第二話:人にしか出来ないこと。
どんな質問が飛んでくるかも分からず、間違えた答えを出せば殺される。
そんな恐怖感を何も見えない暗い部屋で味わう。
私
「どうしたら良いのよ...」
デルタ
(死ねばいいじゃねぇカ、とっとト。どうせ生きても希望なんてねぇヨ)
私
(マジで黙ってくれる!? こっちは気が気じゃないの!)
デルタ
(ヘッ!愉快だナ。一回殺されたのに死ぬのが怖いのカ?)
私
「怖いに決まってるでしょう! トラウマだわアホ!」
渋いおっさん
「何を口走る、デルタ。貴様の独り言は全て筒抜けだぞ?」
私
「すみません...」
デルタ
(へっへッへ、その調子で行けば順調に死ねるナ)
私
(アンタねぇ! 仮に私が生き残ったとして、
私の中でアンタは一生を過ごすのよ!? 仲良しようと思わない訳!?)
デルタ
(誰がオレの体勝手に使ってる奴と仲良くするんダ? 少しは考えて喋レ)
私
(乗っ取られてる身なんだから黙るか仲良くするかの2択で譲歩してんの、
大人しくどっちか選びなさい、このアホ!)
デルタ
(やなこっタ)
渋いおっさん
「おい、デルタ。お前は人間か?それとも魔物か?」
いきなり極論みたいな質問が飛び、少し考えた後に答える
私
「私は...人間であって欲しいです。でも...デルタとして見られていても、
仕方ない事...だと思い...ます」
渋いおっさん
「...聞かれたことだけ答えろ。だがまぁ、それが貴様の思いか」
私
「...はい」
(外はどうなってるのよ!? マジで!)
視点は会議へ移る。
日神
「もし魔物なら自ら拘束されるメリットがない。
わざわざいつ死んでもおかしくない状況に身を置くか?」
対アギ魔隊隊長達による
狸ジジイ
「ある程度警戒を解いて、その状況で一気に畳み掛ける事だってあるだろ。
ちょっとは考えてくれ、コレだから異端児は困る」
「ホッホッホ。そうカリカリすんな。
ワシは未来ある少女が死ぬことは受け入れられないよ」
「彼女一人に警戒態勢を敷き続ける労力を考えてください。
そんな事になるなら今デルタを殺した方が何の労力も使いません。
幸いにも彼女は下民でしょう? ならばもし人間だとしても大した問題は」
月守
「いくら何でもそれは言いすぎっスよ。言葉を選んでください」
「いやぁ俺もさ、一応元大犯罪者組織の幹部で、
処刑を望まれてたりもしたけど、そっから今更生して、
こうして皆と一緒に仕事が出来てる身だからさ。
同じ状況とは言わないけどさ、彼女を他人事とは思えないんだよ。
だからさぁ...なんとか殺さない方向でいけないのかなぁ?」
「いやつってもさ、君とこの娘じゃちょっと事情が違うじゃんか。
君はまだ人間だから良いんだけど、この娘は正真正銘魔物だよ?
万が一の事だってある。気持ちは分かるけど大きな被害が出ないうちに、
一人の女の子を犠牲にするほうが先決だと思うんだよね、違うかい?」
「とは言え、味方となれば千人力ではなかろうか?
デルタの能力を制御することが出来た暁には、
次の特異魔物が出現した際に一々交換に持っていける。
兵力としてはコレ以上にない程貴重なのではないか?」
「兵力になればっていう希望的観測の話でしょ〜?
楽観視よりも危険視するに越したことは無いんじゃな〜い?
それに月守君や日神さんが敵の能力で操られてる可能性もある訳じゃん?」
渋いおっさん
「なら貴様の神器で触れてみればよかろう」
月守
「いいっすよ古近衛さん。
あなたの神器で僕に触れてみればいいじゃないすか」
漆番隊隊長のお調子者
「えぇ〜、しょうがないな〜。はい、これで君にかかった能力は無くなるよ」
漆番隊隊長は黒い刀を取り出し、刀身を月守の手に触れさせた。
月守
「ありがとうございます。では僕の意見を言わせていただきます。
まず彼女が嘘をついている事を立証する証拠が何一つないんっスよ」
日神
「そうだ。コイツは15になっても能力が不明と学生証に書いてある。
だから受け身型の能力なのはほぼ確実だ。死んでから発動し、
殺された生物の魂を乗っ取る能力というのもあながち否定できない」
月守
「それに魔物ごときにあの娘の人間っぽさを出せると思わないっすよ!
まだ
アレは他人の記憶を学習した程度の魔物が出せる演技じゃないっすよ!」
渋いおっさん
「演技力を高める能力を保有していたならどうする?
特異魔物ともなれば複数個の能力を保有しているものであろう。
洗脳では騙す類の能力なら、
古近衛の刀で月守がデルタを養護するのも合点がいく」
玖番隊隊長兼参謀長の女
「演技力だけで厳格な日神さんが騙されるものですかね?」
「いいんじゃないか? 一旦コイツの警戒を解いても」
玖番隊隊長兼参謀長の女
「天城さん!? 軽率な発言は控えてください! 貴方は総隊長なんですよ!?
貴方の発言には大きな責任が伴うんです!」
壱番隊隊長のイケメン
「軽率な発言? 俺が何も考え無しに発言したと思っているのか?
何も聞かず俺の発言を軽率とする方が軽率な発言ではないか?」
玖番隊隊長兼参謀長の女
「クッ...考えていると言うなら言ってみてくださいよ。
そこにどんな聡明な考えがあるのか...!
私は市民を思って発言しているのです!」
壱番隊隊長のイケメン
「もちろん今までの生活に戻るなんてことは出来ない。
だがこの女を、
会議室のモニターにとある学校が表示される。
伍番隊隊長の陽キャ
「馬鹿じゃねぇの!? ここは未来の希望達が集まる所だ!
それにそろそろ入学試験が始まるだろうがよ! やっぱ考え無しじゃん!」
壱番隊隊長のイケメン
「最後まで聞け。この
この入学試験で落ちればそれまでだ、その時は処刑する。
だが受かった暁には、未来の希望として生きていける。
アギ魔隊として大いに活躍するだろう。大まかにこれが俺の案だ。
無論、入学するまでは首輪をつける。いつでも殺せるようにな。
入試までは俺の隊で面倒を見よう」
日神
「俺はこの案に賛成だ」
狸ジジイ
「まかり通るわけないだろう! ワシは反対だ!」
参番隊隊長のジジイ
「ホホホ、面白いのぉ! ワシ賛成!」
肆番隊隊長のマッチョ
「良かったねぇ...オレも賛成だよ」
伍番隊隊長の陽キャ
「何言ってん皆!? 俺は反対! てかそれ以外無いっしょ! なぁ皆!」
陸番隊隊長の不思議くん
「俺も賛成だ。変身系の能力であろう? 卒業したら俺の隊に入れたい」
漆番隊隊長のお調子者
「じゃあボクもさんせーい! 万が一の時はボクがいるから安心でしょ?
あと卒業したら陸番隊じゃなくてボクの隊に入れるからね!」
捌番隊隊長の熱血男
「ようやく喋れんのか? 俺は反対だ。人材なら十分足りてるだろ」
玖番隊隊長兼参謀長の女
「絶対反対です! リスクが大きすぎるでしょう!」
月守
「僕は始めから賛成っスよ」
渋いおっさん
「我も賛成だ。8対4で、3分の2以上の賛成票。
良かったな
玖番隊隊長兼参謀長
「
生徒が犠牲になるかもしれない、それでもいいんですか!?」
渋いおっさん
「校長の我が良いと言ったんだ。部外者が口を出すな。
さぁ、
自らの有用さを証明してみせよ」
渋いおっさんはこっそり会議の様子をカメラに映し、
私
「あぁ...良かった...うぅ...あぁぁああぁあぁぁあぁあ...
生きれて良かった...頑張りますぅ...ありがとうございますぅ...」
渋いおっさん
「聞かれたことだけを答えろと言ったろう。だがまぁ、頑張れ」
彼女の涙を疑う者も減ったが、未だに彼女を疑う者もいた。
狸ジジイ
「クソっ、こうなったら...!!!」
手元の御巫を処刑するボタンを押そうとする狸ジジイ。
月守
「何しようとしてんスか。みっともないっスよ!」
狸ジジイ
「いだだだだだだだ...!!!!!!」
狸ジジイの腕をガッシリと掴み、流石に狸ジジイも折れた。
視点は
私
「よかったぁ...本当に...よかったぁ...!!!」
デルタ
(ケッ、そのまま死ねばよかったのニ)
ギギギギィ...重い鉄箱の扉が開き、涙を流す御巫の元に日神が現れる。
日神
「よかったな
これからは入学試験がある1月まで、壱番隊で生活することになる。
まあ入学試験落ちたら死ぬんだが...出来るだろ?」
私
「はいっ! どんな物もバッチコイですよ! ところで私が行く学校って?」
日神
「あぁ、お前を擁護した渋いおじさんがいただろ。
その人が創設した最新鋭の学校、"私立対魔教専門高等学園"だ。
ここはアギの中でも選ばれた者しか入学を許されない、
だが入学できれば将来をアギ魔隊のエリートとして約束される、
アギ魔隊志望の人間からすれば夢の学園だ。
施設や人材、寮に学食、最先端の技術の全てが揃っている。
月守は最近そこを首席で卒業した若手のエリートだ」
私
「そっ、そうなんですねぇ〜...」
(生きたとしても将来が対アギ魔隊ルート確定じゃない!)
こうして私は、エリート学園の入学と将来を強制された。
断ったりミスったりしたら死ぬらしいわね酷くない?
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