尊厳凌辱NTR融合ウェポン
攻撃判定重複は1回の攻撃を100ヒットする方法だ。
だが摺り足乱舞は連撃カウントだ。つまり1回1ヒットだが繰り返し同じ行動を行えるという事だ。これの違いはなんだ? という話をすると1ヒットで敵を殺しきれる場合、方向転換やスキルの素早い切り替えができる摺り足乱舞の方が優位に立つという事だ。
テイミング等のスキルは1回に1度しか判定が発生しない為、ヒット数を増やした所で意味がない。なのでこの場合、摺り足乱舞の方が正しく効果を発揮する。これに限らずバフやデバフ系統は累積するタイプ以外は摺り足の方が効果的だったりする。
そういう訳でタイムを無駄に伸ばさないために姫様からパイルダーオフしながら落下しつつ摺り足でテイミングを連打する。
「動きが気持ち悪っ!」
「私レベルのRTA走者だと落下するまでに10回ぐらい判定を挟み込めます。はい、フェンリルのNTRテイミング完了です」
「……は?」
テイミング成功の光が相手のフェンリルを包み込み、此方の所有物になる。姫様はキャラクターデータがあり、PCとして味方になるからPT枠を消費するが、ペット枠は別枠のペット枠を消費して編成する。メディンギラが呆けた表情で此方側にワープしてきたフェンリルを見る。
「フェンリルのテイミング完了です! いやあ、《覚醒》で背水クリ率10%に強化されたのはやっぱりいいですねぇ……お蔭で試行回数が減らせます。フェンリルは北方に出現するフィールドボスです。通常の手段でテイミングしようとすると相当苦労するのでNTRが出来るのは楽で良いですね」
此方側に出現したフェンリルは元主の方を見て、此方を見て、元の場所に戻ろうとしてワープして横に戻ってくる。そう、此方側にテイミングされた以上元の場所に戻れないのだ。
「ま、待て貴様! フェンリルに何をした」
「それでは続いてフェネクスもテイミングします」
「ま、や、止めろ!」
メディンギラが間に体を挟み込んでくるが、味方としてのキャラデータのない彼女は対象に取れないので、その背後のフェネクスにテイミングがかかる。当然1回目は失敗するが、摺り足で体をカクカクさせながらテイミングを爆速連打すればテイミングがクリティカルして成功する。
そうすればフェネクスとフェンリルが両方此方側に揃う。
「あ、あぁ、フェネクス」
「いやあ、メディンギラは貴重なモンスターを引き連れて登場するので本当においしいボーナスタイムですね。両方とも素材として大変有用なので武器の更新の手間が省けます。特にリヴァイアサン戦はハメ込みでも火力勝負になるので数秒から数十秒の差が出ますから」
フェンリルとゲットしたフェネクスをまずはペットインベントリーに戻す。それから武器を構え、装備画面を開いた状態で壁を―――この場合は姫様を背にして捨てる。そうすると武器が出現する筈なのだが、武器を捨てられないので武器がインベントリから消える状態になる。
この状態でペットをPTの編成枠に入れて、そこから外さずに逃がすを選ぶ。そしてウィンドウを閉じる。
武器の装備は外されるが、その代わりになぜか武器枠にペットが入る。
「はい、ペット武器化バグ完了です」
「―――」
まるで石像になってしまったように不動のフェンリルを尻尾で掴んで掲げる。キャラのグラフィックに通すボーンが全て硬直しているみたいに硬い。そのまま片手で握る武器化フェンリルをぶんぶんと振り回す。見た目は完全にフェンリルそのものを振り回している様にしか見えない。
「武器化されたペットの攻撃力は元々の筋力値と魔力値を参考にします。フェンリルのレベルは非常に高く、モンスター特有のやけくそステータスをしているので武器化バグを活用する事で非常に高い攻撃力を持つ鈍器になります」
モンスターのステータス優遇されてる? それはそう。
「人と違ってモンスターは装備が使えず、耐性やステータスを盛る手段がバフ以外にないので、基本的にステータスが優遇されています。その為武器化バグを使う事で非常に優秀な武器にする事が出来ます。高位モンスターは皆、優秀な玩具だよ!」
メディンギラの手から武器が滑り落ちる。
「フェンリル、フェネクス……わ、私の家族たちを……え、あ、ふぇ、フェンリル……か、返して」
「ではこのまま武器合成バグでフェンリルをアストラルチェイサーに融合させます。ペットは増殖バグにカテゴリー的に対応できないのが難点ですが、これでゲームクリアまで使える最強の弓が出来ます。フェンリルアストラルチェイサー弓だ! やったね!」
フェンリルを象ったような美しい銀色の弓が出来上がった。キラキラピカピカしててかっこいい!
「続いてフェネクスもフェアウェルと武器化武器融合バグを使って武器に加工します。これで攻撃力最強の片手長剣が作れました。姫様は最後まで戦闘で酷使するのできっちりと良い装備を渡しておきましょう」
青く燃える炎のような揺らめきを纏った剣を姫様に装備させる。これが俺達のファイナルソードだ!
裏ダンの宝箱から無論、基礎攻撃力がもっと良い武器を入手する事は可能だが、ここで大きく攻撃力を更新できる以上、僅かな数字を盛る為に取りに行く必要はないだろう。クリアまではこの2本の尊厳凌辱ウェポンを武器にする。
「あ、あぁ、フェネクス……フェンリル……私の家族たちが……」
「尊厳凌辱ウェポンを入手したのでもうメディンギラには用がありません。サクッと処理しましょう」
姫様と一緒に頭に攻撃して上半身を消し飛ばす。これで討伐の報酬として名声と経験値が大量に入ってくる。その中にはフェネクスとフェンリル討伐の分も混ざっている。これで一気にレベルが上がり、俺も姫様もレベルが60を超す事になる。
最低ラインのレベルには到達した、これで海に行っても問題はないだろう。
「メディンギラ討伐で帝国で必要な名声と装備、レベルの稼ぎが終わりました。ポート・メルタイトに移動し、海に出ます!」
オン・ザ・姫様をし、陣地の入口へと戻る。再びファストトラベル用の馬車を召喚してそれで港へと向かうのだ。港は最前線からはかなり遠い位置にあるので、飛行で移動してもそれなりの時間が必要となる。それをファストトラベルで解消するというルートだ。
「卿ら、何時もこんな感じか?」
「あ、はい。所で陛下、人の心って帝国で売ってませんか? さっき王国の城にこいつが落とした心がないか電話で確認してたんですけどどこにもないみたいで……」
「うーむ、非売品だなぁ」
「そっすかぁ……もう作るしかないのかなぁ、人の心」
その頃ジョック君は陛下と仲良くなっていた模様。コミュ力高すぎか? まあ、この後陛下とは二度とエンカウントしないので別れ際の好感度は特に気にしない。さっさと台地から降りて前線陣地まで戻れば、バス停みたいな表記と一緒に馬車が待っている。
「新チャンプ、行きたい場所があるのかい? アンタの為なら帝国内はどこでも行けるぜ」
「ポート・メルタイトへ」
「あいよ!」
馬車に乗り込むと馬車の入り口で陛下が微笑みながら見送ってくれる。そして動き出す馬車に巻き込まれてそのまま数メートル引きずられて行く。
「西脇!! 西脇アレ!!!!」
「ムービー無敵だから大丈夫で御座るよ。オープンワールド系では良く見る現象で御座る」
「心臓に悪いよコレ!! ねえ!」
暗転―――戦場を出た馬車は一瞬で青空の広がるポート・メルタイトに到着する。姫様の肩のって馬車から降りると海の濃い匂いは鼻を満たす。一瞬で大陸の端っこにやって来たんだと解らせる海の匂いは異世界であろうと変わらない。
「ポート・メルタイトに到着です。ここでは船に乗って大陸各所に向かう事が出来ます。またここからは1.1の大型アップデートで追加された東国へと渡る事が出来ます」
馬車から降りたら素早く移動し、近くの露店へ。素早く必要なものを購入する。そのままギラギラと照り付けてくる太陽を受けながら目的の大型船にまで移動する。
「ここから東国に船に乗って移動しますが、ここで東国の話を少しします。東国は現在百鬼夜行と呼ばれる東国を支配する妖怪のグループによって鎖国状態にあり、出島以外での外国人の受け入れを行っていません」
「へえ、なんか良く見るタイプの設定だな」
「吉田君、今の結構切れ味鋭いね」
「え、そうかなぁ」
創作者にその手のツッコミを入れると即死級のダメージが入るというのに……!
「この出島ですが常に百鬼夜行に監視されており、ここから東国に出る事は出来ないのですが、当然ながらレジスタンスグループが存在します。侍衆、陰陽寮等様々な抵抗勢力があり、東国の実質的な支配者である玉藻Changに今も抗っています」
「あ、俺解った。抵抗グループに肩入れして少しずつ活動範囲広げるって奴だろ? 別のゲームで見た」
「吉田氏! それ以上は止めるで御座る! 死人が出るで御座るよ!! マジでヤバイって!!」
「そんなになんだ……」
今人の心を必要としているのは俺じゃない。お前だよ、ジョック君。いや、でもここら辺創作やってない側は良く解らないかもしれない。俺もRTA動画を編集した時にフォーマットがへたくそとか見づらいとか言われると軽く死にたくなるしな……。
何はともあれ、
「乗船券を購入します。東国行きの船は1隻しかないのでその最上級客室のチケットを購入します。ここで一番高いチケットを購入するのはガバによる再走案件の発生を抑制する為です」
客室のグレードによって部屋は変化する。グレードが上がれば船内でのサービスも充実する。それは船内での買い物が解禁される事にも理由がある。これから船に乗ってリヴァイアサン戦1回目を行う関係上、出来るだけ取れる手は取っておきたい。
東国クリア後であれば怖い事は一切ないんだけどなー。
「東国行きの乗船券ですね? 総額200万になります」
形見リサイクルで資金に余裕がある。乗船券を購入し、そのまま大型船に乗り込む。客室の場所は解っているので案内を拒否し、甲板で足を止める。船が動き出せば勝手に暗転して海のど真ん中に移動してるからだ。
「船はプレイヤーが船に乗ったリアル10分後に動き出すのでそれまではイライラタイムです。この間にトイレや軽食、給水が出来るならしておきます。ここからトイレに寄る余裕はないのでトイレは今のうちに済ませる事をお勧めします」
「……じゃあ、行ってくるか」
「拙者も付き合うで御座るよ。氏はどうするで御座る?」
「私も軽くリフレッシュついでにトイレ休憩挟みます」
それはそれとして、女性勢と別れる前に近くの露店で購入したものを取り出し、2人に渡す。
「ここで女性陣にバニースーツを渡して着替えさせておきます」
取り出したバニースーツを2人に渡すと、ジョック君が首を傾げてくる。
「それもグリッチに必要なものなのか? 東国についたら妖怪? 相手に見つからなくなるとか」
ジョック君の言葉に頷いて答える。
「私の趣味です」
サムズアップでジョック君に応えれば、ジョック君がほろりと涙を流した。
「人の心……こんな所にあったんだな……」
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