第3話 訪れ3

 最初に言葉を発したのはエルデだった。

「騎士団団長ともあろう方が、わたくし個人の婚姻という話をここでするのですか?このような話は家で話すものでは?」

「ああ、通常だったらな。ただ先ほど私は”王宮からの持ち帰り”という話をしたのだが、それはつまり家の中で終わる話ではないということだ」

「一体どういう話ですか?」

「それについては、私から話をした方が良さそうだ」


 ダンテが遮り、二人とも同じような顔で彼を見た。彼はそっくりな顔だな、と思った。エルデがすくすくと育つほど、この親子は近くなってきている。剣の能力も、性格も、それはいい、だがこういった話題についても全く慣れていないことについても親子そっくりなのは少々心配するところだ。


「今、王宮には”魔法使い”がいる、いや、いらっしゃるのと言った方が適切かもな」

 ダンテが話し始めた内容はこのような内容だ。


 ここビアンツ帝国は300年以上の歴史を誇る帝国だが、それ以前は複数の種族が住んでいた国の集合体だった。種族たちは交流もするが、争いごとも少なくなく、次第に力の強い種族である”魔族”が近隣の国を滅ぼし始めたのだ。近隣の国が1つ滅び2つ滅び、魔族の領土が拡大を始めた頃、各地で暴動が起き始めた。自体を重くみた人間族と魔法族が手を取り合い、魔族と多くの話し合いを実施したが、交渉は決裂、とうとう魔族が人間族と魔法族を滅ぼそうと進軍した。

 いつ大陸が魔族一面になってもおかしくはない。そこで選ばれた種族混合の4人が魔族の長である魔王に対し、軍隊を率いて戦いを受けた。長い間戦いは続いたが、ついに魔王を滅ぼすことに成功した。残った魔族たちは地下に逃げ込み、甚大な被害を大陸にもたらした戦いは終わった。

 その後、人間族は大きな国を作り繁栄したが、もともと多くの人口ではなかった魔法族や他の種族は別の大陸に流れ、その消息は次第に聞こえてこなくなった、というのがこの帝国の始まりの歴史だ。


「ここまでが前提であり、今回の話はこの話に起因する話だ」


 さて、先の大戦で選ばれた4人はどうなったのか?寿命が短い人間はとうにその人生をまっとうしたが、唯一現在も生き残っていると言われているのが魔法族の人物だった。魔法族はもともと寿命が長く、1000年ほどは生きるといわれている。その長い寿命については実際のところ不明らしい。なぜならば、その後交流はほとんどなかったからだ。


「だが、”彼”は再び姿を現したのだ」

「彼?ですか」

「大戦の英傑たちの一人であり、唯一の生き残りである魔法使いユール、だ」

「彼ら魔法族は、大戦後に森の奥深くに消えてしまったと私は歴史の授業で学びましたが、そうではなかったのですか?」

「それについては不明だ。ただ、500年を経てユール様は王宮に姿を現し陛下に伝えたという…」


— 魔族が再度現れる。前回の復讐を行いに。


 ゴクリ、とエルデが大きく唾を飲み込んだ。

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