繁華街1

(この日本の夜の街って、こんなに明るいの!?)

 異世界の住人であるオレにとっては、現代日本は驚くことばかりだ。

 電気の明かりは、魔法ではない……錬金術の延長の科学とかで、彩り豊かに輝いている。

 それに歩いている人々。繁華街の事だけある。酔っ払いも多いが、大人の女性が薄いドレスで歩いているのは驚いた。

 それに――

(何だ、あれ? 尻尾? あっちは耳か?)

 歩いている女性もそうだが、男の中にもお尻からフラフラと動物の尻尾が見る。それも猫や犬のような――その他にも、獣のような耳をしたモノも、歩いているではないか!?

(獣人と人間が一緒に?)

 薄らと、ウラベの記憶にある。この世界には人間以外にもいるということを。

 その辺はオレのいた異世界と同じであろう。ただ、彼らが人間と並んで歩いているようなことはない。ましてや、友人同士のように肩を組んで歩く姿は、異様に見る。

 オレのいた世界で獣人といえば敗者、奴隷だ。

 何せ昔、魔王を名乗る者が現れ、オレの国を征服しようとした。

 それに加担していたのが、獣人たちだ。

 当時は力を持っていたのは獣人達。オレ達、人間は虐げられていたという。

 だが、それを勇者がひっくり返した――その仲間に、オレの祖父。クソ爺といっていいやつがいたが――魔王が倒されると、勝者と敗者が逆転した。魔王が倒された途端、率いていた軍も、従っていた獣人も降伏してしまった。

 それから、魔王という後ろ盾が無くなった獣人たちは、人間に奴隷として扱っている。

 言葉が通じる道具としか思っていないのも、たくさんいる状態だ。

 そんな獣人たちが、この世界では全く違う。人間と一緒に飲み食いしている。

 ウラベの記憶からするに、差別的なモノを全く感じなかった。

(この世界では、人間と獣人たちに上下関係がないのか?)

 異世界は疑問なことが多いが……驚いてばかりではいけない。

 ウラベの記憶を頼りに、パパ活公平な取引をするべく路地の曲がり角で立っていることとした。だが、すぐに「ここはあたしの場所ッ!」と、別の女に追い払われた。

 誰も立っていない場所に向かえば、後から来るまた別の……そんなことが続けざまにあって、1日目の収穫は無し。

 2日目以降も、全然話にならない。

「仕事の邪魔だ!」

「ちょっと、なにこの子――」

「ガキの来るところじゃねぇぞ!」

 先程から遠巻きに、人々は近づくどころか、避けて、罵倒して、どこかいけと厄介払いされた。これでは情報収集なんて出来やしないではないか!

(格好が悪いだろうか?)

 そうは思ってみたが、外出する着替えがほとんどなかった。

 一夜は、「この世界の常識は、占部の記憶を頼れ」と言われてはいたが、オレは拒否反応を起こしていた。布の量が少ない事に――

 仕方がなく、セーラー服で来たわけだが、これが問題なのか?

 3月に近い寒空に防寒具無しというのは辛かった。温暖化とかで、冬でもこの世界はガマンできる程の寒さだ。

「お嬢ちゃん。ちょっといいかな?」

 そんな時ようやく、声をかけられた。

 これで少しは進展――

(ヤバい!)

 声をかけてきた男を見て、「関わるなッ!」ウラベの記憶が警告してきた。

 ニコニコと人の良さそうな紺色の制服――警備隊警官というヤツだ。

 オレはとっさに振りかえって走り出した!

 だが、

「暴れない。ちょっとあっちでお話を聞こうか――」

 腕を捕まれて逃げられない。

(――何だ、こいつ! 本当に人間の力か?)

 人間の力ではないと感じた。

 オレは左手首を掴まれているが、その握力は痛いぐらいに指が食い込んできた。いくらウラベという少女になったとはいっても、人の力の強さはわかる。

 引きずられるように、警官に連れていかれた。

 薄暗い路地裏へと――

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