【真夏の短編】セロ弾きの銀河鉄道のスターリンク衛星の夜

マネーコイコイ

最終忘却ボタン「私の時間を返して」

 金髪の猫耳の少女は真夏の夜に目を覚ましました。

「寝れないし、練習しよう……」


 暑い夜には眠れない。そう思っていた彼女は、セロを抱えて窓辺に立った。金髪の髪を風になびかせながら、彼女は空を見上げた。星がきらきらと輝いている。でも、それだけではない。空には何本もの白い線が走っている。スターリンク衛星だ。人工的な光が自然の美しさを邪魔している。彼女はそれを見て、悲しくなった。


 彼女はセロを弾き始めた。哀しげなメロディーが部屋に響いた。彼女は音楽が好きだった。セロを弾くときだけ、彼女は自分の気持ちを表現できた。でも、それだけではない。音楽には力がある。音楽は人々をつなげることができる。音楽は奇跡を起こすことができる。


 彼女がセロを弾いていると、突然、部屋の中に光が差し込んだ。彼女は驚いて目を閉じた。そして、目を開けると、そこには見たこともない光景が広がっていた。彼女は電車の車内にいたのだ。


「どうして? ここはどこ?」彼女は不安になった。


「心配しなくても大丈夫だよ。ここは銀河鉄道の車内だよ」隣に座っていた少年が言った。「僕も最初は驚いたけど、これは素晴らしい旅なんだ。君はセロを弾くのが上手だね。僕はその音色に惹かれて、君を連れてきたんだ」


 少年は笑顔で言った。彼は黒い毛並みで、瞳は深い青色だった。彼は銀河鉄道の常連客だと言った。彼は星空を見るのが好きだと言った。


「この列車は夢と現実の間を走っているんだ。君も僕も、この列車に乗っている間は夢を見ているんだよ。でも、夢と現実の境界は曖昧だから、この列車から降りたら、スターリンク衛星を思い出してはいけないよ。ここでの出来事をすべて忘れてしまうから」


「それじゃあ、意味がないじゃない。エローン・マスクはずっとSNSで言ってるから、すぐ思い出しちゃう」彼女は言った。「どんなに素敵な旅をしても、忘れてしまうなんて」


「そうじゃないよ」少年は言った。「忘れてしまうかもしれないけど、心に残るものがあるんだ。この列車で見た景色や感じた感情や出会った人々や聞いた音楽や…それらはすべて君の心の中に刻まれていくんだ。そして、それらは君の人生に影響を与えるんだよ」


「本当に?」彼女は疑わしげに言った。


「本当だよ」少年は言った。「僕も最初は信じられなかったけど、この列車に乗るたびに、自分が変わっていくのを感じたんだ。もっと広い世界を知りたくなったり、もっと自分を表現したくなったり、もっと人とつながりたくなったり……この列車は君の夢を叶える力があるんだ」


「私の夢?」彼女は言った。「私には夢なんてないよ。私はただ、暑い夜に涼しい空気を感じたかっただけ」


「そうかな?」少年は言った。「じゃあ、君は今、涼しい空気を感じているかな?」


 彼女は窓の外を見た。そこには美しい星空が広がっていた。スターリンク衛星の白い線は見えなかった。代わりに、銀河鉄道の蒸気が空に描いた白い線が見えた。それはまるで星々をつなぐかのようだった。


「うん…感じてる」彼女は言った。「でも、これは夢だから、すぐに消えてしまうんでしょ」


「消えないよ」少年は言った。「君の心に残るよ。そして、君の夢にも残るよ。君はこの列車に乗って、自分の夢を見つけることができるんだ。君は何が好きなの?何がしたいの?何がなりたいの?」


 彼女は考えた。彼女はセロを弾くことが好きだった。でも、それだけではなかった。彼女は音楽を通して人々に伝えたいことがあった。彼女は音楽で人々を幸せにしたかった。彼女は音楽で世界を変えたかった。


「私…」彼女は言った。「私は…音楽家になりたい」


「そうだね」少年は言った。「それは素敵な夢だね。君ならきっと叶えられるよ。君のセロの音色は魔法みたいだから」


「ありがとう」彼女は言った。「でも、どうやって叶えるの?私には才能も経験もコネもお金もないよ」


「大丈夫だよ」少年は言った。「君にはこの列車があるんだから。この列車は君の夢をサポートするんだ。君が必要なものや出会うべき人や行くべき場所や学ぶべきことや…それらをすべて用意してくれるんだ」


「本当に?」彼女は言った。「どうやって?」


「それは秘密だよ」少年は言った。「でも、信じてみて。僕も最初は信じられなかったけど、この列車に乗ってから、色々なことが起こったんだ。僕も音楽家になりたいんだ。ギターを弾くのが好きなんだ。この列車に乗ってから、僕は色々な人と出会って、色々な音楽を聞いて、色々な場所に行って…僕の音楽の幅が広がっていったんだ」


「すごいね」彼女は言った。「でも、どうして私を連れてきたの?私と一緒に旅することで、あなたの夢に近づけるの?」彼女は言った。


「もちろんだよ」少年は言った。「君と僕は同じ夢を持っているんだ。音楽家になりたいんだ。だから、君と一緒に音楽を作りたいんだ。君のセロと僕のギターで、素敵なハーモニーを奏でたいんだ」


「本当に?」彼女は言った。「でも、私ははじめてまもないから上手に弾けないし…」


「大丈夫だよ」少年は言った。「僕がついてる。さあ、はじめよう」



 こうして、二人は音楽を協奏し、真夏の夜に銀河にかける熱い思いを奏でるのでした。少年は彼女のセロに合わせて、ギターを鳴らし、リズムをとりました。彼女は自然と笑顔になりました。


「すごい! 本当に弾けるなんて! 私はじめてかも!」


「とても上手だったよ」少年は笑顔で答えた。「もう朝も近い。じゃあこれを君にあげる」そういって、少年は少女に赤いボタンのスイッチを渡しました。


「これは?」


「僕を信じて」


「うん。でも、私もっとあなたとお話ししたい。私をこのまま列車で無限の彼方に連れてって」


「それは……嬉しい言葉だけど、また会えるから。だから、お願い。早く押さないと取り返しのつかないことになる。だから……」


「わかった。押すよ。あなたを信じる」ぽちっとな。


「ありがとう。やさしいお嬢さん。僕は本当は……」


 少年は薄い霧のように消えていきました。


「え?」


「僕自身がスターリンク衛星になることさ!」

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【真夏の短編】セロ弾きの銀河鉄道のスターリンク衛星の夜 マネーコイコイ @moneykoikoi

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