第4話 訪れ4
「歴史の中の…」
「そう、おとぎ話だと思っていただろう?この帝国ができるときの話は」
エルデの意図を読み取ったかのようにダンテは言った。普段なら、この娘のような年齢の彼女に対して時折慈愛のような目線を向けることが多かったが、この話に関しては初めて見る険しい眼差しをしていた。
「正直、私もそこまで信じていたわけではない。あくまで歴史の中の一つだと。歴史は勝者の物語だからね、だから話半分は作り話で、魔法族や他の種族が実在したというのは話に色をつけるための話題だと思っていたのだよ。だが、実はそうではなかった。魔法使いユールが現れ、陛下に進言した内容が今回集められた理由だったというわけだ」
「魔法使いユール、は本当に本人なのでしょうか」
「君がそう思うのも無理はない、実際に当初現れた時は相当に疑われたようだし私も同じように思ったよ。だが、陛下との話し合いを経て、どうやら実在の人物であり、本物であるらしいと証明されたようだよ」
ダンテは灰色がかった髪をかきあげた。銀色に近い彼の髪は通常なら輝いて見えるが、彼の心情を表したように、少しくすんでいるように見える。彼は詰めた襟のフックを外し、大きく息を吸い込んで再びエルデに目を合わせた。
「実際に、どのように本物の人物であると証明されたかは定かではない。ただ、私には彼が伝えた内容には信憑性があると思ったし、各地の状況を見れば納得のいく話だと感じた」
「確かにここ数年、急に見たことがないような獣の報告が上がってきています。それに作物が著しく育たない地域もあるという他領の噂も来たことがありますが…」
「そうだ。見たことがない獣はどうやら魔族のようだ。獣、とは言っても不思議と言葉は理解しているように思えるとの報告を帝国では受けた。だが話が通じるわけではないということだが…」
「魔族ですか」
実際のところ、少し前から「見たことのない獣が夜になると森の中で見かけることもある」や「畑が二足歩行の熊のような獣に荒らされている」といったような報告が各地で上がるようになっていた。
それらが今まで見たことも聞いたこともない存在であるということが調査の結果わかってきたことだったが、それが魔族であることがどうやら帝国の緊急会議で伝達されたらしい。
ふむ、と彼女の頭がダンテの言葉を反芻している様子を見ながら、ダンテは話を続けた。
「それで、結果的にこの件については各領地と連携して調査を進めることになった。そのためわが領地についても報告が上がっている箇所を中心として、調査団を編成し異変を調べることになった」
「承知しました。調査団には武力も必要な場合がございますので、必要に応じて騎士団も何名か向かわせます」
「それについてはすでにラグランにも伝えているよ、ありがとう」
— それで
という間が空いたところで、ダンテは柔和な笑みを浮かべながら話を続けた。
「そう、そこでユール様が言ったのだよ、再度勇者に会いたいと」
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