に済ませてやったんだがな!」


「は?」


そう天城瞬人が叫ぶと、御巫の上から先程漆原が壊したビルが降ってきた。


「バッカじゃないの!?」


ビルを躱すため、道路を全力ダッシュする御巫。


瞬人

「馬鹿はテメェだろ逃がすかよ」


「!?」


御巫の前に黄色く光るワームホール(?)が現れ、

既に高速を出している御巫は止めれるはずも無く、ワームホールに入った。

入った先は、落ちてくるビルの真下だった。


「なるほどクソ能力の典型ね!」


両手の拳を空に掲げ、爆発を起こしてビルを粉々にする。


瞬人

「コレを突破してくるか」


「次はそっちが粉々にされる番ね!」


瞬人

「言ってろバーカ」


瞬人に殴りかかる御巫だったが、その拳は自分の頬を殴っていた。


「痛っ!」


瞬人

「お前一人で何してんだ? 散々好き勝手言ったが、そんなものか。

 期待ハズレもいいところだな」


「え〜っ? 一発目決めた位でぬか喜びかよ気持ち悪っ!

 倒してもないのに勝った気分でいる奴が一番しょうもないわ」


瞬人

「いつまでその虚勢張ってられんだ?」


「どうせ私の自爆を待つしか出来ないんでしょ?

 もしかして女も殴れないの? それ優しさじゃなくて、

 ただのヘタレだよ? アギ魔隊志望が女の犯罪者のアギ相手に、

 そんな甘えた事言ってられないわよ?」

(大まかな能力は把握できた。

ワームホールに入るともう一個のワームホールに繋がる。

ただの超便利能力ね。二つのゲートの位置を把握できれば攻略は簡単。

だからまずは挑発して動きを単純にする)


瞬人

「ゴタゴタうるさいな。じゃ、お望み通りこっちから仕掛けてやるよ」


すると御巫の周りに大量のワームホールが出来る。


「は!? 聞いてた話と違う!」


瞬人

「状況判断能力が欠けてるようだな。アギ魔隊志望が聞いて呆れる」


ドガッ


「う"っ!」


私を囲う十五個程のワームホールの一個から瞬人の腕が出現し、

御巫に殴りかかる。


「馬鹿ね、今のでわかったわよココでしょ!」


御巫は瞬人の腕が出現したワームホールに向かって殴る。


「あがぁっ!」


すると御巫の腕は別のワームホールから出現し、御巫を殴る。


瞬人

「馬鹿なのはどっちだろうな?」


「はぁうぜぇ...こうすりゃ突破出来るでしょ!!」


ドガァアアァン...!!


御巫は全てのワームホールに爆風が当たるように自分のいる場所を爆発させた。

が、瞬人は自分の前にあったワームホールを閉じ、爆風を躱す。


瞬人

「想定済みだ。そんな浅はかな対策しかできないのか?」


「...小賢しい能力ね」


瞬人

「一応聞いておく。お前は兄の何を知ってる? 答えなきゃ殺す」


「お前もブラコンかよ、もうお腹いっぱいだわ」


瞬人

「死ね!」


瞬人は目の前のワームホールを再び開いてワームホールに殴りかかる。


「捕らえた!」


ドゴッ


瞬人の拳は御巫に押さえられ、

御巫は瞬人の拳が出てきたワームホールに向けて思いっきり殴る。


「好き勝手言ってたけどその程度なのねぇ?」


瞬人

「下民風情が調子に乗るな!」


「下民風情を調子に乗らせるような状況を作ったのは誰か、

 自覚した上で喋ってるなら立派よね」


瞬人

「うるさい黙れ!」


瞬人はワームホールに蹴りを入れ、御巫の顔面に重い蹴りが入る。


「痛った...」


瞬人

「甘えたこと言ってんじゃねぇぞ...!!」


上のワームホールから瞬人の足が降ってくる。


「危なっ!」


華麗にバク転して躱したかの様に思えたが、

躱した先に瞬人の拳が襲いかかる。


「鬱陶しい...!」


かかとの穴から爆発を不規則に爆発を起こし、

立体的にジグザグ移動して瞬人の元へ近づく。


「とった!」


ついにあと一歩で御巫の拳が届きそうになったその時ー


瞬人

「だと思ったぞ」


「ぐあぁっ!」


瞬人は真下にワームホールを作って落ちることで御巫のパンチを躱し、

パンチで生じた御巫の隙を、上からのしかかって倒す。


瞬人

「質問に答えろ御巫、お前は兄の何を知ってる!?」


「何って言われても、私はあの人に助けられて、

 魔学に行くなら弟も行くだろうからよろしく言われただけよ。

 私なりに仲良くしてあげようとしたけど、随分と無愛想じゃない?

 現に今私跨がられて脅迫されてさ、傍から見たらどう見えると思う?」


瞬人

「クソっ!」


周りには受験生達が変な目でコチラを見ている。

瞬人は警戒して御巫から降りる。


「私が下民で助かったね? それじゃ」


瞬人

「次会ったら完膚なきまでに叩き潰す」


その場で二人は別れ、御巫は歩き出す。


デルタ

(負けてんじゃねぇかヨ)


「うるさい...私だって悔しいわよっ...! 勝てると思った...!!

 でもアイツ、私より強い...! ライバルになれそうにもない...!」


涙を必死に堪え、次の相手を探す御巫。


デルタ

(そうか、それがお前の本音カ)


「うっさい...!」


デルタ

(メソメソすんじゃねぇようるせぇナ。

今は悔しがるより先にやることがあんだロ)


実際、御巫のタイムロスはかなり大きかった。

残り時間が30分を切ろうとしてる中、

当初の目標の100点にすら到達していないのだ。


???

「あなたも受験生?よろしくね〜」


「アンタはっ!Jカップ女!!」


※Jカップ女は、第四話にて御巫が見かけた圧倒的な胸を誇る女。


剛力美々ごうりきみみ

「何その呼び方〜? ミミの名前は剛力美々ごうりきみみ

 剛力だと固い印象だから、みみりんって呼んでね〜♪ よろしくっ」


「私、御巫紡。これからよろしくね」


みみ

「今のはお別れの挨拶だよ〜? これからも何もないんだよ〜?」


ドゴゴォオォオオ!!!!

そびえ立つビルを抱え上げ、御巫に向けて投げる。


「どんな剛腕してんのよクソ...! 性格も終わってるわね!」


デルタ

(お前がそれ言うのカ?)


またも降ってくるビルの下を爆速で移動する。


みみ

「あれ〜? 凄く速いねぇ〜」


「ココが一番の安全地帯でしょ!」


御巫はみみの足元まで一気に駆け抜ける。


みみ

「させないよ〜?」


その華奢かつ豊満な身体からは想像できないサイズの大剣を取り出し、

御巫に向けて振るう。


「危なっ!!」


チャンバラのようにブンブンと大剣を振り回すみみの攻撃を、

御巫は動体視力と瞬発力で躱して距離を保ち、隙を伺う。


みみ

「すばしっこいねぇ〜」


「ゆるふわな感じで鬼畜な行動しないで、頭バグる!」


みみ

「私の能力はねぇ〜、怪力の力。

 あらゆる動作に力が要らなくなる力だよ〜。

 例えばさっきみたいにぃ〜、ビルも投げる時に力がいらないんだぁ〜。

 私のソフトボール投げの記録が24mだから〜、

 ビルもそれくらい投げられるよぉ〜」


ブンブンブン...!!!

3mもの巨大な大剣を軽々振り回しながら御巫に近づく。


みみ

「だから私にとってお箸とかを振り回すのとぉ〜、

 こうして大剣を振り回す労力はぁ〜、一緒なんだぁ〜」


「笑顔で攻撃しながら自分の能力説明すんな!」

(でも...ちゃんと滅茶苦茶強い能力! 

...だからってもう逃げも負けもしない!)


みみ

「無理だよぉ〜? だってつむぐちゃん近接戦闘でしょ〜?

 私の間合いに入ってくるのはぁ〜、拳じゃ無理じゃな〜い?」


「そうかもね...近接戦闘"だけ"ならね!!」


ドゴォオオォオオォオオォオオン...!!!!

そういって踵から垂らしていたガソリンを、みみが踏んだ瞬間に起爆させた。


みみ

「あがぁああっ...!!!」


アナウンス

「終〜了〜。只今を持って〜、試験を終了としま〜す」


「私の得点は〜っと...え"っ、186!? どんなあの子204点持ってたの!?

 まぁゴキ...漆原も確か開始一時間で130ポイント行ってたし...妥当なの?」


こうして今日の受験は終了し、後は結果を待つのみとなった。

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